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死んだ不死鳥【推理編】
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「はぁー?ケモミミ程度で獣人サークルに潜入捜査するつもりですかぁ!?」
突然の怒声。
助手である黒猫は驚き、電話に向かって激怒する探偵へと振り返った。
「いいですか?獣人にもいろいろ系統がありまして、獣人サークルは全身が獣で普段の生活に苦労している方々が集まっているものでしてねぇ!」
電話の相手は、いつもの刑事。
獣人サークルと呼ばれる密かな集いから、とある事件の調査を進めようとしたらしい。
ところが調べが甘かったようだ。
獣人であれば参加できると思ったらしく、ケモミミをつけて集いの飲み会へと向かうつもりだったらしい。
着ぐるみで騙しきれるとも思えないし、店員として飲み会に探りをいれてはどうかと薦めてから探偵は電話を切った。
「まったく、刑事ったら信じられない。もっと頭の良い人だと思ってたのに。」
「ヒトミさんって刑事さんにあんなこと言えるんですね。驚きました。」
「なんだかんだで、会う機会が増えたからかなぁー。」
ケーキで糖分を補給する探偵に、黒猫はコーヒーを用意した。
「不死鳥事件の頃から世話にはなってはいるんだけど。」
「あぁ、死んだ不死鳥の事件ですか。僕はお留守番だったから、詳しいことはしりませんけど。」
不死鳥。
不老不死の鳥。
正確には死なないのではなく、『死んでも蘇る』と言われている伝説の鳥。
『魂が永久に失われる死』という概念が無いという意味では、おそらく『不死』である。というのが探偵の持論だ。
「あれは大変だったなぁ。伝説と言われるだけあって目撃証言も少ないし、実際にいるのかすら不明だったから。当初は自信なかったよ。」
事件を解決した依頼者からの招待で招かれた施設で行われていたオークション会場での出来事であった。
オークションの目玉になるはずだった不死鳥が死んだとのことで、事件を早急に解決するためにと警察から協力を頼まれることになったのが、現地にいたこの探偵である。
集めた情報は、以下のとおり。
①会場内では火気厳禁とのことで、不老不死の実証は大怪我からの治癒力によるもの。オークション関係者の多くが確かに一度死んだのを確認している。
②目撃者は部屋の掃除をしていた作業員一名のみ。鳥の身体が急に燃えだして塵となり、元に戻らなかったという。
③不死鳥が死んだのは落札後の倉庫であり、部屋の窓の鍵は開いていた。
④出品者は借金返済のために発見した不死鳥を売り出すことにしたらしく、購入者は金持ちであり興味と研究のために購入したと発言している。
⑤不死鳥が発見されたのも港付近であり、出品者も購入者も近くの漁業関係者である。
「情報からして、怪しさ満点だったよね、あれは。」
隠しカメラはあったが不死鳥の姿が見えず、一番に疑われたのは目撃者である掃除作業員だった。
不死鳥を逃がした、あるいは隠したのを隠ぺいするために死んだと嘘をついたのでは...という推測である。
その可能性もあったが、探偵は誰を疑うかよりも他の事柄について考えていた。
その不死鳥は本物だったのか。
不死鳥が計画的なことであったのか。
「探偵さんはそんなことから考えてたんですか?」
「大事なことでしょ?誰かを疑うのは、事件をある程度まで把握してからじゃなきゃ。スッキリ解決するには、理由や理屈が必要だからね。」
とはいえ灰しか残っていない現状において、死骸がないのだから『本当に死んだのか』というのも事件において重要な部分であり、それは作業員の発言に左右されるものではあったのだが。
しかしながら探偵である彼女にとって特に奇妙だったのは、現場の雰囲気である。
不死鳥として出品された鳥がいなくなったというのに、いや...だからなのだろうか。
作業員だけでなく、出品者も、購入者も、オーナーでさえも気落ちしているというか、捜査に対して乗気にみえなかった。
