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カーニバル準備
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ーイノリsideー
カーニバル当日の早朝、街は最終確認やら出店の設置などで賑わっていた。
イノリも手伝いで飾り付けをしていた。
今日は出張お菓子屋さんで屋台を貸してもらう事になっていた。
色鮮やかな屋台が並ぶ姿を見ると、まるで元の世界のお祭りを連想させる。
あるわけないが盆踊りでもあれば完璧なのになぁ…と思った。
屋根の飾り付けを終えて梯子から降りる。
「イノリちゃん、ちょっといいかしら」
地面に飾り付けで散らばったものを掃除していると八百屋のおばさんに声を掛けられた。
明るく元気な人で新鮮な野菜はいつも夕飯の材料なんかでお世話になっている。
瞬の時には知り合わなかった人だ。
確か食べ歩きのサラダを売るんじゃなかっただろうか。
八百屋のおばさんに近付くと、味見だとお試しようにサラダをもらった。
それが引き金になり、いろんな人が自分の商品をイノリに差し出した。
食べきれないほどいろいろもらい、イノリもお礼にカップケーキを渡した。
美味しそうだな、後で食べるのが楽しみだと自分の出店に戻った。
騎士達もまだカーニバルが始まっていないのに見回りで忙しそうだ。
その中で、ハイドの姿を見つけて…つい目で追いかけてしまう。
ハイドにも差し入れを渡そうと街の人達が近付いていくが仕事中だと断っていた。
ハイドはリチャードと一緒に見回りの打ち合わせをしていた。
ふと、ハイドの目線が動いて慌てて屋台の後ろにしゃがんで隠れた。
「お兄ちゃん、何やってるの?」
「あ、はは…」
近所の男の子が不思議そうに俺を見つめて、なんて言えばいいのか分からず苦笑いしか出来なかった。
ハイドと会ってしまったが、まだ瞬だと気付いていないし…きっと目が合ったらボロが出そうだった。
気持ちを落ち着けようと深呼吸した。
しゃがんでいたら、目の前にいいものを見つけてそれを手に持った。
これなら絶対にバレないと自信を持てる。、
ちょっと工作して、完成したと嬉しかった。
屋台から顔を出すともう別の所に行ったのかハイドはいなかった。
俺は途中だった屋台の飾り付けを再開した。
商品であるカップケーキを見栄えよく並べていたら、スカーレットの事を思い出した。
スカーレットを手伝える時間はあるのだろうか。
手伝うと言ったからにはスカーレットとの時間を作ろうと思った。
何を手伝うのかよく分からないが…
準備が一通り終わり、もらったサラダを食べているところだった。
学校の方向から糸目の少年、スカーレットくんが手を振ってやってきた。
「おっ、おにーさんじゃないですか!偶然!なんちって」
「スカーレットくん、おはよう…?」
スカーレットを見ると腕には痛々しい包帯が巻いてあった。
なにかあったのだろうかと、心配になった。
この前は傷がなかったし、包帯も真新しい。
スカーレットも視線に気付き包帯を見る。
愛しいものを撫でるような優しい手つきのスカーレットを不思議に思った。
見た目通り痛くないのだろうか。
「ど、どうしたの?その腕」
「うん、ちょっとね…俺もお兄さんに用があって来たんです」
「用事?」
「もう手伝わなくてよくなりました!」
包帯については何も言うつもりはないそうだ。
スカーレットくんは楽しげにそう笑う。
イノリはまさにどうしようか考えていた事で驚いた。
手伝わなくてよくなったという事はスカーレットの好きな人と何かしら進展があったのかと微笑ましく思う。
イノリが思った以上にスカーレットは行動が早かった。
自分も見習いたいと考えていた。
「いい事でもあった?」
「この腕を見せてカーニバルに行きたいのに不自由だぁーって喚き散らしたら少し間だけ一緒に居てくれるみたいで!ロイスに人並みの罪悪感があって良かったぁ、これでロイスとデートスポット回ります!」
「…そ、そっか…頑張ってね」
彼とスカーレットの関係がさらに分からなくなり、それしか言えなかった。
ちょっと、見習うのはやめとこう。
スカーレットは彼とのデートに備えてお洒落をするために一度帰るとイノリに手を振り、走っていった。
イノリは気を取り直してサラダを食べていた。
イノリの店は名物のカップケーキとクッキーを出すつもりで、前日大量に作っておいたものが並んでいる。
男性も買いやすいように甘くないものも用意している。
きっとカーニバルは素敵な一日になるだろう。
