【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの

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第6章

#1

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(そろそろ匂いが薄くなってきたな……)

 流石に、ハンカチ1枚ではジップロックで保管していたとしても匂いがなくなってきてしまった。

 きっと文月さんに持たせたウサギさんも匂いは薄れているだろう。
 次は何を渡してあげたら良いのだろうか。

「康祐さん~、アルファってなにで匂い嗅げば安心するの?」

 部屋に飾ってある康祐さんの写真に問いかけても、もちろん返事はない。

(うーん)

 おもむろに携帯を取り出して、検索をかける。

【アルファ 遠距離 匂い】

 こんなんで出るだろうか。
 まあでも文明の利器は優秀だろうよ。

 携帯に搭載されているAIに検索をかけると、なぜか友達のようなフランクな文面で『アルファと一時的に離れちゃう場合はね――』と表示された。

(いつから俺とお前は友達になったんだよ)

 心で毒づきながらもとりあえずAIの文面を読み進めていた。
 そこには、短期出張とかで一時的に離れなきゃならない時の対処療法がいくつか載っていた。

 お互いの物を手元に残しておくのがやはり一般的らしく、ジップロックで保管は常識レベルのことだったらしい。

 アルファが手元に置いておきたい番の持ち物ベスト5が表示される。

(1位は――)

「ぱ、パンツぅ⁉︎ 」

 俺はその文字を見て、思わず携帯を投げてしまいそうになったが、これ以上部屋を壊すわけにはいかなかったので、慌てて握り直す。

 ――が。

(俺のパンツを文月さんに……?)

 いやいやいや。
 それ、俺捕まるやつじゃね……?

 猥褻罪とかになるやつじゃないか?

 しかも、1位 パンツの解説に『使用済みで脱ぎたてのもの!』と書かれている。

(おいおいおいおい……)

「前科持ちにさせる気かよ……」

 呆れた顔で2位を見れば――。

「脱ぎたての靴下……」

 ねえこれ本当?
 本当の話です?

 これで本当に食欲湧く?
 俺、湧く自信ないんだけど?

「3位は……脱ぎたてのTシャツ」

 全部脱ぎたてじゃねぇか。

「まあやっぱ、匂いの濃いものが良いってことだよなぁ」

 ウサギじゃ文月さん物足りなかったかもなぁ。

 かと言って、脱ぎたてのTシャツを急に渡せる間柄でもないし、何より俺が恥ずかしい。

「はあ……そろそろバイト行かなきゃ……」

 ふと時計に目をやれば10時を指していたので、ソファから立ち上がりバイトへ向かう準備をした。


 *


「えぇ~そんなのパンツ渡しちゃえば?」

 呑気なマスターは客がいないのを良いことに、グラスを拭きつつ大きな声でそんなことを言う。

「いやいやいや……だってパートナーじゃないんですよ」
「え~でも運命でしょ?運命ならなんでもアリじゃない?」

(そんなわけなかろうよ)

 俺はため息を吐きながら、「プレート、オープンに変えてきますね」と言って正面入り口の鍵を開けて、ドアプレートをひっくり返していたとき。

「あれぇ?美澄さんじゃん」
「え、佐々木先生?」

 白衣を纏っていない、ラフな佐々木先生がテンション高く話しかけてきた。
 
 大学病院近くだから病院の関係者はよく来るし、なんなら看護師の決起集会みたいなものも開かれる時があるので、さして珍しい出会いではないのだけれど。

 とりあえずプレートをオープンに変えて、佐々木先生を振り返る。

「そのエプロン……ここで働き始めたの?」
「ええ、そろそろ貯金も厳しかったんで」

 佐々木先生は「ほぇー」と気の抜けた声で俺の顔をじっと見る。

「ちょっと腕出してみ、美澄さん」
「へ、腕?」

 急になんだ、と思いつつも医者というものは不思議で、なんでか指示にしたがってしまう。

 言われた通り腕を出すと、佐々木先生は俺の手首をキュッと掴んで満足そうに頷いた。

「うん!太ったね!」
「なっ」

(デリカシー……!)

 幸い俺が乙女じゃないから反論していないが、年頃の女の子だったら平手打ちもんの台詞だぞ、と佐々木先生を見上げた。
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