彼ら全員が顔見知りである、と知ったあたりから探偵はようやく真相へと辿り付く。
不老不死の謎と共に。
突然の怒声。
助手である黒猫は驚き、電話に向かって激怒する探偵へと振り返った。
「いいですか?獣人にもいろいろ系統がありまして、獣人サークルは全身が獣で普段の生活に苦労している方々が集まっているものでしてねぇ!」
電話の相手は、いつもの刑事。
獣人サークルと呼ばれる密かな集いから、とある事件の調査を進めようとしたらしい。
ところが調べが甘かったようだ。
獣人であれば参加できると思ったらしく、ケモミミをつけて集いの飲み会へと向かうつもりだったらしい。
着ぐるみで騙しきれるとも思えないし、店員として飲み会に探りをいれてはどうかと薦めてから探偵は電話を切った。
「まったく、刑事ったら信じられない。もっと頭の良い人だと思ってたのに。」
「ヒトミさんって刑事さんにあんなこと言えるんですね。驚きました。」
「なんだかんだで、会う機会が増えたからかなぁー。」
ケーキで糖分を補給する探偵に、黒猫はコーヒーを用意した。
「不死鳥事件の頃から世話にはなってはいるんだけど。」
「あぁ、死んだ不死鳥の事件ですか。僕はお留守番だったから、詳しいことはしりませんけど。」
不死鳥。
不老不死の鳥。
正確には死なないのではなく、『死んでも蘇る』と言われている伝説の鳥。
『魂が永久に失われる死』という概念が無いという意味では、おそらく『不死』である。というのが探偵の持論だ。
「あれは大変だったなぁ。伝説と言われるだけあって目撃証言も少ないし、実際にいるのかすら不明だったから。当初は自信なかったよ。」
事件を解決した依頼者からの招待で招かれた施設で行われていたオークション会場での出来事であった。
オークションの目玉になるはずだった不死鳥が死んだとのことで、事件を早急に解決するためにと警察から協力を頼まれることになったのが、現地にいたこの探偵である。
集めた情報は、以下のとおり。
①会場内では火気厳禁とのことで、不老不死の実証は大怪我からの治癒力によるもの。オークション関係者の多くが確かに一度死んだのを確認している。
②目撃者は部屋の掃除をしていた作業員一名のみ。鳥の身体が急に燃えだして塵となり、元に戻らなかったという。
③不死鳥が死んだのは落札後の倉庫であり、部屋の窓の鍵は開いていた。
④出品者は借金返済のために発見した不死鳥を売り出すことにしたらしく、購入者は金持ちであり興味と研究のために購入したと発言している。
⑤不死鳥が発見されたのも港付近であり、出品者も購入者も近くの漁業関係者である。
「情報からして、怪しさ満点だったよね、あれは。」
隠しカメラはあったが不死鳥の姿が見えず、一番に疑われたのは目撃者である掃除作業員だった。
不死鳥を逃がした、あるいは隠したのを隠ぺいするために死んだと嘘をついたのでは...という推測である。
その可能性もあったが、探偵は誰を疑うかよりも他の事柄について考えていた。
その不死鳥は本物だったのか。
不死鳥が計画的なことであったのか。
「探偵さんはそんなことから考えてたんですか?」
「大事なことでしょ?誰かを疑うのは、事件をある程度まで把握してからじゃなきゃ。スッキリ解決するには、理由や理屈が必要だからね。」
とはいえ灰しか残っていない現状において、死骸がないのだから『本当に死んだのか』というのも事件において重要な部分であり、それは作業員の発言に左右されるものではあったのだが。
しかしながら探偵である彼女にとって特に奇妙だったのは、現場の雰囲気である。
不死鳥として出品された鳥がいなくなったというのに、いや...だからなのだろうか。
作業員だけでなく、出品者も、購入者も、オーナーでさえも気落ちしているというか、捜査に対して乗気にみえなかった。
彼ら全員が顔見知りである、と知ったあたりから探偵はようやく真相へと辿り付く。
不老不死の謎と共に。
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