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第11章 文明の波と消えゆくもの達と
第294話 新たな危機に対して
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とにかく今は眼前でにらみ合っている、テルモーとミキューの二人をどうにかせねばならない。
このままオレが立ち去りでもしたら、確実にどっちか死ぬまで戦うだろう。
そうなるとある程度は知っているテルモーよりも、殆ど知らないミキューの方に尋ねるべきだな。
「あの。ミキューさん。あなた方はこの辺りを縄張りにして狩りをしてきたのですか?」
「当然よ」
「何を言う! ここは我らの縄張りだ!」
なるほど。長年の宗教的な対立だけでなく縄張りを巡る争いが、両者のいがみ合いの元凶なんだなあ。
「それでミキューさんの同族はどこにいるんですか?」
ここで新手が現れたら、いくら何でも勝ち目のない戦いはしないだろうから、一人だけのテルモーも逃げるしかないだろう。
ただオレは魔法で夜目や他の知覚力も強化しているが、その感覚に何も引っかからないのだからミキューと相棒の狼以外には誰もいないとしか考えられないのだ。
そしてミキューはここでかなりあからさまに落胆の様子を見せる。
「……いないわ。私の部族は人間に襲われてちりぢりになってしまったから」
それはお気の毒としか言いようが無いけど、そんな状態でも身近な敵対関係を優先させるというのも困ったところだ。
もちろんここでオレが『力を合わせなさい』などと言ったところで、簡単に言うとおりにしてくれるなら苦労はない。
よくあるヒロイックファンタジーなら分裂していた『二本足の狼』達が『侵略者』を前に結束して撃退し、もっと都合がよければ新たな強大な敵の前に、開拓民と『二本足の狼』が力を合わせて、それ以降は仲良くなる事が期待出来るわけだが、この世界でそんな夢のような展開が起きるはずがないのだ。
「そうか……お前の方も同じか……」
さすがのテルモーもミキューが同じ『文明に追われてひとりぼっち』の境遇である事に少しは共感を抱いてはくれているようだ。
だがそれにミキューは自分の狼に手を伸ばし、目をむいて言い返す。
「はん! 一緒にしないでよ! こっちにはこの銀月がいるのだからね!」
「何だと! この俺には大いなる狼と先祖の霊がついているんだ!」
「ああ。はいはい! そこまでそこまで!」
まったく。オレが暴力的行動を抑止する『調和』をかけていなかったら、やっぱり殺し合いにしかならないな。
とても力を合わせるなんて出来っこないか。
しかしここでオレの聴覚には、更に別の不吉な声が響いてきた。
「おい! 聞こえたか!」
「あっちの方で吠えていたぞ」
「逃がすなよ。今度こそ間違いなく仕留めるんだ」
うがあ。農民や猟師達がさっきの戦いの雄叫びを聞きつけたか。
テルモー達が家畜を襲っているなら、農民の一部は夜中でも警戒しているのは間違いない。
先ほどのテルモーと銀月の戦いは、規模においては一人と一匹という、世界でもっとも小規模なものだったが、その雄叫びは周囲数キロの寝ぼすけ達をたたき起こすに十分だったはずだ。
見ると複数の松明の明かりがこっちに向かってきている。
ええい。これはヤバすぎる。
ただでさえ『二本足の狼』同士の不毛な争いに、地元の住民まで加わったら、幾ら『調和』で暴力的行動を抑止しても、収拾がつかなくなるのは確実だ。
オレが使っている『調和』で暴力行動を抑止できるのは、魔法をかけた時に効果範囲にいた相手だけで、その後で接近してきた対象には効果はない。
そしてその相手が暴力的な行為に出たら、即座に魔法の効果は切れてしまうのだ。
従って次から次に相手がやってくる場合『調和』ではどうしようもない。
こうなったら出来る事は一つだけだ。
