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お年玉企画~部長とおせちの甘い罠⑨~
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「ーーーーー要するに、ガス欠ってことなんじゃないか?」
物珍しそうにアレク君をじろじろと眺めながら、簡潔にまとめたのは主任。
部長曰く、アレク君がこの姿になったのは、職場が正月休みに入って2~3日経ってからのことだったらしい。
「ガス欠?」
なんですかそれ、と訝しげに尋ねる高瀬。
「単純にエネルギー切れって奴。
これまで高瀬君の側でエネルギー補給していたのが、正月休みに入って高瀬君っていう栄養源がなくなったからしぼんじゃったって、そいういう話だろ?」
「……しぼんだ」
いくらなんでもひどい言い分である。
せめて小さくなったとか、縮んだとか、もっと言いようはあるだろうに。
それではまるでガスの抜けた風船のようだ。
だが、主任の言うことも一理ある。
確かに、普段から高瀬はアレキサンダーやハム太郎といった小動物sには惜しまず霊力を分け与えていたし、そもそもアレキサンダーはただの飼い犬。
元々強い霊力を持ち合わせていたわけではない。
「でも、それだけで急にここまで小さくなるのは……」
「だからさ、やっぱり高瀬くんが言っていた謎の大きな狼の正体ってこのワンコの事で間違いないんじゃない?一時的にパワーアップした結果、そのツケが一気に回ってこうなったっていうのが一番辻褄があうと思うんだけど」
「なるほど」
そう言われると、そんなような気もしてくる。
あの時のことを思い出し、じっとアレク君を眺めていれば、どこか居心地悪そうに身じろぐアレク君。
……確かにちょっと、怪しいような……?
「谷崎に似てたっていうのもさ、ほら、ペットは飼い主に似るって言うだろ?それじゃないの?
谷崎の高瀬君に対する熱い愛を感じ取って野生を取り戻しちゃったとか。
巨大化したのはほら、特撮モノのお約束だろ」
「ーーーーおい相原」
「最後には必ず敵が巨大化するってやつですね…!」
じろりと睨む部長も何のその、なぜかその説明であっさり納得する高瀬に、「だろ?」と満足気な主任。
「でもその言い分だと私は巨大ロボットに乗って戦わなければならなくなるし、アレク君がラスボス扱いになっちゃうんですが」
「むしろあのわんこは高瀬君の下僕なんだから、高瀬君がその巨大狼に乗って敵と戦えば良かったんじゃない?」
「!!目からウロコがっ!!」
二、三枚ぼろぼろ落っこちた気がします。
なんて斬新な説。
「……っていうのは、まぁ半分冗談としてだ。
こんな面白いことになってるなら早く連絡しろよ?なんで黙ってたんだ?」
煽るだけ煽ってからようやく真面目な表情を作り、先程から不機嫌そうな顔の部長へ話を向けた主任。
「お前に話したところでどうなる」
「でも高瀬君にはもっと早く話してもよかった筈だろ?」
「………」
「もしかして二人きりってシチュエーションに浮かれて、すっかりどうでも良くなってたとかいう口か?」
にやにやと部長の肘をつつくが、部長に限ってそんなことはありえないだろう。
「ただ単に話をするタイミングを見計らってただけじゃないですか?
まぁちょっと小さいだけでアレク君の健康状態に異常はなさそうですし、年末年始の疲れで一時的に頭から抜けてたとかーーーーー」
「だとしたらコイツが左遷される日も近いと思うけどね」
主任いわく、普段の部長から考えると、仕事でミスするのと同じくらいおかしな話ということらしい。
「報告・連絡・相談は社会人の必須だろ?」
「ありましたね、ほうれんそう」
会社の壁にうるさいくらいにポスターが貼ってある。
『そうそう!』
『くぅーん』
高瀬の言葉に反応してか、語尾だけを繰り返すピーちゃんと、困ったような表情のままのチビアレク君。
高瀬ソックリのピーちゃんに対してどう反応すべきか、こちらも若干戸惑い気味のようだ。
たまに高瀬とピーちゃんを見比べ、不思議そうに首を傾げている。
「でも、何でアレク君は部長の影から出てきたんでしょうか?」
というか、ピーちゃんが無理やり引っ張り出してたような気がするんだが、どういう仕組みだったんだろう。
「どうやら普段は俺の影に隠れることにしたらしい。
ここ数日はほとんど姿を見ることがなかったからな。
ーーーーーーだから俺の頭からもすっかり抜けていたんだ」
もともと大人しい性質だしな、と。
言い訳とも取れる言葉を口にする部長に、「本当かよ」と疑わしげな視線を向ける主任。
だが人間、たまにはそんなこともあるだろう。
深く追求してもヤブヘビな感じがあるので、高瀬はそこに関してはさくっと追求を諦めた。
「ん~、じゃあ、とりあえずピーちゃんにはそのままアレク君を抱っこしててもらいましょ。
ピーちゃんと私は繋がってるようなものだし、充電ですよ充電」
本当は高瀬自身が抱っこをしたくて手がわきわきしていたりするのだが、さすがに自分ソックリの幼女からは奪えない。
「っていうことで、予定変更です部長。
おせちをご馳走になったら家に帰ってだらだらするつもりでいましたが、アレク君をこのままほうっては帰れません!」
おあつらえ向きに人数も揃っていることだし、これはやるしかないだろう。
「アレク君が無事に回復するまでの間、正月らしく人生ゲームでもやりましょう!!!」
そして目指せ下克上!
