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第8章 ライバンス・魔法学院編
第178話 望まぬ決戦に向かって
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ここでオレは内心の怒りを押し殺しつつ、ビューゼリアンに呼びかける。
こいつはこんな事になった元凶だが、少なくともこの場を切り抜けてガランディアを助けるられるなら、今のところは我慢しよう。
それでまたオレとガランディアの関係について余計な勘ぐりをしても、当然無視するぞ。
その後でコイツが残っていたら、今度こそオレの手で成仏させてやるからな!
「一つ聞きますけど、あなたにはガランディアを助けてこの状況を打開するいい方策がありますか?」
『そんな都合のよいものがあったら、とっくの昔にやっているだろう』
そんな事を堂々と言うんじゃ無い!
まあ予想はしていたから、その程度で落胆はしないけどな。
「つまり具体的に打つ手はないのですか?」
『そんなわけはない。もうしばらくすれば防衛体制が整うから、召喚したモンスターや霊体などで波状攻撃をかける。いかにあのものが異界の力を有していたとしても、その身体は脆い人の身だ。最終的には打ち倒せるはずだ』
ああそうだね。オレも『人の身』の不自由さは何度思い知らされたか分らない。
あのガランディアに取り憑いて暴走している亡霊だって、無限の力があるわけじゃないだろうから、いつかは倒されるだろうよ。
しかしそれで安堵出来るはずが無い。
「その場合、ガランディアはどうなるんですか?」
『魔術の進歩にその身を捧げた英霊として扱おう』
「それを聞いてこっちの覚悟も固まりましたよ」
まったくもって血も涙もない ―― 実際、精霊なんだからその通りなんだけど ―― ビューゼリアンの結論を受けてオレは自分が何をするか決定した。
『ほう。そなたはあのものを助けたいのか?』
「当たり前です」
『そうか。ならば先ほども言ったが、あのものを生還させてくれるなら、喜んで手を貸そうではないか。何しろ大切な我が校の生徒だからな』
実験材料にしておきながら何とも厚かましい言いぐさだが、恐らくこれは嘘ではないはずだ。
ただしありのままの真実でもないこともまたこっちは確信しているけどな。
「それは嘘ではないかもしれませんけど、本音の大部分は違うでしょう」
『どういう意味だ?」
「あなただってガランディアが生き残って、どんな体験をしたのか証言してくれた方がいいに決まっています。だから彼を死なせたくない。違いますか?」
そうだ。一神教徒の領域では死者の霊体が語ることはない ―― 少なくともそういうことになっている。
だからガランディアの先祖であるガーランドが何をしたのか、ハッキリしないのだ。
当然、いまガランディアが死んだら、彼の霊体を呼び出して何があったのかを聞くような真似も出来ない事になる。
つまりビューゼリアンにとっては実験材料であるガランディアも生きていてくれた方がよいのだ。
『確かにその通りだな。それでそなたはあの者を救いたいのか? 断っておくが、口づけをしたら正気に戻るとかそんな甘い話ではないぞ』
ああそうだね。口づけぐらいでガランディアが正気に戻ってくれるのなら、どうせもうとっくにファーストキスを奪われているし、それぐらいの代償は払ってやってもいいよ。
もちろんそれぐらいで事態が打開できる程度のピンチが来た事など、オレには一度としてないけどな。
「もちろんそんな事などしません。それで今はどんな手を使ってもいいので、あいつの注意を引いて下さい」
『いったい何をする気だ?』
「もしもいまガランディアに憑いている存在がこっちの思っている通りだったら、何とか出来るかもしれません」
『それではその思惑が外れていたらどうなるのだ?』
こんな時に『失敗すれば死ぬだけです』などとあっさり答えられる程、オレの神経は太くない。
だいたいオレは今まで『命を賭けた』事は何度もあるけど、いつも成算はそれなりにあったつもりだ。
死ぬと分っていて飛び込むほどオレはバカでは無い ―― そうでなかったらとっくの昔にこの世界からおさらばしているよ。
しかし成算はあっても確証があったこともまた一度も無い。
全くなんだって、オレはいつもこんなに追い込まれないといけないのかね。
たまには余裕綽々で相手を蹴散らす事だってあってもいいだろう。
そんな事にならないからこその、オレなんだろうけどな。
「もし当てが外れていたら、こっちは逃げますから、あとはあなたがこの学園を守るために戦って下さい」
『それはまた随分と無責任な言いぐさだな。自分は責任を放棄して、他者に後始末を任せるのか?』
「それどの口で言っているんですか!」
あまりの厚かましい言いぐさにオレはひっくり返るかと思ったよ。
やっぱりこのビューゼリアンも精霊とは言え、聖セルム教徒というだけあって、実に図々しい一面があるようだ。
