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【中編 一万八千文字くらい + 2,199文字】「君を愛することはない」「ハイ、喜んで!」から始まる女流作家の侯爵夫人生活
偽装結婚? ハイ、喜んで!
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「偽装結婚をしたいっ」
「偽装結婚?」
「ああ! そうだっ! このままでは、オレは廃嫡の危機だっ。それは絶対に避けたいっ」
「ですよね」
だってニコルソン侯爵令息、家を追い出されたら何も出来なさそうですもの。
それは生死を分ける問題ですわ。
ぜひ、偽装結婚をしてください。
そうして頂ければ、私としても罪悪感に苛まれることなく、枕を高くして眠ることができますわ。
「その相手になって欲しいんだっ」
「……は?」
また意味が分からなくなりましてよ、ニコルソン侯爵令息。
なぜに私が偽装結婚相手にならなければいけませんの?
「急なことで相手がいないっ」
「あら? 遊び人の貴方さまの事ですから、お相手には困らないのでは?」
「あの噂をっ! 信じているのかっ⁈」
ニコルソン侯爵令息は、美しい眉をひそめた。
顔全体を、いかにも嫌そうな、不快そうな感じに歪めている。
「えっ? 違いますの?」
「違うっ。別にオレは……女をとっかえひっかえしているような、そんな遊び人じゃないっ」
「そうですの……女をとっかえひっかえしては、いない……」
では、やはり男……。
「違うからな?」
「……」
心を読まれましたか?
ニコルソン侯爵令息は顔を赤く染めながら、ゴホン、と、わざとらしい咳をした。
「まぁ、そんなことはいい。とりあえず、偽装結婚を持ちかけられるような女はいないっ」
「そうですの。……では、なぜ私?」
「キミは……というか、キミの家は金に困っているだろう?」
「……」
ずばり。そこに踏み込みますか。
実家の経済問題をしっかり把握されているわけですね。
事前の調査はバッチリというわけですか。
まぁ、我が家の経済状況については……調べるまでもなく有名ですけれども。
「オレと結婚してくれれば、実家に援助するよ」
「……」
お金のあるお家の人間はイヤですわね。
なんでもお金で解決できると思って。
「オレは32歳。キミは20歳で年齢差はあるが。金もあるし、家格も上。オレ自身、見た目には自信がある。悪い話じゃないだろ?」
「……」
確かに、ニコルソン侯爵令息は輝く金髪に澄んだ緑色の目をしている美丈夫です。
高身長で二メートル近いですから、私よりも確実に背が高い。
ヒールを履いても、余裕で背が高い。
顔立ちも整っていて、彫刻のようです。
文句なく美形です。
しかも、お金持ち。
……ですが。
そのような所が鼻に付くのですわ。
私、そのような男性が大嫌いですの。
家柄が良くて、見栄えがよくて、お金があって。
そんなもの。
性格が悪ければ、全てが台無しですわ。
大嫌い。
「もちろん、キミが仕事を続けることも止めない。許すよ」
「……」
ビクンッ、と、肩が跳ねたのが自分でも分かりました。
女性が仕事を持つのは難しい時代です。
ましてや。
文筆業など許して貰える事など、まずありません。
「書き続けたらいい。それに結婚そのものも形だけだ。白い結婚というものだよ」
「白い結婚……」
「もちろん、キミにも侯爵夫人としての品位を保つための必要経費は認めるよ。それにプラスして、実家であるフォットセット伯爵家にも援助をしよう」
「……妹のことは? ……妹のことも助けてくださる?」
「ああ。希望するのなら、キミの妹さんに良い縁談を探してきてあげるよ」
「なんと!」
ロザリーに良い縁談を探して下さる?
私の可愛い妹。ピッチピチの16歳。
小柄でかわいい爆乳ちゃんであり、ピンクブロンドに紫の瞳が魅力的な私の妹に?
「妹を玉の輿に乗せてくださると?」
「ああ。約束しよう」
「まぁ」
玉の輿希望の妹に、玉の輿を探して下さると?
それは、なんて魅力的。
いま乗らなくてどうするの?
乗るなら今でしょ?
