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第24章 全てはアルタシャのために?
第1203話 最後に「全てを喰らうもの」が
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いきなり湧き出した『これ』はいったい何だ?
この神界では基本的に外見は『その存在が崇拝されている形』を取る――当然の帰結としてオレはこの『絶世の美少女アルタシャ』の姿を変える事は出来ない。
もちろん廃神は崇拝されていないから、かつての姿を歪めたような無様な外見になっているのだが、亀裂から顕れた『何か』は不定形でありながら、部分部分は人の体だったり建物だったり、どこか見慣れたものの一部のようにも見える。
しかも常に変化を続けいろいろなものが一瞬、浮かび上がってはまたのみ込まれるように消えていく、そんな姿なのだ。
そしてほんの僅かだが、その中にはついさっきのみ込まれたばかりの廃神の姿も垣間見えた気がする。
これは元の世界でもよくある「取り込んだものを自分の一部にする怪物」の類いか。
今までオレを取り込もうとした相手は、それなりにいたけど他の神でも融合出来てしまうのは初めてだな。
何て落ち着いている場合では無い!
「これはいったい何なんですか?」
ひとまずジストルに問いかける。この神造者の神界を作ったの当人なのだから、当然一番詳しいはずだよな。
『吾に聞いているのか?』
「他にいるんですか?! あなたがこの領域の創造主でしょう?」
『分からん!』
即答かよ! 過去にもそんな期待が裏切られた事はしょっちゅうだが、言わば創造主にそんな事を言われてしまうとはな。
『断っておくが、最初にここを築いたのが吾というだけで、廃神とされた後の事など知りようもないからな』
オレの落胆を読んだのか、ジストルは口惜しそうに説明する。
要するに『自分の居ない間に勝手に増築されてしまったものなど分からない』という感じだな。
「だけどあなたの同胞をいま取り込んでいるのですよ!」
『そんな事は言われずとも見れば分かる』
「ならば対抗策は……ないんでしょうね」
そんなものがあったら真っ先に使っているはずだ。『決め技』を最後まで取っておくのは「筋書きのあるドラマ」だけである。
『少なくとも侵入者を排除する仕組みぐらいはあるはずだが……』
その話を信じるとするならば、今も離れたところで「かつて神造者だった廃神」を次々にのみ込んでいるしろものは少なくとも「侵入者」ではない、つまり神造者と何らかの関係がある存在なのではないだろうか?
そう考えて周囲を見回していると、相手は廃神だけでなく、この領域にある全てをのみ込んでいるようだ。
いや。もしかしたら「領域そのもの」を喰っているのかもしれないな。
いったいコイツは何なんだ? 少なくとも神造者と関わる一定の神性を有しているが、その神造者の定めたルールも何も無視して、暴れ回っているとはどういう存在なんだろうか?
そして今度はイロールの声が響く。
『ここも危険ですよ。あなたもいったん逃げるべきではないでしょうか……と言いたいですが、この場から逃げるあなたでない事はもうわたくしにも分かっていますよ』
「それでは何か打つ手はありますか?」
『……』
あんたも黙るなよ! とツッコミを入れようとしたところでオレの脳裏には先ほどまでの安堵が一転して、数限りない悲鳴が鳴り響いてくる。
どうやらいったん収まった災厄がまたぶり返したらしい。
それも前よりもずっと悪くなっているようだ。
ドラマでは『惨事が一度、収まったように見せかけ、安心させてから一気に悪化させる』のはクライマックスに向かう場面における定番中の定番のありふれた手法だが、こんなところでやらんでもいい。
そしてこのとき、ほんのかすかだが多くの声に混じって、何か異質な存在の呼びかけが飛び込んで来たような気がする。
〈……〉
うん? もしかしたらこれは『謎の存在』の声かもしれないぞ。
それならジストルにも聞こえているか?
「あれから何か聞こえませんか?」
『吾には何も伝わってこないが……なるほどな。そなたには分かるのか?』
この緊迫した場面でジストルは妙に頷いている。
『そなたはいかなるものであろうと、それが自分と敵対し命を狙った存在ですら拒絶せずに受け入れると聞いていたが、その神話が今この場で発揮されているのであろうな』
どうやらジストルはここで「学級の徒」に戻って、オレの神界における立ち位置を考えているらしい。
いまのみ込まれて取り込まれているのは、ジストルの弟子や後進達だというのに、何とも薄情なものである。
オレも少なくとも今は知り合いが襲われているわけでもないので、まだ落ち着いていると言う点は否定出来ないが。
とにかく今は『声』に耳を傾けるのが先決だ。
〈……奪われた……我らの正統なる力……先に存在したからと言うだけで……我らは奪われた〉
何か猛烈な「飢え」というか「怒り」というかいろいろな感情が襲ってくるようだ。
過去の経験からすれば「生け贄」「魔法の実験台」「権力闘争」だとかで積み重ねられた負の感情が何かをきっかけに爆発するのは見てきたが、それに近いものがある。
だけど今までのものはいずれも最高で一つの町を破壊するぐらいだった――感覚が麻痺しているのは自分でも分かっている。
世界を揺るがす程の強い感情というか、それがこの神造者の領域を食い荒らすとはいったい何が原因なのか?