『生憎だが我には――』
「あなたに口がないとか、そういう下らない話をしている場面じゃないですよ」
オレは予想していたツッコミを、前もって切り捨てる。
まあいいさ。どうせオレには『当てになる味方』がいることなんて滅多に無いんだから、いつものことだよ。
『分った。いいだろう。ここはそなたに協力しよう』
「感謝はしませんよ。それぐらい当たり前ですからね」
『終わったら。次は我に復讐するつもりか?』
「もしも可能だったら、それも考えておきますよ」
皮肉と本音を混ぜ込みつつ、決戦の場に向かうオレはいちおう自分では格好いい姿だろうと思う事にした。
とりあえずガランディアの姿はこの位置からでは見えないので、オレが周囲の状況を把握すべく歩き出したところで制止の声が飛ぶ。
「ちょっとあなた? どこにいくのですか?」
見るとスビーリーがオレの方に駆け寄ってくる。
ここでは適当な嘘をついてごまかしてもいいだろう。
いっそのこと『怖くなったので逃げ出します、もう二度とここには来ません』とでも言っておけば、これ以上連中に邪魔される事もない。
オレは別にこいつらに軽蔑されても困らないし、適当な台詞でごまかすとするか。
しかしオレが口を開く前に、横合いから割って入る姿があった。
「分っている! ガランディアを助けにいくのね! だったらわたしも同行させてもらうからな!」
おい! アニーラ! オレは何も言ってないのに勝手に決めつけるな!
もちろんその通りなんだけど、あくまでもこれはオレの『自己満足』のための行動であって、お前が決めつけているように、ガランディアに対して特別な感情があるわけじゃないからな!
「それではこっちも同行させてもらいますわ~」
ホン・イールがそう言ってくる事は予想していたけど、結局のところこういうバカ連中の妄想がこんな時に限っておおむね正解 ―― 動機だけは大間違い ―― なのはどういうことなんだろうな。
ここは全力疾走して振り切るべきだろうか?
いや。そんな事しても連中が勝手にガランディアの方に向かうから無駄だろう。
かえって心配事が増えるだけになる気がする。
仕方ないので一緒に付き合ってもらうとするか。
ビューゼリアンは全く当てにならないけど、こいつらは一応、ガランディアを助けると言う点ではオレと共通しているはずなので、手助けになるかもしれない。
もしそうならなかったなら ―― そのときはオレが余分に苦労すれば済むことだ。
そんな事を考えつつ、オレ達はひとまずガランディアの居場所の中心らしい、強力な魔力が渦巻き、あたりの空気を薄暗く染めているかのような方向に一歩を踏み出す。
オレはガランディアのように他人の魔力を判別出来るような感覚は有していないが、魔力を見ることの出来る魔法である【魔法眼】を使えば、強大な魔力の塊とそれが発する波動を見ることぐらいは出来る。
今のガランディアの発する波動は、魔力をごっそり奪われたオレ自身に比べてもかなり強大な存在に感じられる。
それなら『信徒からまた魔力を引き出せばいい』と言われそうだが、信徒から魔力を得ることそのものは簡単だが、それはあくまでも外部からの補給であってオレ自身の消耗が回復するわけじゃない。
敢えて言えば『本人の魔力』はパソコンのメモリ容量で『信徒から得る魔力』はハードディスク容量みたいなものらしい。
だから信徒から得られる魔力が幾ら多くても、本人の魔力が少ないと出来る事は限られてくるわけだ。
まあオレも信徒から魔力を引き出すのは二回目なので、今回初めてそれに気付いたというわけなんだが、言い換えると今のオレの魔力がさっきの実験でかなり減っているのは相当深刻な問題だ。
多くの場合、抵抗する相手に魔法をかけるには、自分の魔力で相手の魔力を打ち破る必要がある ―― ちなみに【火球】や【電撃】のたぐいは相手に魔法をかけるのではなく、物質を発生させて相手に叩きつける魔法なので、魔力をぶつけ合う必要は無い。
そんなわけで現状の魔力では取り憑かれたガランディアに太刀打ち出来るとは言い切れない。
もちろん相手もさっきからかなり魔力を使っている様子なので、どうにかなるかもしれないが、保証など無い事は同じである。
もしも勝負を仕掛けてそこで『こっちの魔力では歯が立ちません』という事になれば、そこでオレの人生はおしまいとなってしまう。
しかしここでオレの魔力が回復するのを待っていたら、いま通報を受けて出動しているであろう連中にガランディアが始末されてしまう危険性が高い。
もちろん『あれ』をこのままにしておけば被害が拡大するのは明らかなので、それを放置するわけにもいかない。
しかしこういうのって普通は『勇者』様がやるべきことであって、オレは『サポート要員』のはずなんだけどなあ。
まあいい。やることが決まったのなら、それでどこか気分が落ち着いてきた気がするよ。
よし! ガランディアよ。これだけでも助けに行く人間がいることを誇りに思え!
