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【中編 二万一千文字文字くらい】イケメンと棚ぼた婚~惰性で妥協の婚約をしてましたが相手有責で破棄できた上に幸せな結婚までしちゃった私の話~
イケメンより夜会へのお誘い(即OK)
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「お先に失礼します」
「あぁ、お疲れさま」
お父さまに爆笑された翌日。
私は普通に仕事へと出掛け、普通に仕事を終えました。
実際には、いつもよりちょっと気合を入れて身支度をして、胸をときめかせながら一日を過ごしましたの。
お父さまが『誘われたら、お前が思ったように対応すればいい』と、おっしゃいましたので。
……でも。
誘われませんけど?
などと思いつつドアへと向かっていた私の背後から響く、サットン子爵の声。
「……あっ、アイリス君」
「はい」
あら?
先ほどとは、口調が違います。
私は期待に胸を膨らませて振り返りました。
「あ……、あの……」
机に向かって座っていたサットン子爵が立ち上がり、こちらに向かってきますわ。
「はい?」
私はちょっと首を傾げ、上目遣いで彼を見ました。
近付いてくるサットン子爵は、本日も無駄に素敵。
なにくわぬ顔をしている(つもりの)私ですが、実際には胸がドキドキしていて大変です。
私の心臓は大丈夫でしょうか?
少しばかり頬を紅潮させた背の高い美形が、私の前で立ち止まる。
「その……キミさえ良ければ……あの……今度の夜会、一緒に行ってくれないだろうか?」
「ハイ、喜んで」
ちょっと食い気味に返事してしまいましたわ。
仕事の出来る男であるサットン子爵が、一瞬、固まったように見えたのは気のせいかしら?
「あ……ホントに?」
「はい。誘って頂けて嬉しいですわ」
私は気持ちのままを口にして、少し高い所にある青い目を見つめる。
意外にも、最初に視線を逸らしたのはサットン子爵です。
スッとさりげなく視線を横に落として、呟くような声を響かせる。
「あ……ホントに……あぁ、それは……ありがとう」
感情を露わにしない訓練に長けているハズの貴族男性が、耳まで真っ赤にして目前にいます。
「こちらこそ。誘って頂いてありがとうございます」
ちょっと戸惑いつつも、キチンと返事ができました。
「あぁ……私は、ホントに……このような事に慣れてなくて……」
「まぁ……」
あら、意外ですわ。
ハンサムな独身貴族男性ですもの。
てっきり慣れているものだと思っていましたわ。
「父が早くに亡くなって……弟や妹もいるし……商会の事もあるから……自分の事は後回しになってしまって……あぁ、恥ずかしいな。いい年をして。私はこういう事に全く慣れていなくてね。上手にエスコートできなかったら、ごめんね」
「いえ、大丈夫ですわ」
美形なのに女性慣れしていない、ということですの?
それはむしろご褒美では?
無駄に麗しい見た目をしていらっしゃる上に、妹さんや弟さんを優先するという優しさ。
商会を盛り立てていく有能さと誠実さを併せ持つなんて。
素敵すぎます、サットン子爵。
私はフワフワした気分のまま帰宅しました。
◇◇◇
「その表情から判断すると、上手くいったのだね、アイリス」
「もう、お父さまったら。揶揄わないでくださいまし」
「うふふ。私の娘も大人になってしまったのね」
「もうっ、イヤですわ。お母さままで」
帰宅した私を待っていたのは、両親のニマニマした含みある笑顔です。
「なら、夜会へ行くための準備をしなくてはいけないね」
「夜会は来週ですわよ、お父さま」
「あら、アイリスったら。夜会に出るのなら、ドレスやら何やら用意しなければいけないでしょ?」
「そうですけど、お母さま。手持ちのモノで十分ですわ」
「あっ、そうだ。サットン子爵殿から何か届いていたぞ」
「まぁ、お父さま。それを先に言って下さらないと」
「あらあら、ウフフ。どんな物が届いたのか、ぜひ見たいわ」
「お母さまったら、表情で揶揄うのは止めてくださいな」
「私も見たいな」
「お父さままで」
ふと私が振り返れば。
回りには沢山の使用人たち。
その一人一人が、お母さま達と同じような表情でコチラを見ていましたわ……。
「あぁ、お疲れさま」
お父さまに爆笑された翌日。
私は普通に仕事へと出掛け、普通に仕事を終えました。
実際には、いつもよりちょっと気合を入れて身支度をして、胸をときめかせながら一日を過ごしましたの。
お父さまが『誘われたら、お前が思ったように対応すればいい』と、おっしゃいましたので。
……でも。
誘われませんけど?