あ? もしかしたら? これまで見てきた過去の引き出しの中に、もしかすると関係ありそうな存在が一つ浮かび上がってくるのだった。
この神界では基本的に外見は『その存在が崇拝されている形』を取る――当然の帰結としてオレはこの『絶世の美少女アルタシャ』の姿を変える事は出来ない。
もちろん廃神は崇拝されていないから、かつての姿を歪めたような無様な外見になっているのだが、亀裂から顕れた『何か』は不定形でありながら、部分部分は人の体だったり建物だったり、どこか見慣れたものの一部のようにも見える。
しかも常に変化を続けいろいろなものが一瞬、浮かび上がってはまたのみ込まれるように消えていく、そんな姿なのだ。
そしてほんの僅かだが、その中にはついさっきのみ込まれたばかりの廃神の姿も垣間見えた気がする。
これは元の世界でもよくある「取り込んだものを自分の一部にする怪物」の類いか。
今までオレを取り込もうとした相手は、それなりにいたけど他の神でも融合出来てしまうのは初めてだな。
何て落ち着いている場合では無い!
「これはいったい何なんですか?」
ひとまずジストルに問いかける。この神造者の神界を作ったの当人なのだから、当然一番詳しいはずだよな。
『吾に聞いているのか?』
「他にいるんですか?! あなたがこの領域の創造主でしょう?」
『分からん!』
即答かよ! 過去にもそんな期待が裏切られた事はしょっちゅうだが、言わば創造主にそんな事を言われてしまうとはな。
『断っておくが、最初にここを築いたのが吾というだけで、廃神とされた後の事など知りようもないからな』
オレの落胆を読んだのか、ジストルは口惜しそうに説明する。
要するに『自分の居ない間に勝手に増築されてしまったものなど分からない』という感じだな。
「だけどあなたの同胞をいま取り込んでいるのですよ!」
『そんな事は言われずとも見れば分かる』
「ならば対抗策は……ないんでしょうね」
そんなものがあったら真っ先に使っているはずだ。『決め技』を最後まで取っておくのは「筋書きのあるドラマ」だけである。
『少なくとも侵入者を排除する仕組みぐらいはあるはずだが……』
その話を信じるとするならば、今も離れたところで「かつて神造者だった廃神」を次々にのみ込んでいるしろものは少なくとも「侵入者」ではない、つまり神造者と何らかの関係がある存在なのではないだろうか?
そう考えて周囲を見回していると、相手は廃神だけでなく、この領域にある全てをのみ込んでいるようだ。
いや。もしかしたら「領域そのもの」を喰っているのかもしれないな。
いったいコイツは何なんだ? 少なくとも神造者と関わる一定の神性を有しているが、その神造者の定めたルールも何も無視して、暴れ回っているとはどういう存在なんだろうか?
そして今度はイロールの声が響く。
『ここも危険ですよ。あなたもいったん逃げるべきではないでしょうか……と言いたいですが、この場から逃げるあなたでない事はもうわたくしにも分かっていますよ』
「それでは何か打つ手はありますか?」
『……』
あんたも黙るなよ! とツッコミを入れようとしたところでオレの脳裏には先ほどまでの安堵が一転して、数限りない悲鳴が鳴り響いてくる。
どうやらいったん収まった災厄がまたぶり返したらしい。
それも前よりもずっと悪くなっているようだ。
ドラマでは『惨事が一度、収まったように見せかけ、安心させてから一気に悪化させる』のはクライマックスに向かう場面における定番中の定番のありふれた手法だが、こんなところでやらんでもいい。
そしてこのとき、ほんのかすかだが多くの声に混じって、何か異質な存在の呼びかけが飛び込んで来たような気がする。
〈……〉
うん? もしかしたらこれは『謎の存在』の声かもしれないぞ。
それならジストルにも聞こえているか?
「あれから何か聞こえませんか?」
『吾には何も伝わってこないが……なるほどな。そなたには分かるのか?』
この緊迫した場面でジストルは妙に頷いている。
『そなたはいかなるものであろうと、それが自分と敵対し命を狙った存在ですら拒絶せずに受け入れると聞いていたが、その神話が今この場で発揮されているのであろうな』
どうやらジストルはここで「学級の徒」に戻って、オレの神界における立ち位置を考えているらしい。
いまのみ込まれて取り込まれているのは、ジストルの弟子や後進達だというのに、何とも薄情なものである。
オレも少なくとも今は知り合いが襲われているわけでもないので、まだ落ち着いていると言う点は否定出来ないが。
とにかく今は『声』に耳を傾けるのが先決だ。
〈……奪われた……我らの正統なる力……先に存在したからと言うだけで……我らは奪われた〉
何か猛烈な「飢え」というか「怒り」というかいろいろな感情が襲ってくるようだ。
過去の経験からすれば「生け贄」「魔法の実験台」「権力闘争」だとかで積み重ねられた負の感情が何かをきっかけに爆発するのは見てきたが、それに近いものがある。
だけど今までのものはいずれも最高で一つの町を破壊するぐらいだった――感覚が麻痺しているのは自分でも分かっている。
世界を揺るがす程の強い感情というか、それがこの神造者の領域を食い荒らすとはいったい何が原因なのか?
あ? もしかしたら? これまで見てきた過去の引き出しの中に、もしかすると関係ありそうな存在が一つ浮かび上がってくるのだった。
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