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【短編 一万文字はない】聖女だって真実の愛が欲しい
お役御免の聖女ですが何か?
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「わたくしの聖女としての資格をはく奪する。アスラル王太子殿下。あなたは、そうおっしゃるのですね?」
「そうだ。聖女セーラ。いや、元聖女セーラか。キミは我が国に必要のない人材となった。よって婚約も破棄させて貰う」
「まぁ、アスラル王太子殿下。婚約を破棄されるとおっしゃるのね? 婚約解消ではなく、破棄なのですね?」
「ああ、そうだ。元聖女セーラ。いや、もうただのセーラでいいか。キミは聖女の力を失ったのだ。婚約破棄で問題あるまい?」
「わたくしが聖女でなくなることは婚約破棄の条件を満たすことだ、そうおっしゃりたいのですね? アスラル王太子殿下」
「そうだよ、セーラ」
「聖女の力を失うことが、わたくしの落ち度だなんて……なんとも勝手なことですわね」
「……どこがだ?」
「わたくしが聖女の力を得たことを知った王家は、わたくしを親元から引き離して無理矢理に神殿へ迎え入れ、勝手にアスラル王太子殿下との婚約を決めましたのよ。それなのに、また勝手に婚約破棄なさるとおっしゃるのですね?」
「王家だからな? 勝手に、と言われても困る。我が国は、そのような決まりになっているのだ」
「決められているから強引に婚約を決め、力を失ったら今度は婚約を破棄すると。まことに勝手ですこと」
「キミが聖女としての力を失うのが悪いのではないか? なぜ聖女の力を失ったのだ? 神から与えられた力を奪われたということは、キミに落ち度があった証拠ではないのか?」
「……落ち度? 落ち度、ですって? このわたくしに?」
「怒ったのかい?」
「ええ、怒りましたわ」
「キミの、そんな高慢な所が嫌いだったんだ」
「まぁ、なんて勝手な」
「キミはホントに高慢だ」
「わたくしの、どこが高慢だというのです?」
「キミは、そのラズベリー色の長い髪をキラキラさせて威風堂々と歩くじゃないか。どれだけ自慢なんだ、その髪」
「なんですって? アナタだって、その銀色の髪をキラキラさせて歩くじゃないの」
「キミの青い瞳は曇りがなさ過ぎるんだっ」
「まぁ、なんですって」
「自信満々に未来を夢見る傲慢さが現れている、と言っているんだ」
「だから何だというのです? わたくしが、まつ毛をこれだけバサバサさせるのに払っている努力を知りもしないで」
「ふん。キミの努力なんて知った事か。唇をぷっくりさせることに命かけてる程度のことなんだろう?」
「まぁまぁ、なんてことを言うのっ。そんな考えだから、身長が170センチきっかりで止まるのよっ」
「ちょっとまて⁈ オレの身長が170センチきっかり、だなんて誰に聞いた?」
「誰だったかしら? 忘れちゃったわ。そんなの聞かなくても分かるわよっ。見れば分かることじゃない」
「持って生まれたものをバカにしちゃいけないんだぞっ。キミだって、盛ったり締め付けたりしているじゃないか」
「なんですって?」
「コルセットで絞ったウエスト、盛った胸。みんな知ってるんだぞっ」
「当たり前でしょ? コルセットで絞ったり、盛ったりするのは貴族女性のたしなみよ」
「キミには、恥じらいというものがない」
「なんですって⁈」
「とにかく、オレはキミが嫌いだ。聖女でもなくなったことだし、婚約は破棄させて貰う」
「ケンカしていらっしゃるの? こわいのでやめてほしいです……」
「あら、リリー」
「リリー嬢。いらしたのですね」
「うん。ふたりがケンカしているから止めてきなさい、ってルルおねえさまが……」
「相変わらずリリー嬢は可愛いねぇ」
「うふっ。ありがとうございます、殿下」
「確かにリリーは可愛いわ。でも、また二桁年齢にも達していない子供よ? 変な目で見るのは止めて欲しいものだわ、殿下」
「なっ……なにを言っているんだ」
「リリーは淡いピンクの髪に金色の瞳。色白で細身で小柄。とても可愛い。……身長170センチきっかりの殿下の隣に並んでも、圧迫感のないサイズですわ」
「ちょっ……オレはロリコンってわけでは……」
「アヤシイですわ。わたくしに聖女の力が無くなったから婚約破棄を決めたのではなく、他に気になる方がいらっしゃるのではありませんか?」
「いっ……いや、そんな事は無いっ」
「聖女でなくなったから即、婚約破棄するような男の言葉を信じる者などいませんわ」
「なっなんだよっ、その言い方。別にオレが決めたわけじゃないからなっ。婚約破棄は国の方針だっ」
「あらあら。今度は国のせいになさるのね」
「だっ、だいたい……キミだって、この婚約には乗り気じゃなかったじゃないか」
「そうですわね」
「なのに、婚約破棄したら文句言うってどうなの?」
