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あ!!
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「切り札····って本当に!?」
そんなものがあるなら最初から出せばいいじゃん!という不満と共に問いかけた高瀬。
どう考えても今の状況はジリ貧。ギリギリの攻防。
打開策があるというなら今すぐ実行すべきである。
切り札とか格好いいこと言ってないで、今!!
文字通り身を削って防衛ラインを死守している龍一の額にはじわりと汗がにじみ、顔色も悪い。
長くは持たないことが容易く想像がつく。
無惨に大地に散らばった紙の数が、全てを物語っていた。
「切り札なんて······出すべきタイミングでつかわなきゃなんの意味もないでしょ!?今だよ今!!格好つけてる暇があったらやるよ!」
容赦ない高瀬の指摘に苦笑する龍一。
何事かを語ろうと開かれたその口は、しかし言葉を紡ぐ前に遮られた。
「馬鹿だなぁ嬢ちゃん。
切り札なんてもんがあったら最初からそこまで追い込まれてないだろ?
そこは、気づかない降りをして逃げてやるのが淑女のたしなみってもんだ」
男のメンツって奴だよな?と呑気にとんでもないことを口にする頼我。
話の内容にもぎょっとしたが、問題は他にもある。
「なんでおっさんは襲われないの!?」
なぜだか分からないが、影はむしろあちらを避けているようにも見える。
一人余裕な表情を浮かべているのも当然だ。
「ズルイ!」
「そういわれてもなぁ?」
地団駄を踏む高瀬に、ポリポリと頬を掻きつつ苦笑する頼我。
「······まぁ、役得ってやつだな、うん。
なんならいっそ嬢ちゃんもこっちに来るか?」
ほれほれ、と両手を広げて待ち構える頼我。
「嬢ちゃん一人くらいなら俺が守ってやるぞ?」
「「結構だ」です」
高瀬がお断りの言葉を口にするまでもなく、叩きつけるように却下する二人。
高瀬一人を逃がすならともかく、他の相手―――しかも敵に託すなどもっての他だ。
勿論高瀬も動くつもりは皆無。
「んな警戒すんなって。昨日の敵は今日の友っていうだろ?」
確かにそういうことも時にはあるかもしれないが、今回の場合は。
「まだ今日だから敵認定でよし!!」
「······ん?そうなるのか?」
あれ?と首を傾げる頼我だが、呑気なおっさんに付き合っている余裕はこちらにはない。
「油断するな瀬津。
あの男が狙われないのは恐らく――」
「恐らく?」
「あいつの背後の御霊を仲間と見ているか····もしくは恐れているかのどちらかだろ、··········っ!!」
「龍一!!」
何羽目かのカラスが散ったタイミングで、がくりと膝をついた龍一。
「おいおい大丈夫か?今からでもほら、こっち来るか?」
「結構です!!」
空気を読めと叫びたいが、それどころではない。
「·····まだだ!」
膝をつきながらもすぐさま代わりの札を取りだし、乾かぬ血を擦り付ける龍一。
「―――――行け!!」
後続のカラスが飛び立ったのを確認し、立ち上がりながらペッと地面に唾を吐き出す。
······唾?いや、これは······。
「ちょ·········もしかして血!?」
「······返しを受けているだけだ。大したことじゃない」
ばれたなら気にする事もないと思ったのか、もう一度地面に血を吐き出した龍一。
乱暴に口を拭ったその袖は真っ赤だ。
「·····大したことないわけないじゃん·······!」
馬鹿だ。大馬鹿だ。
やせ我慢にも程がある!!
なんとか――――なんとか打開策を見つけなくては。
考えろ、考えるんだ!と必死な高瀬。
その頭に、ぽんと置かれた手のひら。
振り返れば、そこにいるのは当然――――。
「タカ子。いっそあの男を盾にするというのはどうです?殴り倒して気絶させた後、駄目元の相討ち狙いで、直接あちらにぶつけてみるというのもありですが」
鬼畜だ。
いや間違った、竜児である。
普段なら確実に止めている作戦だが、この時の高瀬は違った。
うむ!
「――――ありかもしれない!」
「では賛成多数で成立ですね」
耳打ちするでもなく堂々と会話する二人。
当然会話は相手にも丸聞こえなわけだが、誰一人それを気にするものはない。
当の頼我本人すらもだ。
「なんだ、兄ちゃんがやるのか?見かけによらず血の気が多いんだなァ」
「単に効率を考えた消去法ですよ」
防衛ラインを守る龍一は動けず、高瀬を戦力外とすれば、後は竜児がやるしかない。
単純にそれだけだが、頼我はその答えに楽しそうに笑う。
「その目、悪くないな。
真面目そうなツラだが、案外楽しめそうだ。
ここで兄ちゃんとやるのも悪かァないが·······いいのか?」
「·······?」
「いや、嬢ちゃん達が気にしないってんならどうでもいいんだが」
でもなぁ、と。
なんとも歯切れの悪い頼我は、すっと指を動かし、一点を指差した。
「·········後一人、忘れてんじゃねぇの?」
そんなものがあるなら最初から出せばいいじゃん!という不満と共に問いかけた高瀬。
どう考えても今の状況はジリ貧。ギリギリの攻防。
打開策があるというなら今すぐ実行すべきである。
切り札とか格好いいこと言ってないで、今!!