などと思いつつドアへと向かっていた私の背後から響く、サットン子爵の声。
「……あっ、アイリス君」
「はい」
あら?
先ほどとは、口調が違います。
私は期待に胸を膨らませて振り返りました。
「あ……、あの……」
机に向かって座っていたサットン子爵が立ち上がり、こちらに向かってきますわ。
「はい?」
私はちょっと首を傾げ、上目遣いで彼を見ました。
近付いてくるサットン子爵は、本日も無駄に素敵。
なにくわぬ顔をしている(つもりの)私ですが、実際には胸がドキドキしていて大変です。
私の心臓は大丈夫でしょうか?
少しばかり頬を紅潮させた背の高い美形が、私の前で立ち止まる。
「その……キミさえ良ければ……あの……今度の夜会、一緒に行ってくれないだろうか?」
「ハイ、喜んで」
ちょっと食い気味に返事してしまいましたわ。
仕事の出来る男であるサットン子爵が、一瞬、固まったように見えたのは気のせいかしら?
「あ……ホントに?」
「はい。誘って頂けて嬉しいですわ」
私は気持ちのままを口にして、少し高い所にある青い目を見つめる。
意外にも、最初に視線を逸らしたのはサットン子爵です。
スッとさりげなく視線を横に落として、呟くような声を響かせる。
「あ……ホントに……あぁ、それは……ありがとう」
感情を露わにしない訓練に長けているハズの貴族男性が、耳まで真っ赤にして目前にいます。
「こちらこそ。誘って頂いてありがとうございます」
ちょっと戸惑いつつも、キチンと返事ができました。
「あぁ……私は、ホントに……このような事に慣れてなくて……」
「まぁ……」
あら、意外ですわ。
ハンサムな独身貴族男性ですもの。
てっきり慣れているものだと思っていましたわ。
「父が早くに亡くなって……弟や妹もいるし……商会の事もあるから……自分の事は後回しになってしまって……あぁ、恥ずかしいな。いい年をして。私はこういう事に全く慣れていなくてね。上手にエスコートできなかったら、ごめんね」
「いえ、大丈夫ですわ」
美形なのに女性慣れしていない、ということですの?
それはむしろご褒美では?
無駄に麗しい見た目をしていらっしゃる上に、妹さんや弟さんを優先するという優しさ。
商会を盛り立てていく有能さと誠実さを併せ持つなんて。
素敵すぎます、サットン子爵。
私はフワフワした気分のまま帰宅しました。
◇◇◇
「その表情から判断すると、上手くいったのだね、アイリス」
「もう、お父さまったら。揶揄わないでくださいまし」
「うふふ。私の娘も大人になってしまったのね」
「もうっ、イヤですわ。お母さままで」
帰宅した私を待っていたのは、両親のニマニマした含みある笑顔です。
「なら、夜会へ行くための準備をしなくてはいけないね」
「夜会は来週ですわよ、お父さま」
「あら、アイリスったら。夜会に出るのなら、ドレスやら何やら用意しなければいけないでしょ?」
「そうですけど、お母さま。手持ちのモノで十分ですわ」
「あっ、そうだ。サットン子爵殿から何か届いていたぞ」
「まぁ、お父さま。それを先に言って下さらないと」
「あらあら、ウフフ。どんな物が届いたのか、ぜひ見たいわ」
「お母さまったら、表情で揶揄うのは止めてくださいな」
「私も見たいな」
「お父さままで」
ふと私が振り返れば。
回りには沢山の使用人たち。
その一人一人が、お母さま達と同じような表情でコチラを見ていましたわ……。
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