正月から目標達成だ!!
物珍しそうにアレク君をじろじろと眺めながら、簡潔にまとめたのは主任。
部長曰く、アレク君がこの姿になったのは、職場が正月休みに入って2~3日経ってからのことだったらしい。
「ガス欠?」
なんですかそれ、と訝しげに尋ねる高瀬。
「単純にエネルギー切れって奴。
これまで高瀬君の側でエネルギー補給していたのが、正月休みに入って高瀬君っていう栄養源がなくなったからしぼんじゃったって、そいういう話だろ?」
「……しぼんだ」
いくらなんでもひどい言い分である。
せめて小さくなったとか、縮んだとか、もっと言いようはあるだろうに。
それではまるでガスの抜けた風船のようだ。
だが、主任の言うことも一理ある。
確かに、普段から高瀬はアレキサンダーやハム太郎といった小動物sには惜しまず霊力を分け与えていたし、そもそもアレキサンダーはただの飼い犬。
元々強い霊力を持ち合わせていたわけではない。
「でも、それだけで急にここまで小さくなるのは……」
「だからさ、やっぱり高瀬くんが言っていた謎の大きな狼の正体ってこのワンコの事で間違いないんじゃない?一時的にパワーアップした結果、そのツケが一気に回ってこうなったっていうのが一番辻褄があうと思うんだけど」
「なるほど」
そう言われると、そんなような気もしてくる。
あの時のことを思い出し、じっとアレク君を眺めていれば、どこか居心地悪そうに身じろぐアレク君。
……確かにちょっと、怪しいような……?
「谷崎に似てたっていうのもさ、ほら、ペットは飼い主に似るって言うだろ?それじゃないの?
谷崎の高瀬君に対する熱い愛を感じ取って野生を取り戻しちゃったとか。
巨大化したのはほら、特撮モノのお約束だろ」
「ーーーーおい相原」
「最後には必ず敵が巨大化するってやつですね…!」
じろりと睨む部長も何のその、なぜかその説明であっさり納得する高瀬に、「だろ?」と満足気な主任。
「でもその言い分だと私は巨大ロボットに乗って戦わなければならなくなるし、アレク君がラスボス扱いになっちゃうんですが」
「むしろあのわんこは高瀬君の下僕なんだから、高瀬君がその巨大狼に乗って敵と戦えば良かったんじゃない?」
「!!目からウロコがっ!!」
二、三枚ぼろぼろ落っこちた気がします。
なんて斬新な説。
「……っていうのは、まぁ半分冗談としてだ。
こんな面白いことになってるなら早く連絡しろよ?なんで黙ってたんだ?」
煽るだけ煽ってからようやく真面目な表情を作り、先程から不機嫌そうな顔の部長へ話を向けた主任。
「お前に話したところでどうなる」
「でも高瀬君にはもっと早く話してもよかった筈だろ?」
「………」
「もしかして二人きりってシチュエーションに浮かれて、すっかりどうでも良くなってたとかいう口か?」
にやにやと部長の肘をつつくが、部長に限ってそんなことはありえないだろう。
「ただ単に話をするタイミングを見計らってただけじゃないですか?
まぁちょっと小さいだけでアレク君の健康状態に異常はなさそうですし、年末年始の疲れで一時的に頭から抜けてたとかーーーーー」
「だとしたらコイツが左遷される日も近いと思うけどね」
主任いわく、普段の部長から考えると、仕事でミスするのと同じくらいおかしな話ということらしい。
「報告・連絡・相談は社会人の必須だろ?」
「ありましたね、ほうれんそう」
会社の壁にうるさいくらいにポスターが貼ってある。
『そうそう!』
『くぅーん』
高瀬の言葉に反応してか、語尾だけを繰り返すピーちゃんと、困ったような表情のままのチビアレク君。
高瀬ソックリのピーちゃんに対してどう反応すべきか、こちらも若干戸惑い気味のようだ。
たまに高瀬とピーちゃんを見比べ、不思議そうに首を傾げている。
「でも、何でアレク君は部長の影から出てきたんでしょうか?」
というか、ピーちゃんが無理やり引っ張り出してたような気がするんだが、どういう仕組みだったんだろう。
「どうやら普段は俺の影に隠れることにしたらしい。
ここ数日はほとんど姿を見ることがなかったからな。
ーーーーーーだから俺の頭からもすっかり抜けていたんだ」
もともと大人しい性質だしな、と。
言い訳とも取れる言葉を口にする部長に、「本当かよ」と疑わしげな視線を向ける主任。
だが人間、たまにはそんなこともあるだろう。
深く追求してもヤブヘビな感じがあるので、高瀬はそこに関してはさくっと追求を諦めた。
「ん~、じゃあ、とりあえずピーちゃんにはそのままアレク君を抱っこしててもらいましょ。
ピーちゃんと私は繋がってるようなものだし、充電ですよ充電」
本当は高瀬自身が抱っこをしたくて手がわきわきしていたりするのだが、さすがに自分ソックリの幼女からは奪えない。
「っていうことで、予定変更です部長。
おせちをご馳走になったら家に帰ってだらだらするつもりでいましたが、アレク君をこのままほうっては帰れません!」
おあつらえ向きに人数も揃っていることだし、これはやるしかないだろう。
「アレク君が無事に回復するまでの間、正月らしく人生ゲームでもやりましょう!!!」
そして目指せ下克上!
正月から目標達成だ!!
応援ありがとうございます!
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