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プロローグ
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「…ってやる。出でいってやる、こんな家ーーーーーっ!」
「あらそう?いいの?私は別に構わないけど、困るのはアンタじゃなくて?」
力一杯拳を突き上げた私に、ふわぁぁぁと片手間でアクビをしながら答えるのは、白いパックを顔に貼り付けた背の高い女……の、フリをした立派なオカマ。
スッキリとした首筋を惜しげもなくさらし、トントンと気だるげに自身の肩を叩く。
「そういえば昨日お隣のおばさまから新鮮なトマトとニンジンをいただいたのよねぇ。アンタが出てったら一人でスムージーにでもして飲もうかしら。ハチミツとリンゴも入れて」
じゅるり。
何の音?正解は私の唾液の音だ。
「ちょっとアンタ、なによそのお預けを喰らった犬みたいな顔。
出ていくって言ったのはアンタでしょ?
ほら、さっさと行きなさいよ」
それこそ野良犬でも追い払うかのような態度でしっしっと口にするオカマに、今日も今日とて私の理性は崩壊する。
そしてダーッと滝のように流れ落ちる涙。
「うわーーーーーん!!悔しいッ!でもこんなご馳走を前に逃げ出すなんてそんなことできないっ!!」
「……相変わらず器用ね、アンタ。
どうやったら涙とよだれを同時に流せるの?」
汚い顔、と。
ぼろくそに言われながらもなぜ私はこのオカマから離れられないのか。
ーーーそう、それはただひとつ。
このオカマが今の私にとっての命綱。
大事な大事な«食料»だからだ。
「ふふふ、馬鹿な子ねぇ。
アンタがこの私から離れるなんてできるわけないじゃない。
わかったならさっさとこっちにいらっしゃい。
«食事»したいんでショ?」
妖艶に微笑むオカマに導かれ、本能のままふらふらと前へ進む足。
計算し尽くされた角度に傾けられた首筋。
その、白いうなじが。
ごくり。
ーーーあぁ、何て美味しそう…。
誘蛾灯にあつまる愚かな羽虫のようにふらふらとした足取りで向かった先。
私にとって極上の«食料»を前に、堪えきれず無我夢中でしゃぶりつく。
その、首筋を目掛けて。
………がぶり。
その途端流れ混んでくる血が、生命«いのち»が、私の乾きを潤していく。
あぁ、何でっ。
なんでこんな朝から顔パックしてスムージーを飲んでるようなオカマの血がこんなにおいしいのぉ!!
「あらあら、朝からそんなにがっつくなんて下品な子ねぇ。そんな堪え性のない子には、やっぱりお仕置きが必要かしら…」
「……………あッ!!」
細い、だけどまごうことなき男の指が私のスカートのなかに差し入れられ。
テロテロの化学繊維で作られた、僅かな面積しかない下着が、じっとりと濡れるのが自分でもわかった。
「………こっちまで堪え性がないなんて、とんだ淫乱ね」
ちらりと覗かせた、真っ赤な舌。
「でも」
ぐちゅ…と、爛れた音が耳を犯して。
秘処から抜き取った指が、ぬらぬらとした透明の体液にねばつくのを、ゆっくりとその舌で舐めとり、愉快げに笑う。
「とっても美味しそうだわ」
いまだに首筋に牙を穿ったまま、恍惚とした余韻に浸っていた私は、その場から逃げ出すことすらできず。
「…………こんなに濡れてるんですもの。もういいわよね?」
熱い。
熱い塊が、鉄杭のように私を貫いて。
「あぁ……………!!!」
どちらともなくこぼれ落ちる吐息。
そして私は。
「……やっぱりアンタの中は最高ね」
捕食していはずの獲物に、今日も今日とて、貪られるのだ。
「あらそう?いいの?私は別に構わないけど、困るのはアンタじゃなくて?」
力一杯拳を突き上げた私に、ふわぁぁぁと片手間でアクビをしながら答えるのは、白いパックを顔に貼り付けた背の高い女……の、フリをした立派なオカマ。
スッキリとした首筋を惜しげもなくさらし、トントンと気だるげに自身の肩を叩く。
「そういえば昨日お隣のおばさまから新鮮なトマトとニンジンをいただいたのよねぇ。アンタが出てったら一人でスムージーにでもして飲もうかしら。ハチミツとリンゴも入れて」
じゅるり。
何の音?正解は私の唾液の音だ。
「ちょっとアンタ、なによそのお預けを喰らった犬みたいな顔。
出ていくって言ったのはアンタでしょ?
ほら、さっさと行きなさいよ」
それこそ野良犬でも追い払うかのような態度でしっしっと口にするオカマに、今日も今日とて私の理性は崩壊する。
そしてダーッと滝のように流れ落ちる涙。
「うわーーーーーん!!悔しいッ!でもこんなご馳走を前に逃げ出すなんてそんなことできないっ!!」
「……相変わらず器用ね、アンタ。
どうやったら涙とよだれを同時に流せるの?」
汚い顔、と。
ぼろくそに言われながらもなぜ私はこのオカマから離れられないのか。
ーーーそう、それはただひとつ。
このオカマが今の私にとっての命綱。
大事な大事な«食料»だからだ。
「ふふふ、馬鹿な子ねぇ。
アンタがこの私から離れるなんてできるわけないじゃない。
わかったならさっさとこっちにいらっしゃい。
«食事»したいんでショ?」
妖艶に微笑むオカマに導かれ、本能のままふらふらと前へ進む足。
計算し尽くされた角度に傾けられた首筋。
その、白いうなじが。
ごくり。
ーーーあぁ、何て美味しそう…。
誘蛾灯にあつまる愚かな羽虫のようにふらふらとした足取りで向かった先。
私にとって極上の«食料»を前に、堪えきれず無我夢中でしゃぶりつく。
その、首筋を目掛けて。
………がぶり。
その途端流れ混んでくる血が、生命«いのち»が、私の乾きを潤していく。
あぁ、何でっ。
なんでこんな朝から顔パックしてスムージーを飲んでるようなオカマの血がこんなにおいしいのぉ!!
「あらあら、朝からそんなにがっつくなんて下品な子ねぇ。そんな堪え性のない子には、やっぱりお仕置きが必要かしら…」
「……………あッ!!」
細い、だけどまごうことなき男の指が私のスカートのなかに差し入れられ。
テロテロの化学繊維で作られた、僅かな面積しかない下着が、じっとりと濡れるのが自分でもわかった。
「………こっちまで堪え性がないなんて、とんだ淫乱ね」
ちらりと覗かせた、真っ赤な舌。
「でも」
ぐちゅ…と、爛れた音が耳を犯して。
秘処から抜き取った指が、ぬらぬらとした透明の体液にねばつくのを、ゆっくりとその舌で舐めとり、愉快げに笑う。
「とっても美味しそうだわ」
いまだに首筋に牙を穿ったまま、恍惚とした余韻に浸っていた私は、その場から逃げ出すことすらできず。
「…………こんなに濡れてるんですもの。もういいわよね?」
熱い。
熱い塊が、鉄杭のように私を貫いて。
「あぁ……………!!!」
どちらともなくこぼれ落ちる吐息。
そして私は。
「……やっぱりアンタの中は最高ね」
捕食していはずの獲物に、今日も今日とて、貪られるのだ。
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