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第54章 私の届かぬ想い
北川氏宛てに書いた手紙の添付資料 ③ - 2
しおりを挟むしかし……
微笑みだけは、どうしても描くことが出来ませんでした。
あたたかな優しい微笑みを浮かべた母親の表情を描くつもりでした。だけど、自分は、母の笑った顔を一度も見たことがありません。微笑んだ顔を描きたいのに、どうしても暗い表情になってしまいました。微笑んで欲しいのに、心の中では微笑んでいないような複雑な表情となってしまいました。
微笑みの部分だけ、何年もの歳月がかかり、なかなか完成しませんでした。哀しい魂の傷跡を背負った、どこか物憂げな、淋しい曖昧な微笑みとなりました。
『来世の母』の曖昧な微笑みは、意図したものではなく、偶然の産物でした。
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