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第4章
#3
しおりを挟む知らない小さなクリニックで眠剤だけを処方してもらって2週間が過ぎた。
運命の番が誰か分かってから、あの病院へ行くことはやめた。
まあ行っても、佐々木先生は何も出してくれないのが分かったし、行ったら『彼』と会ってしまうだろうから。
「お゛ぇ……っ」
何も出るものがないのにえずいてしまう。
眠剤が合わないのか眠気は来ないし、そのせいか食欲も減っていく一方で俺はまた胃を壊していた。
何も食べずに眠剤ばっか飲んでいるからだろうと、理由は分かるがこれ以外に対処法がわからず、俺はまた入院する前のような姿に戻っていた。
体重も落ちた。
肋が浮いていて、手首も一回り細くなったと思う。
鏡で見る自分は、骸骨なのか見分けがつかなくて、康祐さんのお骨とどっちか見分けつくかな、なんてブラックジョークを思いついて一人で不気味に笑う。
そんなことをしたって元気にはならない。
部屋はまた汚くなっているし、康祐さんの写真には埃が被っていて、窓も開けていないから空気もこもっている。
分かっている。
分かっているんだ、どうやったら元に戻れるか。
いや……どうやったら元気になれるのか。
でもそれは、できないんだ。
本能が『彼』を渇望していても、『俺』が求めたいと思うことはない。
こんな折り合い、どうやって誰が、つけられるというんだ。
マニュアルがあるなら読ませてくれ。
自嘲気味に笑っても答える人間などいない。
「康祐さん……」
自分の声で、恋人の名を呼んでも……どうしてか今はしっくり来なくて、何度呼んでも自分の中に「康祐さん」が居ない気がして、俺は取り乱した。
「……っ」
本棚を倒して足を打った。
キッチンに行けば、皿やキッチン用具を投げ捨てて手を怪我した。
洗面所の鏡も風呂場の鏡も割った。
テレビの液晶も割った。
まだかろうじて、窓は割っていない。
……でも、時間の問題かもしれない。
運命だなんだは分かったよ。
それが誰かも分かったよ。
でもそれが……それが、康祐さんが居なくなって良い理由にはならない。
俺の中から、康祐さんを消していい理由にはならないんだ。
……本能のままに従って、康祐さんをもう一度殺すくらいなら、俺はもうこのままでいい。
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