「テルモーにミキュー。二人ともここは一緒に逃げましょう」
「なぜこんな奴と!」
「真っ平ゴメンよ!」
オレの呼びかけに二人は揃って反発する。
分かってはいたけど、人間を前にしても『二本足の狼同士で結束して事に当たろう』という気は無いらしい。
実際、元の世界でも外敵の脅威が迫っているのに、旧来の因縁の方を優先させる例は珍しくなかったそうだ。
また完全な異教徒よりも同じ宗派の異宗派の方への憎しみが強いというのも、よくある話だったらしい。
ひょっとしたらオレが『調和』をかけていなかったら、この二人はここにあの人間達がやってくるまで殺し合いに熱中していたかもしれないぞ。
「このままここにいたら、また攻撃されてしまいますよ! こんなところでムダに命を落とすのが、あなた方の信じる『大いなる狼』の意志に沿うのですか!」
「……」
オレが怒鳴りつけると二人は押し黙る。
さすがにここで戦うと言い出さなかったのは胸をなで下ろすところだ。
まあ野生動物を崇拝しているなら、プライドのために勝ち目のない戦いをやるなんて事は考えないだろうからな。
「それでは行きましょう。お互いの事は後で考えて、今は力を合わせて生き延びる事を優先させるのです」
「……分かった」
テルモーはどうやらオレの言い分を理解してくれたらしい。
怪我を治し、餌付けして、一緒に寝た事である程度は信頼してもらえているようだな。
「……」
一方のミキューは少々不満げだな。
今のところ狩人達から逃げる事に異論は無いようだが、こちらに同行するほど信頼は得ていないのだから仕方ない。
だけどオレとしては出来ればテルモーとミキューをどうにか和解させたい。
いつものようにこれが自己満足なのは分かっているが、それでも何もせずに立ち去る事は出来なかったのだ。
「とにかく今はあちらから逃げる事を優先させて下さい!」
「……分かった」
さすがのミキューも一緒に暮らしてきた仲間とはぐれ、同行しているのが狼の相棒だけでは心細いのは、テルモーと変わらないようだ。
どうにかミキューが頷いてくれたところで、オレ達三人と一匹は迫ってくる複数の松明から逃げ出した。
このままオレが立ち去りでもしたら、確実にどっちか死ぬまで戦うだろう。
そうなるとある程度は知っているテルモーよりも、殆ど知らないミキューの方に尋ねるべきだな。
「あの。ミキューさん。あなた方はこの辺りを縄張りにして狩りをしてきたのですか?」
「当然よ」
「何を言う! ここは我らの縄張りだ!」
なるほど。長年の宗教的な対立だけでなく縄張りを巡る争いが、両者のいがみ合いの元凶なんだなあ。
「それでミキューさんの同族はどこにいるんですか?」
ここで新手が現れたら、いくら何でも勝ち目のない戦いはしないだろうから、一人だけのテルモーも逃げるしかないだろう。
ただオレは魔法で夜目や他の知覚力も強化しているが、その感覚に何も引っかからないのだからミキューと相棒の狼以外には誰もいないとしか考えられないのだ。
そしてミキューはここでかなりあからさまに落胆の様子を見せる。
「……いないわ。私の部族は人間に襲われてちりぢりになってしまったから」
それはお気の毒としか言いようが無いけど、そんな状態でも身近な敵対関係を優先させるというのも困ったところだ。
もちろんここでオレが『力を合わせなさい』などと言ったところで、簡単に言うとおりにしてくれるなら苦労はない。
よくあるヒロイックファンタジーなら分裂していた『二本足の狼』達が『侵略者』を前に結束して撃退し、もっと都合がよければ新たな強大な敵の前に、開拓民と『二本足の狼』が力を合わせて、それ以降は仲良くなる事が期待出来るわけだが、この世界でそんな夢のような展開が起きるはずがないのだ。
「そうか……お前の方も同じか……」
さすがのテルモーもミキューが同じ『文明に追われてひとりぼっち』の境遇である事に少しは共感を抱いてはくれているようだ。