キスだったらやってくれる相手が何人もいるんだから、そっちを当てにすればいいぞ!
そんなわけでオレ達で助けに行くから待っていろよ!
そう思ってガランディアのいた方向を見ると ―― あれ? さっきまであった魔力の波動が消えているぞ。
いったいどこにいった?
僅かに困惑し、そして不吉な予感にオレが胸をわしづかみにされた瞬間、土を踏みしめる足音が耳に響き、同時にこっちの背筋に寒気が走る。
オレ、というよりは一同がギクシャクと振り返った時、そこには異様な空気としか言いようのないものをまとったガランディアが立っていた。
「ど、どうしてここに?」
いや。もちろんガランディアは魔力を感知する能力もあったから、たぶんオレの魔力を追ってきたのだろう。
これはガランディアの意志が今でもその行動に反映されているからなのか。それともガランディアを乗っ取った怨念が何らかの目的を持っているからなのか。
だけど今は理由などどうでもいい。
これは大ピンチであるかもしれないが、同時にオレ達だけでケリをつける千載一遇の好機!
そう考えるしかない!
こいつはこんな事になった元凶だが、少なくともこの場を切り抜けてガランディアを助けるられるなら、今のところは我慢しよう。
それでまたオレとガランディアの関係について余計な勘ぐりをしても、当然無視するぞ。
その後でコイツが残っていたら、今度こそオレの手で成仏させてやるからな!
「一つ聞きますけど、あなたにはガランディアを助けてこの状況を打開するいい方策がありますか?」
『そんな都合のよいものがあったら、とっくの昔にやっているだろう』
そんな事を堂々と言うんじゃ無い!
まあ予想はしていたから、その程度で落胆はしないけどな。
「つまり具体的に打つ手はないのですか?」
『そんなわけはない。もうしばらくすれば防衛体制が整うから、召喚したモンスターや霊体などで波状攻撃をかける。いかにあのものが異界の力を有していたとしても、その身体は脆い人の身だ。最終的には打ち倒せるはずだ』
ああそうだね。オレも『人の身』の不自由さは何度思い知らされたか分らない。
あのガランディアに取り憑いて暴走している亡霊だって、無限の力があるわけじゃないだろうから、いつかは倒されるだろうよ。
しかしそれで安堵出来るはずが無い。
「その場合、ガランディアはどうなるんですか?」
『魔術の進歩にその身を捧げた英霊として扱おう』
「それを聞いてこっちの覚悟も固まりましたよ」
まったくもって血も涙もない ―― 実際、精霊なんだからその通りなんだけど ―― ビューゼリアンの結論を受けてオレは自分が何をするか決定した。
『ほう。そなたはあのものを助けたいのか?』
「当たり前です」
『そうか。ならば先ほども言ったが、あのものを生還させてくれるなら、喜んで手を貸そうではないか。何しろ大切な我が校の生徒だからな』
実験材料にしておきながら何とも厚かましい言いぐさだが、恐らくこれは嘘ではないはずだ。
ただしありのままの真実でもないこともまたこっちは確信しているけどな。
「それは嘘ではないかもしれませんけど、本音の大部分は違うでしょう」
『どういう意味だ?」
「あなただってガランディアが生き残って、どんな体験をしたのか証言してくれた方がいいに決まっています。だから彼を死なせたくない。違いますか?」
そうだ。一神教徒の領域では死者の霊体が語ることはない ―― 少なくともそういうことになっている。
だからガランディアの先祖であるガーランドが何をしたのか、ハッキリしないのだ。
当然、いまガランディアが死んだら、彼の霊体を呼び出して何があったのかを聞くような真似も出来ない事になる。