文字通り身を削って防衛ラインを死守している龍一の額にはじわりと汗がにじみ、顔色も悪い。
長くは持たないことが容易く想像がつく。
無惨に大地に散らばった紙の数が、全てを物語っていた。
「切り札なんて······出すべきタイミングでつかわなきゃなんの意味もないでしょ!?今だよ今!!格好つけてる暇があったらやるよ!」
容赦ない高瀬の指摘に苦笑する龍一。
何事かを語ろうと開かれたその口は、しかし言葉を紡ぐ前に遮られた。
「馬鹿だなぁ嬢ちゃん。
切り札なんてもんがあったら最初からそこまで追い込まれてないだろ?
そこは、気づかない降りをして逃げてやるのが淑女のたしなみってもんだ」
男のメンツって奴だよな?と呑気にとんでもないことを口にする頼我。
話の内容にもぎょっとしたが、問題は他にもある。
「なんでおっさんは襲われないの!?」
なぜだか分からないが、影はむしろあちらを避けているようにも見える。
一人余裕な表情を浮かべているのも当然だ。
「ズルイ!」
「そういわれてもなぁ?」
地団駄を踏む高瀬に、ポリポリと頬を掻きつつ苦笑する頼我。
「······まぁ、役得ってやつだな、うん。
なんならいっそ嬢ちゃんもこっちに来るか?」
ほれほれ、と両手を広げて待ち構える頼我。
「嬢ちゃん一人くらいなら俺が守ってやるぞ?」
「「結構だ」です」
高瀬がお断りの言葉を口にするまでもなく、叩きつけるように却下する二人。
高瀬一人を逃がすならともかく、他の相手―――しかも敵に託すなどもっての他だ。
勿論高瀬も動くつもりは皆無。
「んな警戒すんなって。昨日の敵は今日の友っていうだろ?」
確かにそういうことも時にはあるかもしれないが、今回の場合は。
「まだ今日だから敵認定でよし!!」
「······ん?そうなるのか?」
あれ?と首を傾げる頼我だが、呑気なおっさんに付き合っている余裕はこちらにはない。
「油断するな瀬津。
あの男が狙われないのは恐らく――」
「恐らく?」
「あいつの背後の御霊を仲間と見ているか····もしくは恐れているかのどちらかだろ、··········っ!!」
「龍一!!」
何羽目かのカラスが散ったタイミングで、がくりと膝をついた龍一。
「おいおい大丈夫か?今からでもほら、こっち来るか?」
「結構です!!」
空気を読めと叫びたいが、それどころではない。
「·····まだだ!」
膝をつきながらもすぐさま代わりの札を取りだし、乾かぬ血を擦り付ける龍一。
「―――――行け!!」
後続のカラスが飛び立ったのを確認し、立ち上がりながらペッと地面に唾を吐き出す。
······唾?いや、これは······。
「ちょ·········もしかして血!?」
「······返しを受けているだけだ。大したことじゃない」
ばれたなら気にする事もないと思ったのか、もう一度地面に血を吐き出した龍一。
乱暴に口を拭ったその袖は真っ赤だ。
「·····大したことないわけないじゃん·······!」
馬鹿だ。大馬鹿だ。
やせ我慢にも程がある!!
なんとか――――なんとか打開策を見つけなくては。
考えろ、考えるんだ!と必死な高瀬。
その頭に、ぽんと置かれた手のひら。
振り返れば、そこにいるのは当然――――。
「タカ子。いっそあの男を盾にするというのはどうです?殴り倒して気絶させた後、駄目元の相討ち狙いで、直接あちらにぶつけてみるというのもありですが」
鬼畜だ。
いや間違った、竜児である。
普段なら確実に止めている作戦だが、この時の高瀬は違った。
うむ!
「――――ありかもしれない!」
「では賛成多数で成立ですね」
耳打ちするでもなく堂々と会話する二人。
当然会話は相手にも丸聞こえなわけだが、誰一人それを気にするものはない。
当の頼我本人すらもだ。
「なんだ、兄ちゃんがやるのか?見かけによらず血の気が多いんだなァ」
「単に効率を考えた消去法ですよ」
防衛ラインを守る龍一は動けず、高瀬を戦力外とすれば、後は竜児がやるしかない。
単純にそれだけだが、頼我はその答えに楽しそうに笑う。
「その目、悪くないな。
真面目そうなツラだが、案外楽しめそうだ。
ここで兄ちゃんとやるのも悪かァないが·······いいのか?」
「·······?」
「いや、嬢ちゃん達が気にしないってんならどうでもいいんだが」
でもなぁ、と。
なんとも歯切れの悪い頼我は、すっと指を動かし、一点を指差した。
「·········後一人、忘れてんじゃねぇの?」
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