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【中編 二万四千文字くらい】馬鹿な夫に死んだ私がざまぁする話
第十話 ざまぁ 2
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「ねぇ、ねえ。最近、話題のお店に行ってみない?」
「ああ、あそこでしょ? 可愛くて便利な小物を手頃な値段で扱っているお店」
「そう、そこよ。ちょっとした文具からファッション小物や洋服まで。色々と揃っているらしいわ」
「まぁ、そうなの? 私も一緒に行きたいわ」
若い女性の使用人が数人、休みの日に連れ立って話題の店へと足を運んだ。
そこは街の外れにある店だったが、若い女性で賑わっていた。
「いらっしゃいませ」
応対に出た男性に、使用人たちは見覚えがあった。
「えっ? アナタは……」
「おや、お屋敷にお勤めの方たちですね。こんにちは」
「あら? ココはミストラル商会のお店なのかしら?」
「流石はミストラル商会ね」
「そうね。こんなに流行っているお店なのですもの」
「いえいえ、違います。ココはミストラル商会のお店ではありません」
「でも、アナタはミストラル商会の方よね?」
「前はそうでしたが。ミストラル商会は辞めて、こちらに転職しまして」
「あら」
「まぁ」
「なら、こちらはどなたのお店なのかしら?」
「いらっしゃいませ、こんにちは。私はエレノアの妹で、ココの店長を務めております。葬儀の折りはお世話になりました」
皮肉を含んだ口調に、使用人たちは冷や汗をかく。
「ここにある商品は、姉がアイデアを出したモノです。ミストラル商会に出入りしている業者さんたちが実際に作ってくださって……共同でお店のオーナーになってくれたのです。私は雇われになりますが、店長として働いておりますの。全て姉のおかげです」
「あら」
「まぁ」
「そうなのですね……」
「見ての通り繁盛しておりますので、両親に楽をさせることができますわ。妹や弟を学校に通わせることもできますし、卒業した後の働き口もありますから安心です。全て、姉のおかげです」
「あぁ……」
「まぁぁぁ……」
「そうなの……ね」
元ミストラル商会の従業員が言う。
「私も近々、別の店舗を任されて店長になる予定です。そちらは男性向け便利グッズの店となりますので、贈り物など必要になった時にはご利用ください」
「ふふふ。楽しみね、アナタ」
「そうだね、お前」
「あら? アナタたち……」
「ハハッ。分かりますか?」
「私たち、近々夫婦になりますの」
フフフと明るく笑うカップルを、屋敷の使用人たちはポカンと見つめた。
この事は、ほどなくトーマスとミラの知る所となる。
「あの女、裏でそんな事をしていたとはっ!」
「平民とは図々しいものですわね」
「ホントだな、ミラ。オレの知らない所で実家に金を渡していたようなモノだ」
「そうですわ。あの店はとても繁盛していますのよ。ミストラル商会のモノになっていたら、今頃は……」
「くっ……。こっちは商会の仕事が上手く回らなくて苦労しているというのに」
「本当に。あの女のせいですわ」
「エレノアの家族が、オレたちの知らない所で従業員を引き抜いたりするから……」
なぜかミストラル商会を辞めて、エレノアの家族が経営する商会へと転職する者が続出している。
結果、ミストラル商会の経営は上手く回らなくなっていた。
「それに、ちょっとコレをご覧になって」
「なんだい?」
「エレノアの妹が、男爵家の嫡男と婚約したそうですわ」
「えっ? ミストラル商会の従業員だった男と結婚するのでは?」
「それは一番上の妹ですわ。コレは二番目」
「うっ、何だコレは? 三番目の弟が、子爵令嬢と婚約?」
「えっ? あら、隣の記事が……そのようですわね。エレノアのすぐ下の妹は元ミストラル商会の従業員と結婚。夫婦そろって、あの店の経営母体である商会の役員になったそうよ。二番目の妹が男爵家の嫡男と婚約。二番目の弟は、貿易会社に就職。三番目の弟が家取り娘の子爵令嬢と婚約して、子爵家の婿になる予定。それに伴い、貴族学校へ入学するそうよ。三番目と四番目の妹は、平民学校へ通っているらしいけど、貴族からの婚約申し込みが殺到していると……ナニコレ? どういう事なの?」
「オレにもさっぱりだ。エレノアの実家は貧乏な平民だったハズ」
「えっ? ちょっと待って。店の切り盛りは元ミストラル商会の従業員たちが、ってなってるわよ!」
「は?」
「ミストラル商会を辞めた従業員たちが、次から次へとエレノアの実家がやってる店に移っているって事?」
「ん……実際は、エレノアの実家じゃなくて、ミストラル商会と取引のある業者が共同で作った商会のようだが……えっ? なんだって!? エレノア商会!?」
「なんですって!?」
「えっと……不幸にも早世したミストラル商会のエレノア・ミストラル男爵夫人を偲び、ミストラル商会と取引のあった業者がエレノア商会を立ち上げた? はぁ? そんな事、オレは聞いてないぞっ!?」
「今は亡きエレノア夫人を慕うミストラル商会の従業員は、エレノア商会に移り……って、ナニコレ!?」
「くそぉ、あの女っ! 死んでまでオレの邪魔を……」
