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死んだ不死鳥【謎解き編】
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「僕のことはともかく、その不死鳥の推理がまとまったのはいつ頃なんですか?」
「たしか聞き込み調査で、海が荒れていて船が動かせなかった話を聞いたあたりだったね。」
海が荒れていたのであれば漁業が不況になるのも無理はない。
だからこそ出品者は不死鳥をオークションに出した訳で。
しかし購入者の方も漁業なのに、別の商売が繁盛しているとはいえ金持ちであることには真っ先に疑問に思た。
「最初は刑事に購入者が怪しいってことを伝えて、調べてもらえないか頼んでみたんだ。不死鳥の事件と関係があるとすれば動きやすいと思ったしね。」
「関係あったんですか?」
「考えてもみなよ。荒れた海、儲かってる漁業関係者、購入したのは港で発見された不死鳥、今回の謎は死んでも蘇った不死鳥の死因。」
「...あぁっなるほど!」
黒猫は事件について思い出す。
「それで人魚に辿り付いたんですね。」
「そういうこと。」
不老不死であるはずの不死鳥が蘇らなくなるとは考えにくい。
とすれば、偽物であった可能性が高かった。
オークション経営者による手品か何かのトリックであったとすれば簡単だが、そうせざるを得ない理由が明確化しなかった。
本当に不老不死だったなら、何らかの理由で不老不死になったはずである。
「港で見つかったっていうし、人魚の肉を食べた鳥が不老不死になったんじゃないかって警察も疑いはじめてたみたいだった。」
「人魚に危害を加えるのは重罪ですし、警察の調査も大急ぎで調査したでしょうね。」
人魚の肉を食べれば不老不死になれるという話がある。
おそらくは人魚の仲間が捕らえられてしまい、怒った人魚たちが海を荒らしたのだろうと推察できた。
オークションで不死鳥を買った購入者こそ、人魚を捕らえていた罪人であるとされた。
「問題は、そこじゃなかったんだけどね。」
人魚による不老不死は、人魚の肝を食べることで無くなるらしいと聞いていた。
だが目撃者の証言によれば目の前で突然燃え上がって灰になったという。
なにより購入することに成功したのに、オークション会場で存在を消す意味がない。
つまり、人魚の件と不死鳥の件は無関係かもしれないという考えには早めにたどり着いていた。
「とはいえ人魚の方も放っておけないしで、刑事さんに話を進めながら考えてたよ。他に不老不死を抹消できる手段があるのかって。」
燃え尽きた鳥、窓のある部屋。
不老不死の身体。
不死鳥(仮)の消え方と、現場の状況。
「いろんな情報から導きだした答えが、吸血鬼だったよ。」
吸血鬼は不老不死。
日の光を浴びると燃えて灰になる。
そんな伝承を聞いたことがある人物は探偵も含めて少なくない。
今回の不死鳥の事件内容とかなり似ていたことから確信に近い感覚を抱いた。
太陽を浴びれば灰になってしまう鳥を、オークションが終わるまで保護できた理由は?
大切なオークションの品を、窓の鍵が空いていて日の当たる無用心な部屋なんかに置いたのは?
と、ここまで考えてみれば絞り出すのは簡単だった。
「そこで、オークションのオーナーに直接話に行くことにした。」
オーナーは探偵の推理に対して素直にうなづき、諦めたように両手をあげた。
鏡に映してしまえば、吸血鬼である証明などアッサリできてしまうがゆえの降参だ。
大体は、推理のとおりである。
血に飢えて、うっかり鳥まで吸血してしまった。
鳥の一匹が生き残っており、逃げて仲の良い知人に見つかってしまう。
その鳥を殺してしまえば、不況の知人にお金が入らない。
吸血鬼だと打ち明けられず、鳥の日に当てない保管方法やらオークション後の扱いにいたるまで指示と管理をしていた。
とのことだった。
窓の鍵を開けておいて不死鳥は逃げてしまったことにしてオーナーが賠償する予定だったのだが、偶然にも掃除をしに来た一人に目撃されてしまったらしい。
「なんとか真実を明かすように説得して、全てが丸く収まったというわけだ。理解できたかい?」
「はい。より詳しく知ることができました。でも血に飢えてた吸血鬼と対話するだなんで無防備じゃありませんか?」
「吸血鬼対策ぐらいしておいたって。まぁ襲ってくるような人じゃないって信じてたけどね。」
「鳥を襲うほどだったのに?」
「逆だよ。人間じゃなくて鳥で我慢したんだから。血に飢えたのだって、海が荒れて運搬されるはずだった血液とかが届かなかったからだし。」
「え...まさか、そこまで推理してたんですか?」
「さっき言ったじゃないか。海が荒れてたって話を聞いてから推理がまとまったってさ。」
そうはいっても、と思ったところで探偵が立ち上がる。
「なんにせよ、この事件のおかげで人魚の方も解決したからね。刑事からもできるだけ罪が軽くなるように手配してもらえてよかったよ。」
「ハッピーエンド、ということですか?」
「この手紙を見るかぎりは、ね。」
