【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの

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第10章

#3

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「じゃあすみません。ここなので……」

 そう声を掛ければ、文月さんは俺を見つめる。
 
「でも今更これ追加で持てませんよね。もしよければ玄関まで持って行きますよ」
「ほんっとすみません……」

 薄々感じていたことを文月さんが言ってくれて、俺は周藤夫妻の家の門扉をなんとか開けて、玄関の鍵を差し込み「ただいまー」と声をかける。

 すると、さっきとは打って変わって元気そうな顔をした周藤が顔を出した。

「おー!要サンキューな!」

 そう言うと同時に、不思議そうな顔をした周藤が俺の後ろを見ている。

「あ、文月さん。途中で会って俺の荷物運び手伝ってくれてさ」

 そう説明すると周藤が何かを思いついたかのような顔で「カオリー!」と叫んで呼びに行ってしまった。

 よくわからないが、俺はとりあえず文月さんから買い物袋を預かって「すみませんでした」と頭を下げる。

 文月さんが「いえ。それじゃ」と言うので「あ、はい」と返事をして玄関から出ていくのを見届けていると、周藤が走ってきた。

「ちょ、っと待ったぁ!」
「わっ」

 驚いた文月さんは周藤にされるがまま、玄関に引き摺り込まれ、もう一度俺と文月さんは対面してしまう。

「?周藤?」

 俺が声をかけると、周藤は呆れた顔で俺を見た。

「お前、マジで荷物持ちだけで帰すとか……人の心を持て!」

(え、怒られた)

 俺は目を丸くしながら周藤を見ていると、奥からカオリさんがイロハちゃんを抱いたまま慌てて出てきた。

「あらあら、要くんマジで帰そうとしたの⁉︎」
「こいつはちょっと抜けてるから。すみません、文月さん」

 何故か俺の代わりに周藤夫妻が文月さんに頭を下げている。
 文月さんも混乱しているように「いやいや」と困惑しながら俺に助けを求めるように視線をよこしてくる。

「あ、えっと文月さんはね……」

 俺が事情を説明しようとすると、そんなものは聞かないと言わんばかりに周藤が声をかけ始めてしまう。

「もしよかったら文月さんも上がってってよ!」
「そうですよ、うちの鍋の材料運んでくれたんでしょう?」

 ほぎゃあ、と泣くイロハちゃんを揺りながらカオリさんも乗っかって言う。

「えっとだから文月さんは……」

(本当は俺の家に行きたかっただけで――)

 その説明も虚しく「ほらほら」と周藤により、流されてしまった文月さんが俺より先に靴を脱いで周藤家に上がっていた。

 俺は玄関から文月さんを見上げる。

(もう、仕方ないか……)

「もしよければ、お礼に一緒にすき焼き、しませんか」

 苦笑して言えば、文月さんも堪えきれなかったのか吹き出して「……っそうですね」と言った。

 つくづく俺たちは、ロマンチックが似合わないなと思いながら、台所に荷物を運びこんだ。


 *


「よーし!じゃあいただきまーす!」

 周藤の元気な声に合わせて、カオリさんと文月さんも手を合わせて「いただきます」と言った。

(なんだこのメンツは……)

 不思議な気持ちに囚われながらみんなが菜箸で鍋の具を自分の器によそうのを見ている。

「すき焼きがどういうものか分からなくて、ネットのレシピ通りに作ってみたけど、大丈夫そう?」

 先に口をつけていた周藤に聞けば、周藤はもぐもぐはふはふしながら親指を立ててグッと示した。

 カオリさんも「ん~!」と肉を頬張っている。

「人が作ってくれた料理ってなんでこんなに美味しいのかしらねぇ」

 そう言うカオリさんに「あ、そうだ」と箸を置いて言う。

「冷凍庫に作り置きのタッパー入れておいたから、作る時間ない時あっためて食べてよ」
「え、要くんが?」
「え、うん……」

 カオリさんと周藤は俺の言葉に固まってしまう。
 すき焼き鍋のぐつぐつした音だけがリビングに聞こえる。

 隣では文月さんが白滝を食べるのに苦戦していた。

 俺は(なんだ?)と思いながら夫妻を見ていると、夫妻は泣きそうな顔ですき焼きに卵を浸していた。

「要くんがぁ~」

 カオリさんに至ってはもうほぼ泣いている。

「え、なんで泣くの!」

 俺は訳が分からず周藤を見れば、周藤も「要が~!」と半泣きで肉を食っていた。

「なんなの……」

 夫妻の行動の意味がわからないまま、俺も豆腐やネギを器によそった。
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