【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの

文字の大きさ
84 / 112
第8章

#1

しおりを挟む
「よかったわ、1日で退院できて」

「すみません、カオリさんだって大変な時に車出してもらってしまって……」

「マスターに頼むわけにもいかないかな、と思って入院した時の緊急連絡先をとりあえず私にしておいたのよ。退院時も、産休中の私が一番動きやすいから」

「本当にすみません……」

 頼りになるカオリさんだけど、少し心配になる程世話を焼いてくれる。

「ヒロくんも心配してたわよ」
「……申し訳ない」

(心配かけてばっかだな……俺は)
 
 カオリさんは前を向いて運転しながら言う。

「本当はお迎え行くのちょっと反対されてたんだけどね、来ちゃった」
「え、いや!そ、そりゃそうですよ!周藤からしたらカオリさんが大事で心配なはずですから」

 カオリさんは「ふふ、まあね」と笑う。

「でも私は、要くんの迎えに行きたかったの。前は行けなかったから」

(前回の退院時か)

 もしかしたら、今回、カオリさんの頼まれごとの最中にヒートが来てしまったからカオリさんなりに気にしているのかもしれない。

(そんなこと思わせてしまって……もっと、強くならないとな)

 カオリさんは言う。

「家は、要くん家でいいんだよね?」
「あ、……」

 どうしようか。
 ヒート期間中とはいえ、もう何もないし抑制剤ももらったし、もしカオリさんが良ければ……。

「もし、迷惑じゃなかったらカオリさん家に行ってもいいですか?」
「え?」

 カオリさんは驚いた顔で、信号待ちの間俺を見た。

「俺、何も二人に返せていないので、せめてカオリさんがいつ何があってもいいようにカオリさんのそばにいたいな、って」

 カオリさんは驚いた顔で、俺を見ていたが次第に信号が青に変わってしまいアクセルを踏んだ。

「でも、要くんの体調が心配だわ。気遣いは嬉しいけど……」
 
「ほらけど、周藤もカオリさんのこと心配だろうし……」

「まあそれはそうなんだけど……」とカオリさんは何かを思案しながら、車を走らせる。

「じゃあ要くん、うちに泊まってく?予定日まであと2日くらいだから。2泊3日とか!ヒロくんは夜にならないと帰ってこないし、朝は早く出ていっちゃうからさ」

 (と、泊まり……?)

「そ、それは流石にご迷惑では……。夜には帰りますよ!周藤が帰ってくるなら」
「いやだめよ」

 カオリさんは少し語気を強めていった。

「またヒートが来たら危ないから。うちに来るなら泊まっていって。それがダメなら一人でお家に引きこもり!さあどうする?」

 カオリさんはいたずらっ子のような言い方で、ゲームでも提示するみたいにそう言った。

 俺は、苦笑して「じゃあ、途中でパンツ買っていきます」と返した。

「そうね。私も家に要くんがいてくれるの、正直安心するの。初マタだから、ちょっと一人でいるとナーバスになりそうで」

 ほんの少し弱々しい声で言ったカオリさん。

「だから、要くんのお世話してる方が気が紛れるっていう私欲もあったのよ」

 そう言われ、なんて素直な人なんだ、と思わず笑ってしまった。

 その後も二人で、ああでもないこうでもないと赤裸々にいろんな話をしながら途中でパンツなどの必要品を買って、俺はまた周藤宅に戻ることにした。

 いつの間にか、右手の薬指のはめていたお守りがわりの曇ったシルバーリングは、康祐さんの写真の前に置きっぱなしになっていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

泡にはならない/泡にはさせない

BL
――やっと見つけた、オレの『運命』……のはずなのに秒でフラれました。――  明るくてお調子者、だけど憎めない。そんなアルファの大学生・加原 夏樹(かはらなつき)が、ふとした瞬間に嗅いだ香り。今までに経験したことのない、心の奥底をかき乱す“それ”に導かれるまま、出会ったのは——まるで人魚のようなスイマーだった。白磁の肌、滴る水、鋭く澄んだ瞳、そしてフェロモンが、理性を吹き飛ばす。出会った瞬間、確信した。 「『運命だ』!オレと『番』になってくれ!」  衝動のままに告げた愛の言葉。けれど……。 「運命論者は、間に合ってますんで。」  返ってきたのは、冷たい拒絶……。  これは、『運命』に憧れる一途なアルファと、『運命』なんて信じない冷静なオメガの、正反対なふたりが織りなす、もどかしくて、熱くて、ちょっと切ない恋のはじまり。  オメガバースという世界の中で、「個」として「愛」を選び取るための物語。  彼が彼を選ぶまで。彼が彼を認めるまで。 ——『運命』が、ただの言葉ではなくなるその日まで。

運命を知らないアルファ

riiko
BL
オメガ嫌いの西条司は女性アルファとしか付き合わない、そんな中やたらと気になるオメガを見つけた。 運命やフェロモンという不確かなモノではなく、初めて本気で惹かれた唯一のオメガにはとんでもない秘密があった!? オメガ嫌い御曹司α×ベータとして育った平凡Ω オメガ主人公がお好きな方は『運命を知っているオメガ』をお読みくださいませ。こちらはその物語のアルファ側のお話です。このお話だけでも物語は完結しますが、両方読まれると答え合わせが楽しめます。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます、ご注意くださいませ。 コメント欄はそのまま載せておりますので、ネタバレ大丈夫な方のみご覧くださいませ。 物語、お楽しみいただけたら幸いです。

やっぱり、すき。

朏猫(ミカヅキネコ)
BL
ぼくとゆうちゃんは幼馴染みで、小さいときから両思いだった。そんなゆうちゃんは、やっぱりαだった。βのぼくがそばいいていい相手じゃない。だからぼくは逃げることにしたんだ――ゆうちゃんの未来のために、これ以上ぼく自身が傷つかないために。

たとえ運命じゃなくても、僕は

mimi
BL
「僕は自分の気持ちを信じたい。 たとえ運命から背を背けようとも」 音楽大学に通うΩの青年・相田ひなた。 努力家の先輩αと、 運命の番だと告げられた天才α。 運命か、愛情か―― 選ぶのは、僕自身だ。 ※直接的な描写はありません。

オメガの復讐

riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。 しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。 とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

処理中です...