全ての恋人達が幸せになりますように…
愛するあの人も幸せになりますように…
カーニバル当日の早朝、街は最終確認やら出店の設置などで賑わっていた。
イノリも手伝いで飾り付けをしていた。
今日は出張お菓子屋さんで屋台を貸してもらう事になっていた。
色鮮やかな屋台が並ぶ姿を見ると、まるで元の世界のお祭りを連想させる。
あるわけないが盆踊りでもあれば完璧なのになぁ…と思った。
屋根の飾り付けを終えて梯子から降りる。
「イノリちゃん、ちょっといいかしら」
地面に飾り付けで散らばったものを掃除していると八百屋のおばさんに声を掛けられた。
明るく元気な人で新鮮な野菜はいつも夕飯の材料なんかでお世話になっている。
瞬の時には知り合わなかった人だ。
確か食べ歩きのサラダを売るんじゃなかっただろうか。
八百屋のおばさんに近付くと、味見だとお試しようにサラダをもらった。
それが引き金になり、いろんな人が自分の商品をイノリに差し出した。
食べきれないほどいろいろもらい、イノリもお礼にカップケーキを渡した。
美味しそうだな、後で食べるのが楽しみだと自分の出店に戻った。
騎士達もまだカーニバルが始まっていないのに見回りで忙しそうだ。
その中で、ハイドの姿を見つけて…つい目で追いかけてしまう。
ハイドにも差し入れを渡そうと街の人達が近付いていくが仕事中だと断っていた。
ハイドはリチャードと一緒に見回りの打ち合わせをしていた。
ふと、ハイドの目線が動いて慌てて屋台の後ろにしゃがんで隠れた。
「お兄ちゃん、何やってるの?」
「あ、はは…」
近所の男の子が不思議そうに俺を見つめて、なんて言えばいいのか分からず苦笑いしか出来なかった。
ハイドと会ってしまったが、まだ瞬だと気付いていないし…きっと目が合ったらボロが出そうだった。
気持ちを落ち着けようと深呼吸した。
しゃがんでいたら、目の前にいいものを見つけてそれを手に持った。
これなら絶対にバレないと自信を持てる。、
ちょっと工作して、完成したと嬉しかった。
屋台から顔を出すともう別の所に行ったのかハイドはいなかった。
俺は途中だった屋台の飾り付けを再開した。
商品であるカップケーキを見栄えよく並べていたら、スカーレットの事を思い出した。
スカーレットを手伝える時間はあるのだろうか。
手伝うと言ったからにはスカーレットとの時間を作ろうと思った。
何を手伝うのかよく分からないが…
準備が一通り終わり、もらったサラダを食べているところだった。
学校の方向から糸目の少年、スカーレットくんが手を振ってやってきた。
「おっ、おにーさんじゃないですか!偶然!なんちって」
「スカーレットくん、おはよう…?」
スカーレットを見ると腕には痛々しい包帯が巻いてあった。
なにかあったのだろうかと、心配になった。
この前は傷がなかったし、包帯も真新しい。
スカーレットも視線に気付き包帯を見る。
愛しいものを撫でるような優しい手つきのスカーレットを不思議に思った。
見た目通り痛くないのだろうか。
「ど、どうしたの?その腕」
「うん、ちょっとね…俺もお兄さんに用があって来たんです」
「用事?」
「もう手伝わなくてよくなりました!」
包帯については何も言うつもりはないそうだ。
スカーレットくんは楽しげにそう笑う。
イノリはまさにどうしようか考えていた事で驚いた。
手伝わなくてよくなったという事はスカーレットの好きな人と何かしら進展があったのかと微笑ましく思う。
イノリが思った以上にスカーレットは行動が早かった。
自分も見習いたいと考えていた。
「いい事でもあった?」
「この腕を見せてカーニバルに行きたいのに不自由だぁーって喚き散らしたら少し間だけ一緒に居てくれるみたいで!ロイスに人並みの罪悪感があって良かったぁ、これでロイスとデートスポット回ります!」
「…そ、そっか…頑張ってね」
彼とスカーレットの関係がさらに分からなくなり、それしか言えなかった。
ちょっと、見習うのはやめとこう。
スカーレットは彼とのデートに備えてお洒落をするために一度帰るとイノリに手を振り、走っていった。
イノリは気を取り直してサラダを食べていた。
イノリの店は名物のカップケーキとクッキーを出すつもりで、前日大量に作っておいたものが並んでいる。
男性も買いやすいように甘くないものも用意している。
きっとカーニバルは素敵な一日になるだろう。
全ての恋人達が幸せになりますように…
愛するあの人も幸せになりますように…
応援ありがとうございます!
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