全方位、光る海面世界

イトウ 

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エピソード②

終演で、足を知る(前編)

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 格言めいたことは、好きじゃない。
 無意味に毎日を過ごしていることを、責められているような気がするから。

 だけど、先生が前に言っていた道って何だろう。
 何だかふと気になって図書館で調べに行くことにした。
 しばらく、言葉通りの意味や、哲学的な道の意味まで調べたが、結局、良く分からなかった。

 でも、その帰り道。

 図書館で調べたことが少しでも影響したのだろうか。

 海で灯台の光が一直線に伸びているのを見た時に、心が少しだけ動いたのを思い出した。
 あの時は行ってみようと思っただけで、結局は行かなかった。
 でも今日は青空で、綿菓子のような雲と、線のような雲と、魔法のランプから出るような雲がとても綺麗で、近くで見たくなった。

 黒いイメージが離れなかった海。
 そして、ひとすじの差し込む光。

 昼間に見る快晴の青。

 感情の変化を、変化の揺れを、離さないように掴んだ気持ちのまま、その足で灯台に登ることにした。

 愛想笑いを作って、入場料を払って中に入る。
 なんだか、中学生が一人で入るのは恥ずかしい。

「こんな、階段って狭かったっけ?」

 昔、小さい頃に登った時はもっと広くて長かったような気がする。

 窮屈な螺旋階段の後、低い出入り口から外に出たら大きなトンビが横切り慌てて避ける。

「びっくりした!」

 下を見ると海が広がり、上を見ると空が広がっている。

「雲って。動かないのも、動くのもあるんだ」

 当たり前の事を、つぶやいた。
 色々な高さに雲が浮かんでいると、授業で習ったのに初めて理解をした。

 時計回りに歩かなくてはならないルールがあるらしく、ゆっくりと手すりにつかまって歩く。

 そして、一周して同じ場所に戻ってきた。
 最初に見た風景と同じはずなのに、少しだけ違って見えて、何故か心が落ち着いた。

「……何か、良いかも」

 小さな幸せを見つけた気分だ。

 また、来よう。

 ほんの少しだけ、前を向けた瞬間だった。













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