【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの

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第4章

#9

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 前に中庭へ行った時は曇天だった。
 今はどうだろう。

 俺を嘲笑うかのような晴天。
 太陽が俺を見下している。

「さて、どこから攻める?」
「そんな、特攻じゃないんだから」

 意気込むカオリさんを笑う周藤。
 俗に言う『理想の夫婦』みたいな二人は俺の隣で笑い合う。

「んで要。誰?主治医?」

 周藤の問いかけに首を横に振る。
 カオリさんは「じゃあもう分かったわ」と得意げに笑う。

「え?だれ?」

 周藤はカオリさんに聞くが、カオリさんは答える気がないようで、ふふん、と笑うだけ。

「えー!なんだよ俺だけ除け者かよぉ」

 悔しそうに言う周藤に俺は笑う。

「……そのうち分かるよ」

 今日も彼がここに来るとは限らない。
 けれどなんでかここにいれば会える気がするのだ。

 自然豊かなこの開けた広場が、俺たちを結びつけようとしてくれている。

「ってか分かってんなら呼びに行こうぜ」
「今、仕事中じゃないの?」
「運命の番なら抜け出してでも来るだろ」

 周藤夫妻のやり取りを聞き流していると、ぴよぴよと小鳥たちが近くまで遊びに来た。
 スズメだろうか。番かな。

「まあここで待ってても仕方ないしねぇ」

 カオリさんはそう言ってベンチを立つ。
 俺は驚き「か、カオリさん!」と声をかけた。

 カオリさんは振り返ってグッと親指を立ててウィンクする。

「大丈夫!呼んでくるわ!」

「え、いやだからそれは!」

 俺が慌ててカオリさんの腕を掴むと、周藤は不思議そうに言う。

「なんで?もうカオリに任せて会っちまえよ」

 これだから能天気な奴は……。
 と、少し呆れつつ、カオリさんをもう一度ベンチに座らせる。

「あのね、俺……あの人に会うつもりないの」

「はあ?」
「なんでよ」

 周藤夫妻は理解不能といったように「ここまでまた来たのに!」と文句を言ってくる。
 俺はそれらに苦笑しながら口を開く。

「あのね……彼はカウンセラーで、俺は患者なの。運命の番だとしても、医者と患者が何かあったら彼のキャリアに傷がつくだろう?」

 ……そんな思い、康祐さんだけで十分だ。

「カウンセラーって……あの仏頂面の人か」
「やっぱりねぇ」

 周藤夫妻はそれぞれ感想を述べて、俺の言葉に耳を傾けた。

「彼も俺と一線を引こうとしていたし、俺だって康祐さんと番だった事実を消せはしない。それに忘れたくもないから」

(上書きになってしまうなら、いやだ)

 俺は空を見上げる。
 雲の流れがやけに速く感じる。

「遠くで時々生きてるのが分かれば、それだけで良いかなって」

 俺の台詞に、周藤夫妻は「はぁ……」とため息を吐く。

「そんなもんかねぇ」
「あんだけ暴れといてねぇ?」

 と周藤に続いてカオリさんも同調する。

「……それは、ごめん。ちゃんと部屋は直す」

 二人にも八つ当たりしてしまうくらい追い詰められているのは自覚している。
 ……でもそれでも、俺は文月さんの邪魔はしたくない。

「でもさあ」と周藤は言った。

 俺は周藤を振り返る。
 彼はなんでもないような顔をして、広場で遊ぶ子供たちや、のんびりとベンチに座りながら、風に身を任せている老人を目に映しながら言った。

「相手の邪魔をしたくねぇってのはもう、一種の愛なんじゃねぇの?」

「……」

 周藤の言葉が胸に刺さる。
 そう捉えられればきっと、楽に生きられるんだろうな。

「……うーん。でもそれじゃ、あんまり良いエンドロールになれないかもしれないじゃんか」

 俺が言えば、周藤夫妻は声を揃えて「エンドロール?」と言った。

「エンドロールってあの、映画とかの?」

 周藤の問いに、かつての自分も同じことを文月さんに聞き返したなと思わず笑ってしまった。

「うん。そう」

 そして俺は言う。

「映画のエンドロールみたいに、大好きな人たちの名前や顔を丁寧に流して、最期の時を過ごしたいなって」

「それがどうして、お前とカウンセラーさんが番になるとできないってことになんの?」

 周藤の問いに俺は、足元で遊んでいた小鳥たちがいなくなっていることにいつの間にか気づく。

 文月さんと最後に中庭で会った時を思い出した。
 彼は俺と番になろうとはしていなかった。

 馬鹿でもわかる。

 俺は笑った。

 
 

「……、この世界じゃバース性に則って生きているだけの、ありきたりな三文小説じゃないか」



 
 役名を変えて万が一にでもモブに成り下がるくらいなら、研修医時代の『特殊な元患者さん』の方がなんか良いじゃんね。

 ね、康祐さん。


 
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