だがそれにミキューは自分の狼に手を伸ばし、目をむいて言い返す。
「はん! 一緒にしないでよ! こっちにはこの銀月がいるのだからね!」
「何だと! この俺には大いなる狼と先祖の霊がついているんだ!」
「ああ。はいはい! そこまでそこまで!」
まったく。オレが暴力的行動を抑止する『調和』をかけていなかったら、やっぱり殺し合いにしかならないな。
とても力を合わせるなんて出来っこないか。
しかしここでオレの聴覚には、更に別の不吉な声が響いてきた。
「おい! 聞こえたか!」
「あっちの方で吠えていたぞ」
「逃がすなよ。今度こそ間違いなく仕留めるんだ」
うがあ。農民や猟師達がさっきの戦いの雄叫びを聞きつけたか。
テルモー達が家畜を襲っているなら、農民の一部は夜中でも警戒しているのは間違いない。
先ほどのテルモーと銀月の戦いは、規模においては一人と一匹という、世界でもっとも小規模なものだったが、その雄叫びは周囲数キロの寝ぼすけ達をたたき起こすに十分だったはずだ。
見ると複数の松明の明かりがこっちに向かってきている。
ええい。これはヤバすぎる。
ただでさえ『二本足の狼』同士の不毛な争いに、地元の住民まで加わったら、幾ら『調和』で暴力的行動を抑止しても、収拾がつかなくなるのは確実だ。
オレが使っている『調和』で暴力行動を抑止できるのは、魔法をかけた時に効果範囲にいた相手だけで、その後で接近してきた対象には効果はない。
そしてその相手が暴力的な行為に出たら、即座に魔法の効果は切れてしまうのだ。
従って次から次に相手がやってくる場合『調和』ではどうしようもない。
こうなったら出来る事は一つだけだ。
「テルモーにミキュー。二人ともここは一緒に逃げましょう」
「なぜこんな奴と!」
「真っ平ゴメンよ!」
オレの呼びかけに二人は揃って反発する。
分かってはいたけど、人間を前にしても『二本足の狼同士で結束して事に当たろう』という気は無いらしい。
実際、元の世界でも外敵の脅威が迫っているのに、旧来の因縁の方を優先させる例は珍しくなかったそうだ。
また完全な異教徒よりも同じ宗派の異宗派の方への憎しみが強いというのも、よくある話だったらしい。
ひょっとしたらオレが『調和』をかけていなかったら、この二人はここにあの人間達がやってくるまで殺し合いに熱中していたかもしれないぞ。
「このままここにいたら、また攻撃されてしまいますよ! こんなところでムダに命を落とすのが、あなた方の信じる『大いなる狼』の意志に沿うのですか!」
「……」
オレが怒鳴りつけると二人は押し黙る。
さすがにここで戦うと言い出さなかったのは胸をなで下ろすところだ。
まあ野生動物を崇拝しているなら、プライドのために勝ち目のない戦いをやるなんて事は考えないだろうからな。
「それでは行きましょう。お互いの事は後で考えて、今は力を合わせて生き延びる事を優先させるのです」
「……分かった」
テルモーはどうやらオレの言い分を理解してくれたらしい。
怪我を治し、餌付けして、一緒に寝た事である程度は信頼してもらえているようだな。
「……」
一方のミキューは少々不満げだな。
今のところ狩人達から逃げる事に異論は無いようだが、こちらに同行するほど信頼は得ていないのだから仕方ない。
だけどオレとしては出来ればテルモーとミキューをどうにか和解させたい。
いつものようにこれが自己満足なのは分かっているが、それでも何もせずに立ち去る事は出来なかったのだ。
「とにかく今はあちらから逃げる事を優先させて下さい!」
「……分かった」
さすがのミキューも一緒に暮らしてきた仲間とはぐれ、同行しているのが狼の相棒だけでは心細いのは、テルモーと変わらないようだ。
どうにかミキューが頷いてくれたところで、オレ達三人と一匹は迫ってくる複数の松明から逃げ出した。
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