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※ 義妹に寝取られた婚約者
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薄々は気付いていた。
だが現実を目前で見せられるのは辛い。
「あら? セリーヌの部屋、ドアが少し開いているわ」
春の気配を感じる季節ではあるが、三月もはじめの頃は、まだまだ寒い。
「ドアをキッチリ閉めるタイプのあの子にしては珍しいこと」
セリーヌは屋敷に来た頃から、どこか不気味なこの家を嫌っている。
暗くて怖い、と、言ってはドアをしっかり閉めて、灯すのだと義母が嘆いていた。
そのセリーヌがドアをしっかり閉めていないとは。
ましてや、今は夏の暑い盛りではない。
真夏でもドアを閉め切ってしまうセリーヌにしては珍しいことであった。
彼女は幾つになっても屋敷に馴染めないでいる。
義母もそうだ。
不気味な屋敷と不気味な娘。
それがもれなく付いてくるのがバラム伯爵家だというのに。
それを、“変えろ” と、迫るのだ。
親子揃って改装を求めていたが無視した。
本宅であるこの屋敷も、バラム家独特の縛りの上で成り立っている。
だから、よそ者であるセリーヌが気味悪がるのも当然の事なのだ。
だからといって、変えられるものでもない。
我慢するか、出て行くか。
その二択しかない。
だが、それで納得できない愚か者は第三の選択肢を探す。
フェリシアはセリーヌが、自分の婚約者であるラファス・シトリー伯爵令息にちょっかいを出していることは知っていた。
それでも自分の婚約者を信頼していたのだ。
なぜなら彼は、亡き実母が残してくれたモノのひとつだから。
母マリアはフェリシアのパートナーとしてラファスを選んだ。
長く続くバラム家の重責を共に担う相手として。
ラファスが知っている事は無きに等しいものの、幼少から一緒にいる彼はフェリシアにとって既に心強いパートナーになっていた。
そのラファスが……。
義妹、セリーヌと寝ているなんてっ!
そっと覗いたドアの隙間。
その向こうには、椅子に座ったラファスと、その膝の上にいるセリーヌがいた。
セリーヌの小さいけれど肉厚な唇が、ラファスの整った唇の上に重なっている。
穏やかに重なっているだけではない。
せわしなく妖しく大胆に、互いを求めながら重なっている。
セリーヌのしなやかな腕はラファスの逞しい背中に回され、彼の大きな手は魅惑的なS字を描く彼女の背中を余すところなく味わおうと這いまわっている。
二人とも服は着ていたが、それは乱れ。
途中までボタンを外されたラファスのシャツには不自然なシワが沢山寄っていた。
セリーヌのドレスは二人の下半身を覆うように広がっていて、その下で繰り広げられているドラマは判然としない。
朝はキチンとセットされていたセリーヌの金髪は乱れ広がり、まばらに汗ばんだラファスの顔に張り付いている。
うっとりとした声で、フェリシアはの婚約者が囁く。
「あぁ……ボクの気持ちを分かってくれるのは……んん……キミ……だけだよ、セリーヌ……」
フェリシアのモノであった男の唇は、セリーヌの細い首筋を辿り、その胸元に降りて行く。
「ええ……ええ……ラファス……ァァ……私の、可愛い人……私……私、だけはアナタを……あンン……分かって……あげられるわ……」
再び重なり合う唇。
赤い舌が互いを求めるように蠢く。
たまらずフェリシアは叫ぶ。
「ラファスっ!」
飛び込んだ部屋のなかには、悲劇しかなかった。
だが現実を目前で見せられるのは辛い。
「あら? セリーヌの部屋、ドアが少し開いているわ」
春の気配を感じる季節ではあるが、三月もはじめの頃は、まだまだ寒い。
「ドアをキッチリ閉めるタイプのあの子にしては珍しいこと」
セリーヌは屋敷に来た頃から、どこか不気味なこの家を嫌っている。
暗くて怖い、と、言ってはドアをしっかり閉めて、灯すのだと義母が嘆いていた。
そのセリーヌがドアをしっかり閉めていないとは。
ましてや、今は夏の暑い盛りではない。
真夏でもドアを閉め切ってしまうセリーヌにしては珍しいことであった。
彼女は幾つになっても屋敷に馴染めないでいる。
義母もそうだ。
不気味な屋敷と不気味な娘。
それがもれなく付いてくるのがバラム伯爵家だというのに。
それを、“変えろ” と、迫るのだ。
親子揃って改装を求めていたが無視した。
本宅であるこの屋敷も、バラム家独特の縛りの上で成り立っている。
だから、よそ者であるセリーヌが気味悪がるのも当然の事なのだ。
だからといって、変えられるものでもない。
我慢するか、出て行くか。
その二択しかない。
だが、それで納得できない愚か者は第三の選択肢を探す。
フェリシアはセリーヌが、自分の婚約者であるラファス・シトリー伯爵令息にちょっかいを出していることは知っていた。
それでも自分の婚約者を信頼していたのだ。
なぜなら彼は、亡き実母が残してくれたモノのひとつだから。
母マリアはフェリシアのパートナーとしてラファスを選んだ。
長く続くバラム家の重責を共に担う相手として。
ラファスが知っている事は無きに等しいものの、幼少から一緒にいる彼はフェリシアにとって既に心強いパートナーになっていた。
そのラファスが……。
義妹、セリーヌと寝ているなんてっ!
そっと覗いたドアの隙間。
その向こうには、椅子に座ったラファスと、その膝の上にいるセリーヌがいた。
セリーヌの小さいけれど肉厚な唇が、ラファスの整った唇の上に重なっている。
穏やかに重なっているだけではない。
せわしなく妖しく大胆に、互いを求めながら重なっている。
セリーヌのしなやかな腕はラファスの逞しい背中に回され、彼の大きな手は魅惑的なS字を描く彼女の背中を余すところなく味わおうと這いまわっている。
二人とも服は着ていたが、それは乱れ。
途中までボタンを外されたラファスのシャツには不自然なシワが沢山寄っていた。
セリーヌのドレスは二人の下半身を覆うように広がっていて、その下で繰り広げられているドラマは判然としない。
朝はキチンとセットされていたセリーヌの金髪は乱れ広がり、まばらに汗ばんだラファスの顔に張り付いている。
うっとりとした声で、フェリシアはの婚約者が囁く。
「あぁ……ボクの気持ちを分かってくれるのは……んん……キミ……だけだよ、セリーヌ……」
フェリシアのモノであった男の唇は、セリーヌの細い首筋を辿り、その胸元に降りて行く。
「ええ……ええ……ラファス……ァァ……私の、可愛い人……私……私、だけはアナタを……あンン……分かって……あげられるわ……」
再び重なり合う唇。
赤い舌が互いを求めるように蠢く。
たまらずフェリシアは叫ぶ。
「ラファスっ!」
飛び込んだ部屋のなかには、悲劇しかなかった。
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