「そりゃ、婚約や婚姻は個人の問題ではありませんもの。家同士の問題ですからね。わたくしがどう思っていようと、家長のお考えのほうが優先されますわ。その程度のこと、殿下ならご存じでしょ?」
「うっ……」
「わたくしは聖女ですけれど、公爵家の娘でもありますのよ? 後ろ盾がしっかりしている家から嫁を貰うことは、王家にとってのメリットになりますよね?」
「そっ……そうだが?」
「それを失うことを覚悟して婚約破棄されるのでしょう? 次に婚約される方が、どんなに素晴らしい後ろ盾をお持ちの方か、楽しみですわ」
「なっ、なんて傲慢な物言い。そんな所が嫌いなんだ」
「嫌いで結構。聖女としても、婚約者としても、お役御免となるのなら、わたくしは早々に引っ越しをしなければいけませんわ。いつまでも神殿で暮らすわけにもいきません」
「そうだな。実家に帰ってくれ」
「わたくし、五歳からここに住んでいますのよ? 婚約を破棄されたからといって、実家に部屋があるかどうか……」
「それでしたら、セーラおねえさま。わたしの家にきて一緒に暮らしませんか?」
「まぁ、リリー。うれしい申し出だわ」
「うふふ。わたしもセーラおねえさまが来てくれたらうれしいです」
「あ、いや……リリー嬢? リリー嬢は聖女としての力に目覚めたのでは?」
「そのようなお話もききましたけれど。自分ではよくわかりません」
「聖女になったのなら、リリー嬢は神殿に住まないと」
「ええっ。イヤですわ。リリーは神殿に住みたくありません」
「あーらら。断られちゃいましたねぇ~。殿下」
「そう言わないで、リリー嬢……」
「リリーは、お家に帰ります。そのようなお話は、父に聞いてください。リリーはお家からお引越しするつもり、ありませんからねー」
「あぁぁぁぁぁぁ、リリー嬢っ!」
「やっぱりロリコンじゃないの。王太子殿下。そんな変態に国王が務まるのかしら?」
「なっ、なんてことを言うんだ」
「わたくし、聖女の力を失っても、身に付けた常識は失っておりませんのよ」
「はっ。なんだよっ。オレが常識知らず、とでも?」
「殿下は常識のほうが自分に合わせてくれると思っているのでしょう? わたくしは常識を学ぶ方を選びますわ。金髪碧眼で王太子殿下でも、身長170センチきっかりで常識知らずでは魅力なし、ですわ」
「なっ、なんだってー⁈」
「さ、リリー。行きましょう。長時間一緒にいたら、バカがうつるかもしれませんわ」
「はい、セーラおねえさま」
「リリーのお家へお引越しするなら、荷物はどのくらい必要かしらねー?」
「最低限でおいでください、と、姉がもうしておりました。必要なものは用意してあります、と」
「あら、そうなの? 悪いわねぇ。ルルってば先読みの力がありすぎるから。事態を把握して先回りされちゃったみたいね」
「ふふふ。わたしはうれしいです。セーラおねえさまと一緒に暮らせるなら」
「私もよー、リリー」
「お揃いですね」
「オレを置いていくなー」
こうしてわたくし、セーラ・マラクレス公爵令嬢は、リリー姉妹が暮らすセリウス公爵家へ居を移すこととなったのです。
「そうだ。聖女セーラ。いや、元聖女セーラか。キミは我が国に必要のない人材となった。よって婚約も破棄させて貰う」
「まぁ、アスラル王太子殿下。婚約を破棄されるとおっしゃるのね? 婚約解消ではなく、破棄なのですね?」
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「そうだよ、セーラ」
「聖女の力を失うことが、わたくしの落ち度だなんて……なんとも勝手なことですわね」
「……どこがだ?」
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「王家だからな? 勝手に、と言われても困る。我が国は、そのような決まりになっているのだ」
「決められているから強引に婚約を決め、力を失ったら今度は婚約を破棄すると。まことに勝手ですこと」
「キミが聖女としての力を失うのが悪いのではないか? なぜ聖女の力を失ったのだ? 神から与えられた力を奪われたということは、キミに落ち度があった証拠ではないのか?」
「……落ち度? 落ち度、ですって? このわたくしに?」
「怒ったのかい?」
「ええ、怒りましたわ」
「キミの、そんな高慢な所が嫌いだったんだ」
「まぁ、なんて勝手な」
「キミはホントに高慢だ」
「わたくしの、どこが高慢だというのです?」
「キミは、そのラズベリー色の長い髪をキラキラさせて威風堂々と歩くじゃないか。どれだけ自慢なんだ、その髪」
「なんですって? アナタだって、その銀色の髪をキラキラさせて歩くじゃないの」
「キミの青い瞳は曇りがなさ過ぎるんだっ」
「まぁ、なんですって」
「自信満々に未来を夢見る傲慢さが現れている、と言っているんだ」
「だから何だというのです? わたくしが、まつ毛をこれだけバサバサさせるのに払っている努力を知りもしないで」
「ふん。キミの努力なんて知った事か。唇をぷっくりさせることに命かけてる程度のことなんだろう?」
