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「君を愛することはない」

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 アーヴィン様のお屋敷での滞在が終わり、領地に戻ってきた私は、数日間泣き暮らした。私のことを全く覚えていなかったアーヴィン様。それどころか、私のことを疎ましく思っているのを少しも隠そうとしないその冷たい態度に、私と同じローザという名のあの黒髪の女性の存在。全てに打ちのめされていた。

 数日後、ようやくベッドからフラフラと起き上がった私は、溜まっていた私宛ての手紙に手を伸ばし、ゆっくりと確認していった。もちろんアーヴィン様からの手紙などは届いていない。分かっていても、がっかりした。その代わり、幼なじみで恩人でもあるダリアスからの優しい手紙が届いていた。その後体調はどう?元気に過ごしている?何か困ったことがあればいつでも連絡しておいで。

「……う……、ひっく……」

 その温かみの溢れる文面に、また涙がとめどなく溢れる。優しい人に話を聞いてほしくて、この辛さを吐き出したくて、私はダリアスに手紙をしたためた。



 一週間後、彼が我が屋敷を訪れた。手紙を受け取ってからすぐに来てくれたのだと分かる早さだった。ダリアスは今では転移魔法も自在に操る立派な魔法使いになっていた。
 侍女に通され私の部屋に訪れた彼の気遣わしげな瞳を見た瞬間、また私の涙腺が緩む。

「ローザ……」
「ダ……、ダリアス……ッ!」

 年甲斐もなく、私は彼の胸に飛び込んで泣いた。



 私が涙ながらに全てを話し終えた時、ダリアスは眉間に皺を寄せしばらく黙っていた。

「……おかしな話だね。その黒髪の女性と君を間違うはずがない。だって君はこんなに綺麗なブロンドだし、顔立ちだって全然違うだろう」
「ええ……。だけど、アーヴィン様ははっきりと言ったわ。幼い頃から彼女一筋だって。アーヴィン様のご両親にそれとなく尋ねてみたんだけど、ただ気恥ずかしくて不貞腐れているだけだろうって。そんな女性を連れ込んでいたのなら、すぐに縁を切るようきちんと言い聞かせるから、どうか勘弁してほしいって……」
「……君のご両親には?」
「まだ事情は話していないけれど、面会が上手くいかなかったことは気付いていると思うわ。帰ってきてから、私ずっと臥せっていたから……」
「…………。」

 ダリアスはしばらく真剣に考え込むと、僕が彼らの様子を探ってくると言った。

「何かが起こっているはずだ。僕が調べるよ。しばらく時間をおくれ。ローザ、君は……、ちゃんと食事をとって、ゆっくり眠るんだ。いいね?」
「……。うん……」
「僕に任せて。どんな事情があるにせよ、真実を見つけてくるから」

 彼は優しい声でそう言うと、少し遠慮がちに私を抱き寄せ、背中をポンポンと軽く叩いてくれた。
 ダリアスの腕の中は温かくて、とても心地良かった。




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