「トーマス……」
不動のモノと思えたミストラル商会を不吉な影が覆い、それは現実のモノとなっていくのであった。
「ああ、あそこでしょ? 可愛くて便利な小物を手頃な値段で扱っているお店」
「そう、そこよ。ちょっとした文具からファッション小物や洋服まで。色々と揃っているらしいわ」
「まぁ、そうなの? 私も一緒に行きたいわ」
若い女性の使用人が数人、休みの日に連れ立って話題の店へと足を運んだ。
そこは街の外れにある店だったが、若い女性で賑わっていた。
「いらっしゃいませ」
応対に出た男性に、使用人たちは見覚えがあった。
「えっ? アナタは……」
「おや、お屋敷にお勤めの方たちですね。こんにちは」
「あら? ココはミストラル商会のお店なのかしら?」
「流石はミストラル商会ね」
「そうね。こんなに流行っているお店なのですもの」
「いえいえ、違います。ココはミストラル商会のお店ではありません」
「でも、アナタはミストラル商会の方よね?」
「前はそうでしたが。ミストラル商会は辞めて、こちらに転職しまして」
「あら」
「まぁ」
「なら、こちらはどなたのお店なのかしら?」
「いらっしゃいませ、こんにちは。私はエレノアの妹で、ココの店長を務めております。葬儀の折りはお世話になりました」
皮肉を含んだ口調に、使用人たちは冷や汗をかく。
「ここにある商品は、姉がアイデアを出したモノです。ミストラル商会に出入りしている業者さんたちが実際に作ってくださって……共同でお店のオーナーになってくれたのです。私は雇われになりますが、店長として働いておりますの。全て姉のおかげです」
「あら」
「まぁ」
「そうなのですね……」
「見ての通り繁盛しておりますので、両親に楽をさせることができますわ。妹や弟を学校に通わせることもできますし、卒業した後の働き口もありますから安心です。全て、姉のおかげです」
「あぁ……」
「まぁぁぁ……」
「そうなの……ね」
元ミストラル商会の従業員が言う。
「私も近々、別の店舗を任されて店長になる予定です。そちらは男性向け便利グッズの店となりますので、贈り物など必要になった時にはご利用ください」
「ふふふ。楽しみね、アナタ」
「そうだね、お前」
「あら? アナタたち……」
「ハハッ。分かりますか?」
「私たち、近々夫婦になりますの」
フフフと明るく笑うカップルを、屋敷の使用人たちはポカンと見つめた。
この事は、ほどなくトーマスとミラの知る所となる。
「あの女、裏でそんな事をしていたとはっ!」
「平民とは図々しいものですわね」
「ホントだな、ミラ。オレの知らない所で実家に金を渡していたようなモノだ」
「そうですわ。あの店はとても繁盛していますのよ。ミストラル商会のモノになっていたら、今頃は……」
「くっ……。こっちは商会の仕事が上手く回らなくて苦労しているというのに」
「本当に。あの女のせいですわ」
「エレノアの家族が、オレたちの知らない所で従業員を引き抜いたりするから……」
なぜかミストラル商会を辞めて、エレノアの家族が経営する商会へと転職する者が続出している。
結果、ミストラル商会の経営は上手く回らなくなっていた。
「それに、ちょっとコレをご覧になって」
「なんだい?」
「エレノアの妹が、男爵家の嫡男と婚約したそうですわ」
「えっ? ミストラル商会の従業員だった男と結婚するのでは?」
「それは一番上の妹ですわ。コレは二番目」
「うっ、何だコレは? 三番目の弟が、子爵令嬢と婚約?」
「えっ? あら、隣の記事が……そのようですわね。エレノアのすぐ下の妹は元ミストラル商会の従業員と結婚。夫婦そろって、あの店の経営母体である商会の役員になったそうよ。二番目の妹が男爵家の嫡男と婚約。二番目の弟は、貿易会社に就職。三番目の弟が家取り娘の子爵令嬢と婚約して、子爵家の婿になる予定。それに伴い、貴族学校へ入学するそうよ。三番目と四番目の妹は、平民学校へ通っているらしいけど、貴族からの婚約申し込みが殺到していると……ナニコレ? どういう事なの?」
「オレにもさっぱりだ。エレノアの実家は貧乏な平民だったハズ」
「えっ? ちょっと待って。店の切り盛りは元ミストラル商会の従業員たちが、ってなってるわよ!」
「は?」
「ミストラル商会を辞めた従業員たちが、次から次へとエレノアの実家がやってる店に移っているって事?」
「ん……実際は、エレノアの実家じゃなくて、ミストラル商会と取引のある業者が共同で作った商会のようだが……えっ? なんだって!? エレノア商会!?」
「なんですって!?」
「えっと……不幸にも早世したミストラル商会のエレノア・ミストラル男爵夫人を偲び、ミストラル商会と取引のあった業者がエレノア商会を立ち上げた? はぁ? そんな事、オレは聞いてないぞっ!?」
「今は亡きエレノア夫人を慕うミストラル商会の従業員は、エレノア商会に移り……って、ナニコレ!?」
「くそぉ、あの女っ! 死んでまでオレの邪魔を……」
「トーマス……」
不動のモノと思えたミストラル商会を不吉な影が覆い、それは現実のモノとなっていくのであった。
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