「まぁまぁ、なんてことを言うのっ。そんな考えだから、身長が170センチきっかりで止まるのよっ」
「ちょっとまて⁈ オレの身長が170センチきっかり、だなんて誰に聞いた?」
「誰だったかしら? 忘れちゃったわ。そんなの聞かなくても分かるわよっ。見れば分かることじゃない」
「持って生まれたものをバカにしちゃいけないんだぞっ。キミだって、盛ったり締め付けたりしているじゃないか」
「なんですって?」
「コルセットで絞ったウエスト、盛った胸。みんな知ってるんだぞっ」
「当たり前でしょ? コルセットで絞ったり、盛ったりするのは貴族女性のたしなみよ」
「キミには、恥じらいというものがない」
「なんですって⁈」
「とにかく、オレはキミが嫌いだ。聖女でもなくなったことだし、婚約は破棄させて貰う」
「ケンカしていらっしゃるの? こわいのでやめてほしいです……」
「あら、リリー」
「リリー嬢。いらしたのですね」
「うん。ふたりがケンカしているから止めてきなさい、ってルルおねえさまが……」
「相変わらずリリー嬢は可愛いねぇ」
「うふっ。ありがとうございます、殿下」
「確かにリリーは可愛いわ。でも、また二桁年齢にも達していない子供よ? 変な目で見るのは止めて欲しいものだわ、殿下」
「なっ……なにを言っているんだ」
「リリーは淡いピンクの髪に金色の瞳。色白で細身で小柄。とても可愛い。……身長170センチきっかりの殿下の隣に並んでも、圧迫感のないサイズですわ」
「ちょっ……オレはロリコンってわけでは……」
「アヤシイですわ。わたくしに聖女の力が無くなったから婚約破棄を決めたのではなく、他に気になる方がいらっしゃるのではありませんか?」
「いっ……いや、そんな事は無いっ」
「聖女でなくなったから即、婚約破棄するような男の言葉を信じる者などいませんわ」
「なっなんだよっ、その言い方。別にオレが決めたわけじゃないからなっ。婚約破棄は国の方針だっ」
「あらあら。今度は国のせいになさるのね」
「だっ、だいたい……キミだって、この婚約には乗り気じゃなかったじゃないか」
「そうですわね」
「なのに、婚約破棄したら文句言うってどうなの?」
「そりゃ、婚約や婚姻は個人の問題ではありませんもの。家同士の問題ですからね。わたくしがどう思っていようと、家長のお考えのほうが優先されますわ。その程度のこと、殿下ならご存じでしょ?」
「うっ……」
「わたくしは聖女ですけれど、公爵家の娘でもありますのよ? 後ろ盾がしっかりしている家から嫁を貰うことは、王家にとってのメリットになりますよね?」
「そっ……そうだが?」
「それを失うことを覚悟して婚約破棄されるのでしょう? 次に婚約される方が、どんなに素晴らしい後ろ盾をお持ちの方か、楽しみですわ」
「なっ、なんて傲慢な物言い。そんな所が嫌いなんだ」
「嫌いで結構。聖女としても、婚約者としても、お役御免となるのなら、わたくしは早々に引っ越しをしなければいけませんわ。いつまでも神殿で暮らすわけにもいきません」
「そうだな。実家に帰ってくれ」
「わたくし、五歳からここに住んでいますのよ? 婚約を破棄されたからといって、実家に部屋があるかどうか……」
「それでしたら、セーラおねえさま。わたしの家にきて一緒に暮らしませんか?」
「まぁ、リリー。うれしい申し出だわ」
「うふふ。わたしもセーラおねえさまが来てくれたらうれしいです」
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「そのようなお話もききましたけれど。自分ではよくわかりません」
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「そう言わないで、リリー嬢……」
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「あぁぁぁぁぁぁ、リリー嬢っ!」
「やっぱりロリコンじゃないの。王太子殿下。そんな変態に国王が務まるのかしら?」
「なっ、なんてことを言うんだ」
「わたくし、聖女の力を失っても、身に付けた常識は失っておりませんのよ」
「はっ。なんだよっ。オレが常識知らず、とでも?」
「殿下は常識のほうが自分に合わせてくれると思っているのでしょう? わたくしは常識を学ぶ方を選びますわ。金髪碧眼で王太子殿下でも、身長170センチきっかりで常識知らずでは魅力なし、ですわ」
「なっ、なんだってー⁈」
「さ、リリー。行きましょう。長時間一緒にいたら、バカがうつるかもしれませんわ」
「はい、セーラおねえさま」
「リリーのお家へお引越しするなら、荷物はどのくらい必要かしらねー?」
「最低限でおいでください、と、姉がもうしておりました。必要なものは用意してあります、と」
「あら、そうなの? 悪いわねぇ。ルルってば先読みの力がありすぎるから。事態を把握して先回りされちゃったみたいね」
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