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次は女性陣と子供たちの番だ。俺たちはテントで待機する。
「あいつらが終わったら片づけして引き上げるぞ。」
とエミルさんが言うと、
「そういえばヨール君は次の納税で街へ行くんだったね。どんな仕事をするか決まっているの?」
とヒジョフさんが尋ねてきた。ヒジョフさんの娘さんは冒険者をしているらしい。かなりの腕前らしく、ギルドでは有名なんだそうだ。
「冒険者ギルドでいい仕事があれば雇ってもらおうと考えていますが、冒険者にも憧れがありますね!」
そう答えると、エミルさんが鼻で笑い、
「ミシューより弱いのに冒険者は難しいんじゃねえか。」
とからかいながら俺の頭をガシガシと撫でた。
すると……。
「あんた!!!」
慌てた様子で、ケビンさんの奥さんであるダバサさんがテントにやってきた。水浴びの途中だったのだろう、水気を拭くまもなく急いで服を着てやってきた様子。
「いつの間にかデリルがいないの! デリルがいなくなっちゃったの!」
体を洗っていたため少し目を離してしまった隙にどこかへ行ってしまったという。おそらく一人で森に入ってしまったのだろう。
「俺とジョージで探してくる。お前たちはここを動くな。」
エミルさんとジョージさんがナタを片手に立ち上がった。
あと1時間もしたら日が落ちてしまう。早く探さないとデリル君が危ない。
「俺も行きます!」
俺が立ち上がると、
「余計なことはするな!!」
今まで見たことの無い真剣な顔でエミルさんが怒鳴った。俺の両肩を押さえ込み、無理やりに座らされる。
その足でエミルさんは森へ向かい、俺の頭を軽く撫でてジョージさんも続いた。
「ヨール君の気持ちはうれしい。でも、エミルさんの判断に従わないといけないよ。君は子供なんだ。」
ヒジョフさんが俺の肩を抱えて優しい声で叱ってくれた。ふとケビンさんのほうを見ると、正座をしたまま俯き、両手で膝を力強く握り締め、小さく震えていた。不安なのだろう。
「「デリルどこだー!」」
森のほうからエミルさんとジョージさんの声が聞こえる。
会話は無く、みんな祈るようにして時間だけがゆっくりと過ぎていく。ロウソクの火がゆらゆらとみんなの不安な心を表しているようだった。
すると……。
「うわぁぁぁぁん。」
デリル君の声だ!
みんないっせいにテントから出ると、すでに辺りは闇に包まれていた。
声をするほうを見ると、森の中から泥だらけのデリル君だけがこちらに走り寄り、母親に抱きついた。
「パパァ! ママァ! ごめんなさい!!」
「デリル、エミルさん達に会わなかったのか!?」
「うぅぅ……。オークがぁ……。」
「「「「「「オークだって(ですって)!?」」」」」」
「何頭いたんだデリル! エミルさん達はどうしてるんだ!?」
「5頭くらいいた。エミルおじちゃん達は僕に逃げろって……。」
俺は無我夢中でデリル君がやってきた方向へと走る。
「あいつらが終わったら片づけして引き上げるぞ。」
とエミルさんが言うと、
「そういえばヨール君は次の納税で街へ行くんだったね。どんな仕事をするか決まっているの?」
とヒジョフさんが尋ねてきた。ヒジョフさんの娘さんは冒険者をしているらしい。かなりの腕前らしく、ギルドでは有名なんだそうだ。
「冒険者ギルドでいい仕事があれば雇ってもらおうと考えていますが、冒険者にも憧れがありますね!」
そう答えると、エミルさんが鼻で笑い、
「ミシューより弱いのに冒険者は難しいんじゃねえか。」
とからかいながら俺の頭をガシガシと撫でた。
すると……。
「あんた!!!」
慌てた様子で、ケビンさんの奥さんであるダバサさんがテントにやってきた。水浴びの途中だったのだろう、水気を拭くまもなく急いで服を着てやってきた様子。
「いつの間にかデリルがいないの! デリルがいなくなっちゃったの!」
体を洗っていたため少し目を離してしまった隙にどこかへ行ってしまったという。おそらく一人で森に入ってしまったのだろう。
「俺とジョージで探してくる。お前たちはここを動くな。」
エミルさんとジョージさんがナタを片手に立ち上がった。
あと1時間もしたら日が落ちてしまう。早く探さないとデリル君が危ない。
「俺も行きます!」
俺が立ち上がると、
「余計なことはするな!!」
今まで見たことの無い真剣な顔でエミルさんが怒鳴った。俺の両肩を押さえ込み、無理やりに座らされる。
その足でエミルさんは森へ向かい、俺の頭を軽く撫でてジョージさんも続いた。
「ヨール君の気持ちはうれしい。でも、エミルさんの判断に従わないといけないよ。君は子供なんだ。」
ヒジョフさんが俺の肩を抱えて優しい声で叱ってくれた。ふとケビンさんのほうを見ると、正座をしたまま俯き、両手で膝を力強く握り締め、小さく震えていた。不安なのだろう。
「「デリルどこだー!」」
森のほうからエミルさんとジョージさんの声が聞こえる。
会話は無く、みんな祈るようにして時間だけがゆっくりと過ぎていく。ロウソクの火がゆらゆらとみんなの不安な心を表しているようだった。
すると……。
「うわぁぁぁぁん。」
デリル君の声だ!
みんないっせいにテントから出ると、すでに辺りは闇に包まれていた。
声をするほうを見ると、森の中から泥だらけのデリル君だけがこちらに走り寄り、母親に抱きついた。
「パパァ! ママァ! ごめんなさい!!」
「デリル、エミルさん達に会わなかったのか!?」
「うぅぅ……。オークがぁ……。」
「「「「「「オークだって(ですって)!?」」」」」」
「何頭いたんだデリル! エミルさん達はどうしてるんだ!?」
「5頭くらいいた。エミルおじちゃん達は僕に逃げろって……。」
俺は無我夢中でデリル君がやってきた方向へと走る。
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