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第3章 松陰密航
6 暗礁に乗り上げる寅次郎一行
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その夜、横浜村の海辺に向かった寅次郎達は密航のための小舟を貸してくれる漁師を探し回ったが、漁師達はみな密航の手助けしたことで咎められるのを恐れ、誰も貸してくれる人は誰もいなかった。
「僕たちは何としてでもペルリの黒船に乗り込まなければならないのです! どうか小舟を貸してはもらえんじゃろうか?」
寅次郎は何度も断られながらも必死の形相で漁師達に嘆願した。
「しつこいお武家様ですね。何度頼まれようと小船を貸すことはできません。密航の手助けをしようものなら私達まで罪に問われることになりますので。漁の邪魔ですので早くそこをどいて頂けませんか?」
漁師達は冷淡な口調で言い放つと漁の準備にせっせと取り掛かる。
それからというもの、寅次郎達は来る日も来る日も小舟を貸してくれる漁師を必死で探したが見つからず、とうとうペリーの艦隊は横浜村を出航してしまった。
「一体僕らはどねーすればええんでしょうか? 先生」
金子はペリー艦隊がいなくなった後の海辺にて途方に暮れながらつぶやく。
「諦めるのは早いぞ、金子君。まだペルリがメリケンに帰ったと決まった訳ではないっちゃ! もしかしたら開港予定の函館か下田、はたまた長崎にでも向かっちょるのかもしれん!」
金子の隣で得意げに豪語する寅次郎の心には、まだ希望の火が灯っている。
「何を根拠にそねーな事が言えるのですか? ペルリはメリケンに帰ったに決まっちょります。先生は以前長崎でオロシア船の密航に失敗したことを忘れたのですか?」
金子が不服そうな様子で寅次郎に言う。
「そのペルリの艦隊なら今下田におるそうじゃぞ」
象山が海辺に姿を現して寅次郎達の後ろから声をかけた。
「象山先生! わざわざご足労頂かなくともこちらから出向きましたのに」
後ろを振り向いた寅次郎は驚いて思わず声を上げる。
「なに、ただ陣営にずっとおるのも退屈じゃったから散歩がてら寄っただけじゃ」
象山は笑いながら言うと寅次郎達の元へ歩き出す。
「左様でしたか。ところでペルリの艦隊が下田に向かったというのは確かなのですか?」
寅次郎が象山に尋ねる。
「確かじゃ。ペルリと会談した林大学頭様から直接聞いた話じゃから間違いない。何でも下田で港の検分をするみたいじゃぞ」
象山は質問に答えると懐から紙をとり出して寅次郎に手渡す。
「渡航趣意書はしっかり添削させてもらったぞ。これを持って今から下田へ向かえばまだ間に合うはずじゃ。体にはくれぐれも気を付けるんじゃぞ、寅次郎」
「ありがとうございます! 今度こそ密航して西洋の技術や知識を身に付けて参ります」
寅次郎は礼を言うと、金子と供に海辺から離れて村へと戻り、出立の準備を始めた。
「僕たちは何としてでもペルリの黒船に乗り込まなければならないのです! どうか小舟を貸してはもらえんじゃろうか?」
寅次郎は何度も断られながらも必死の形相で漁師達に嘆願した。
「しつこいお武家様ですね。何度頼まれようと小船を貸すことはできません。密航の手助けをしようものなら私達まで罪に問われることになりますので。漁の邪魔ですので早くそこをどいて頂けませんか?」
漁師達は冷淡な口調で言い放つと漁の準備にせっせと取り掛かる。
それからというもの、寅次郎達は来る日も来る日も小舟を貸してくれる漁師を必死で探したが見つからず、とうとうペリーの艦隊は横浜村を出航してしまった。
「一体僕らはどねーすればええんでしょうか? 先生」
金子はペリー艦隊がいなくなった後の海辺にて途方に暮れながらつぶやく。
「諦めるのは早いぞ、金子君。まだペルリがメリケンに帰ったと決まった訳ではないっちゃ! もしかしたら開港予定の函館か下田、はたまた長崎にでも向かっちょるのかもしれん!」
金子の隣で得意げに豪語する寅次郎の心には、まだ希望の火が灯っている。
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金子が不服そうな様子で寅次郎に言う。
「そのペルリの艦隊なら今下田におるそうじゃぞ」
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「象山先生! わざわざご足労頂かなくともこちらから出向きましたのに」
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