探偵が手にしていたものを黒猫に見せる。
そこには感謝の手紙と一緒に、海辺の写真が添えられていた。
「さて、千里の道も一歩から。塵も積もれば山となる。今度の事件も地道に調査を始めようか。」
「たしか聞き込み調査で、海が荒れていて船が動かせなかった話を聞いたあたりだったね。」
海が荒れていたのであれば漁業が不況になるのも無理はない。
だからこそ出品者は不死鳥をオークションに出した訳で。
しかし購入者の方も漁業なのに、別の商売が繁盛しているとはいえ金持ちであることには真っ先に疑問に思た。
「最初は刑事に購入者が怪しいってことを伝えて、調べてもらえないか頼んでみたんだ。不死鳥の事件と関係があるとすれば動きやすいと思ったしね。」
「関係あったんですか?」
「考えてもみなよ。荒れた海、儲かってる漁業関係者、購入したのは港で発見された不死鳥、今回の謎は死んでも蘇った不死鳥の死因。」
「...あぁっなるほど!」
黒猫は事件について思い出す。
「それで人魚に辿り付いたんですね。」
「そういうこと。」
不老不死であるはずの不死鳥が蘇らなくなるとは考えにくい。
とすれば、偽物であった可能性が高かった。
オークション経営者による手品か何かのトリックであったとすれば簡単だが、そうせざるを得ない理由が明確化しなかった。
本当に不老不死だったなら、何らかの理由で不老不死になったはずである。
「港で見つかったっていうし、人魚の肉を食べた鳥が不老不死になったんじゃないかって警察も疑いはじめてたみたいだった。」
「人魚に危害を加えるのは重罪ですし、警察の調査も大急ぎで調査したでしょうね。」
人魚の肉を食べれば不老不死になれるという話がある。
おそらくは人魚の仲間が捕らえられてしまい、怒った人魚たちが海を荒らしたのだろうと推察できた。
オークションで不死鳥を買った購入者こそ、人魚を捕らえていた罪人であるとされた。
「問題は、そこじゃなかったんだけどね。」
人魚による不老不死は、人魚の肝を食べることで無くなるらしいと聞いていた。
だが目撃者の証言によれば目の前で突然燃え上がって灰になったという。
なにより購入することに成功したのに、オークション会場で存在を消す意味がない。
つまり、人魚の件と不死鳥の件は無関係かもしれないという考えには早めにたどり着いていた。
「とはいえ人魚の方も放っておけないしで、刑事さんに話を進めながら考えてたよ。他に不老不死を抹消できる手段があるのかって。」
燃え尽きた鳥、窓のある部屋。
不老不死の身体。
不死鳥(仮)の消え方と、現場の状況。
「いろんな情報から導きだした答えが、吸血鬼だったよ。」
吸血鬼は不老不死。
日の光を浴びると燃えて灰になる。
そんな伝承を聞いたことがある人物は探偵も含めて少なくない。
今回の不死鳥の事件内容とかなり似ていたことから確信に近い感覚を抱いた。
太陽を浴びれば灰になってしまう鳥を、オークションが終わるまで保護できた理由は?
大切なオークションの品を、窓の鍵が空いていて日の当たる無用心な部屋なんかに置いたのは?
と、ここまで考えてみれば絞り出すのは簡単だった。
「そこで、オークションのオーナーに直接話に行くことにした。」
オーナーは探偵の推理に対して素直にうなづき、諦めたように両手をあげた。
鏡に映してしまえば、吸血鬼である証明などアッサリできてしまうがゆえの降参だ。
大体は、推理のとおりである。
血に飢えて、うっかり鳥まで吸血してしまった。
鳥の一匹が生き残っており、逃げて仲の良い知人に見つかってしまう。
その鳥を殺してしまえば、不況の知人にお金が入らない。
吸血鬼だと打ち明けられず、鳥の日に当てない保管方法やらオークション後の扱いにいたるまで指示と管理をしていた。
とのことだった。
窓の鍵を開けておいて不死鳥は逃げてしまったことにしてオーナーが賠償する予定だったのだが、偶然にも掃除をしに来た一人に目撃されてしまったらしい。
「なんとか真実を明かすように説得して、全てが丸く収まったというわけだ。理解できたかい?」
「はい。より詳しく知ることができました。でも血に飢えてた吸血鬼と対話するだなんで無防備じゃありませんか?」
「吸血鬼対策ぐらいしておいたって。まぁ襲ってくるような人じゃないって信じてたけどね。」
「鳥を襲うほどだったのに?」
「逆だよ。人間じゃなくて鳥で我慢したんだから。血に飢えたのだって、海が荒れて運搬されるはずだった血液とかが届かなかったからだし。」
「え...まさか、そこまで推理してたんですか?」
「さっき言ったじゃないか。海が荒れてたって話を聞いてから推理がまとまったってさ。」
そうはいっても、と思ったところで探偵が立ち上がる。
「なんにせよ、この事件のおかげで人魚の方も解決したからね。刑事からもできるだけ罪が軽くなるように手配してもらえてよかったよ。」
「ハッピーエンド、ということですか?」
「この手紙を見るかぎりは、ね。」
探偵が手にしていたものを黒猫に見せる。
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