「結婚といっても、白い結婚だ」
ニコルソン侯爵令息は、美しく澄んだ緑色の瞳で私をしっかりと捉えてきっぱりと男らしく言う。
「君を愛することはない」
「ハイ、喜んで!」
気付いた時には。
私は、結婚の申し出を受け入れていたのである。
「偽装結婚?」
「ああ! そうだっ! このままでは、オレは廃嫡の危機だっ。それは絶対に避けたいっ」
「ですよね」
だってニコルソン侯爵令息、家を追い出されたら何も出来なさそうですもの。
それは生死を分ける問題ですわ。
ぜひ、偽装結婚をしてください。
そうして頂ければ、私としても罪悪感に苛まれることなく、枕を高くして眠ることができますわ。
「その相手になって欲しいんだっ」
「……は?」
また意味が分からなくなりましてよ、ニコルソン侯爵令息。
なぜに私が偽装結婚相手にならなければいけませんの?
「急なことで相手がいないっ」
「あら? 遊び人の貴方さまの事ですから、お相手には困らないのでは?」
「あの噂をっ! 信じているのかっ⁈」
ニコルソン侯爵令息は、美しい眉をひそめた。
顔全体を、いかにも嫌そうな、不快そうな感じに歪めている。
「えっ? 違いますの?」
「違うっ。別にオレは……女をとっかえひっかえしているような、そんな遊び人じゃないっ」
「そうですの……女をとっかえひっかえしては、いない……」
では、やはり男……。
「違うからな?」
「……」
心を読まれましたか?
ニコルソン侯爵令息は顔を赤く染めながら、ゴホン、と、わざとらしい咳をした。
「まぁ、そんなことはいい。とりあえず、偽装結婚を持ちかけられるような女はいないっ」
「そうですの。……では、なぜ私?」
「キミは……というか、キミの家は金に困っているだろう?」
「……」
ずばり。そこに踏み込みますか。
実家の経済問題をしっかり把握されているわけですね。
事前の調査はバッチリというわけですか。
まぁ、我が家の経済状況については……調べるまでもなく有名ですけれども。
「オレと結婚してくれれば、実家に援助するよ」
「……」
お金のあるお家の人間はイヤですわね。
なんでもお金で解決できると思って。
「オレは32歳。キミは20歳で年齢差はあるが。金もあるし、家格も上。オレ自身、見た目には自信がある。悪い話じゃないだろ?」
「……」
確かに、ニコルソン侯爵令息は輝く金髪に澄んだ緑色の目をしている美丈夫です。
高身長で二メートル近いですから、私よりも確実に背が高い。
ヒールを履いても、余裕で背が高い。
顔立ちも整っていて、彫刻のようです。
文句なく美形です。
しかも、お金持ち。
……ですが。
そのような所が鼻に付くのですわ。
私、そのような男性が大嫌いですの。
家柄が良くて、見栄えがよくて、お金があって。
そんなもの。
性格が悪ければ、全てが台無しですわ。
大嫌い。
「もちろん、キミが仕事を続けることも止めない。許すよ」
「……」
ビクンッ、と、肩が跳ねたのが自分でも分かりました。
女性が仕事を持つのは難しい時代です。
ましてや。
文筆業など許して貰える事など、まずありません。
「書き続けたらいい。それに結婚そのものも形だけだ。白い結婚というものだよ」
「白い結婚……」
「もちろん、キミにも侯爵夫人としての品位を保つための必要経費は認めるよ。それにプラスして、実家であるフォットセット伯爵家にも援助をしよう」
「……妹のことは? ……妹のことも助けてくださる?」
「ああ。希望するのなら、キミの妹さんに良い縁談を探してきてあげるよ」
「なんと!」
ロザリーに良い縁談を探して下さる?
私の可愛い妹。ピッチピチの16歳。
小柄でかわいい爆乳ちゃんであり、ピンクブロンドに紫の瞳が魅力的な私の妹に?
「妹を玉の輿に乗せてくださると?」
「ああ。約束しよう」
「まぁ」
玉の輿希望の妹に、玉の輿を探して下さると?
それは、なんて魅力的。
いま乗らなくてどうするの?
乗るなら今でしょ?
「結婚といっても、白い結婚だ」
ニコルソン侯爵令息は、美しく澄んだ緑色の瞳で私をしっかりと捉えてきっぱりと男らしく言う。
「君を愛することはない」
「ハイ、喜んで!」
気付いた時には。
私は、結婚の申し出を受け入れていたのである。
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