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『パティスリー・セリナ』開店日

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「はい! このメイド服、すごく可愛いのでお気に入りです!」

「可愛いメイド服、ありがとうございました!」

「こちらこそ、素敵に着こなして下さって嬉しいです」

「素敵だなんて!」

「照れます~!」

 赤くなった、ほおを両手で隠しながら照れる双子の様子に、私もレイチェルも口元をほころばせた。心無い客の言葉で落ち込んでいた店内の空気が、一気に明るくなるのを感じる。


「今日はセリナさんが作ったケーキを買いに来たんですけど、色んな種類があるんですね……」

「ええ、フルーツケーキにチーズケーキ。アップルパイにパンプキンパイ、ブルーベリータルト。今の時季、材料を入手できる範囲で色んな種類を作ってみたの」

「それに、とってもキレイ……」

「フルーツケーキとかは朝、カットしたばかりの果物を使ってるから新鮮なのよ」

 鮮度の高いカットフルーツはやはり見栄えが良い。ガラスのショーケースの中で輝く黄金色のパイやチーズケーキ、色とりどりのケーキにレイチェルは、うっとりと心を奪われている様子だ。

「どれも美味しそうで目移りしますね。どれを選べばいいかしら? セリナさんのおススメは?」

「そうね。私のおススメは……」

 レイチェルはさんざん悩んだ末、私の意見も聞いた上で一種類ずつ、複数個を購入していった。針子の少女は満面の笑みで、購入したケーキが入った編みカゴを大事そうに持って帰っていった。そんな彼女の後姿を手を振って見送りながら双子はしみじみとしている。

「良い人ですね~」

「ああいう、お客さんばっかりだと嬉しいんですけどね~」

「そうね……。でも、客商売をやってる以上、色んなお客様がいるのは仕方ないわ」

 そんな話をしていると、店舗のドアが開いた。そして主婦らしき、二人組があらわれた。

「いらっしゃいませ~」

「いらっしゃいませ。あ、先日の……」

「こんにちは。ようやく開店ね!」

「待ち遠しかったわ!」

 意気揚々と店内に入ってきたのは以前、まだこの店舗がオープンする前に外から、店内をのぞき込んでいた主婦だった。

「開店日に足を運んで下さって、ありがとうございます」

「うふふ。実はさっき、肉屋で買い物した時、エマさんに聞いたのよ」

「え、エマさんですか?」

「そうよ『開店したパティスリー・セリナのケーキを買って食べてみたけど、すごく美味しかった!』って、来る人、来る人にすすめていたのよ」

「エマさん。そんなことを……」

 店舗の開店初日にも関わらず、客の入りが悪いと肩を落としていた私を見かねて、肉屋の客にウチのことを宣伝してくれてるのかと思うと、胸が熱くなり涙が出そうになった。

「そういう訳だから、エマさんが絶賛してたフルーツケーキとチーズケーキを頂こうかしら!」

「私はブルーベリーのタルトと、そのクッキーも頂くわ!」

「はい!」

「ありがとうございます!」
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