つまりビューゼリアンにとっては実験材料であるガランディアも生きていてくれた方がよいのだ。
『確かにその通りだな。それでそなたはあの者を救いたいのか? 断っておくが、口づけをしたら正気に戻るとかそんな甘い話ではないぞ』
ああそうだね。口づけぐらいでガランディアが正気に戻ってくれるのなら、どうせもうとっくにファーストキスを奪われているし、それぐらいの代償は払ってやってもいいよ。
もちろんそれぐらいで事態が打開できる程度のピンチが来た事など、オレには一度としてないけどな。
「もちろんそんな事などしません。それで今はどんな手を使ってもいいので、あいつの注意を引いて下さい」
『いったい何をする気だ?』
「もしもいまガランディアに憑いている存在がこっちの思っている通りだったら、何とか出来るかもしれません」
『それではその思惑が外れていたらどうなるのだ?』
こんな時に『失敗すれば死ぬだけです』などとあっさり答えられる程、オレの神経は太くない。
だいたいオレは今まで『命を賭けた』事は何度もあるけど、いつも成算はそれなりにあったつもりだ。
死ぬと分っていて飛び込むほどオレはバカでは無い ―― そうでなかったらとっくの昔にこの世界からおさらばしているよ。
しかし成算はあっても確証があったこともまた一度も無い。
全くなんだって、オレはいつもこんなに追い込まれないといけないのかね。
たまには余裕綽々で相手を蹴散らす事だってあってもいいだろう。
そんな事にならないからこその、オレなんだろうけどな。
「もし当てが外れていたら、こっちは逃げますから、あとはあなたがこの学園を守るために戦って下さい」
『それはまた随分と無責任な言いぐさだな。自分は責任を放棄して、他者に後始末を任せるのか?』
「それどの口で言っているんですか!」
あまりの厚かましい言いぐさにオレはひっくり返るかと思ったよ。
やっぱりこのビューゼリアンも精霊とは言え、聖セルム教徒というだけあって、実に図々しい一面があるようだ。
『生憎だが我には――』
「あなたに口がないとか、そういう下らない話をしている場面じゃないですよ」
オレは予想していたツッコミを、前もって切り捨てる。
まあいいさ。どうせオレには『当てになる味方』がいることなんて滅多に無いんだから、いつものことだよ。
『分った。いいだろう。ここはそなたに協力しよう』
「感謝はしませんよ。それぐらい当たり前ですからね」
『終わったら。次は我に復讐するつもりか?』
「もしも可能だったら、それも考えておきますよ」
皮肉と本音を混ぜ込みつつ、決戦の場に向かうオレはいちおう自分では格好いい姿だろうと思う事にした。
とりあえずガランディアの姿はこの位置からでは見えないので、オレが周囲の状況を把握すべく歩き出したところで制止の声が飛ぶ。
「ちょっとあなた? どこにいくのですか?」
見るとスビーリーがオレの方に駆け寄ってくる。
ここでは適当な嘘をついてごまかしてもいいだろう。
いっそのこと『怖くなったので逃げ出します、もう二度とここには来ません』とでも言っておけば、これ以上連中に邪魔される事もない。
オレは別にこいつらに軽蔑されても困らないし、適当な台詞でごまかすとするか。
しかしオレが口を開く前に、横合いから割って入る姿があった。
「分っている! ガランディアを助けにいくのね! だったらわたしも同行させてもらうからな!」
おい! アニーラ! オレは何も言ってないのに勝手に決めつけるな!
もちろんその通りなんだけど、あくまでもこれはオレの『自己満足』のための行動であって、お前が決めつけているように、ガランディアに対して特別な感情があるわけじゃないからな!
「それではこっちも同行させてもらいますわ~」
ホン・イールがそう言ってくる事は予想していたけど、結局のところこういうバカ連中の妄想がこんな時に限っておおむね正解 ―― 動機だけは大間違い ―― なのはどういうことなんだろうな。
ここは全力疾走して振り切るべきだろうか?
いや。そんな事しても連中が勝手にガランディアの方に向かうから無駄だろう。
かえって心配事が増えるだけになる気がする。
仕方ないので一緒に付き合ってもらうとするか。
ビューゼリアンは全く当てにならないけど、こいつらは一応、ガランディアを助けると言う点ではオレと共通しているはずなので、手助けになるかもしれない。
もしそうならなかったなら ―― そのときはオレが余分に苦労すれば済むことだ。
そんな事を考えつつ、オレ達はひとまずガランディアの居場所の中心らしい、強力な魔力が渦巻き、あたりの空気を薄暗く染めているかのような方向に一歩を踏み出す。
オレはガランディアのように他人の魔力を判別出来るような感覚は有していないが、魔力を見ることの出来る魔法である【魔法眼】を使えば、強大な魔力の塊とそれが発する波動を見ることぐらいは出来る。
今のガランディアの発する波動は、魔力をごっそり奪われたオレ自身に比べてもかなり強大な存在に感じられる。
それなら『信徒からまた魔力を引き出せばいい』と言われそうだが、信徒から魔力を得ることそのものは簡単だが、それはあくまでも外部からの補給であってオレ自身の消耗が回復するわけじゃない。
敢えて言えば『本人の魔力』はパソコンのメモリ容量で『信徒から得る魔力』はハードディスク容量みたいなものらしい。
だから信徒から得られる魔力が幾ら多くても、本人の魔力が少ないと出来る事は限られてくるわけだ。
まあオレも信徒から魔力を引き出すのは二回目なので、今回初めてそれに気付いたというわけなんだが、言い換えると今のオレの魔力がさっきの実験でかなり減っているのは相当深刻な問題だ。
多くの場合、抵抗する相手に魔法をかけるには、自分の魔力で相手の魔力を打ち破る必要がある ―― ちなみに【火球】や【電撃】のたぐいは相手に魔法をかけるのではなく、物質を発生させて相手に叩きつける魔法なので、魔力をぶつけ合う必要は無い。
そんなわけで現状の魔力では取り憑かれたガランディアに太刀打ち出来るとは言い切れない。
もちろん相手もさっきからかなり魔力を使っている様子なので、どうにかなるかもしれないが、保証など無い事は同じである。
もしも勝負を仕掛けてそこで『こっちの魔力では歯が立ちません』という事になれば、そこでオレの人生はおしまいとなってしまう。
しかしここでオレの魔力が回復するのを待っていたら、いま通報を受けて出動しているであろう連中にガランディアが始末されてしまう危険性が高い。
もちろん『あれ』をこのままにしておけば被害が拡大するのは明らかなので、それを放置するわけにもいかない。
しかしこういうのって普通は『勇者』様がやるべきことであって、オレは『サポート要員』のはずなんだけどなあ。
まあいい。やることが決まったのなら、それでどこか気分が落ち着いてきた気がするよ。
よし! ガランディアよ。これだけでも助けに行く人間がいることを誇りに思え!
キスだったらやってくれる相手が何人もいるんだから、そっちを当てにすればいいぞ!
そんなわけでオレ達で助けに行くから待っていろよ!
そう思ってガランディアのいた方向を見ると ―― あれ? さっきまであった魔力の波動が消えているぞ。
いったいどこにいった?
僅かに困惑し、そして不吉な予感にオレが胸をわしづかみにされた瞬間、土を踏みしめる足音が耳に響き、同時にこっちの背筋に寒気が走る。
オレ、というよりは一同がギクシャクと振り返った時、そこには異様な空気としか言いようのないものをまとったガランディアが立っていた。
「ど、どうしてここに?」
いや。もちろんガランディアは魔力を感知する能力もあったから、たぶんオレの魔力を追ってきたのだろう。
これはガランディアの意志が今でもその行動に反映されているからなのか。それともガランディアを乗っ取った怨念が何らかの目的を持っているからなのか。
だけど今は理由などどうでもいい。
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