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運命さんこんばんは、ありがとう
1 ひとりぼっち ①
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主人である八生と晶馬が番婚を成した後、玲斗は『保険』としての役目から解放された。本来ならこの先も八生の『運命』に出会う可能性から、玲斗は無事役割を終えるまでか『運命』に出会い『保険』としての役割を全うするまでは八生の傍を離れることは許されないはずだった。
ではどうして玲斗が解放されたのか、八生は晶馬と番う前は『運命』という存在に不安もあり先々代に従っていたが、元々晶馬と番えたなら燐と玲斗のことを解放するつもりでいた。番ったからといって完全に不安がなくなるわけではないが、八生は番になることをひとつの区切りとして考えていた。それは、いくら大金を積んでみても人の人生に見合う対価なんてないと思っていたからだ。
しばらくの間自分たちに縛り付けてしまうことを許して欲しい、どうか『運命』に出会いませんように、と八生は胸の中でふたりに詫び続けていた。
それなのに番婚目前に晶馬が『運命』と出会ってしまったことで、燐は晶馬の『運命』である咲と番になってしまった。玲斗の燐に対する気持ちに気づいていた八生は、もっと早くふたりを解放していれば──と後悔したが『覆水盆に返らず』『後の祭り』、すべては今更だった。八生は事実を重く受け止めあえて玲斗に謝罪はせず、これまでの仕事ぶりに対する労いのみで解雇という形をとった。言い訳をしても自身の罪悪感が少しだけ軽くなるだけでなにも変わらないし、せめて玲斗には役割で誰かと番うことはさせたくないと思ったのだ。
玲斗の方は八生の想いを知らないまま今更の解雇に憤っていた。それでも落ち着いてくるとクビになって良かった、とも思った。死ぬまで贅沢三昧の生活を送れるだけのお金はもらってはいるが、片想いとはいえ愛する人を失い心の支えを失ってしまったのだ。これからなにを支えとして生きていけばいいのか、玲斗は分からなくなってしまっていた。それなのに晶馬と咲の繋がりが完全に切れ、燐は『保険』ではなく晶馬の秘書としての仕事を続けることにしたのだ。お金は充分過ぎるほどあるのだから今更働かなくてもと思うが、どうやら番である咲が「若いうちは働かなくちゃ」と言ったのだとか。そういう咲も辞めさせられた土木見習いの仕事も事務仕事であれば、と再就職を燐は許したらしい。
なにもかもが意外だった。心配性なところのある燐が、番で、愛しているΩが外で働くのを許すことも、仕事中は相変わらずだが休憩時間になると「咲は意外と料理が上手で──」等と緩み切った顔で嬉しそうに語ることも、ぜんぶぜんぶ玲斗は知らない。どうせ手に入らないなら知らないままでいたかった。
それに、変わったのはなにも燐だけではなかった。晶馬も八生もまた変わっていた。しっかりと愛する人と繋がって、愛する人の存在がお互いを強くしたのだ。これからもっともっと変わっていくだろう──。
玲斗だけはなにも変わらない。愛する人もいないまま、ひとりぼっちのまま。
ではどうして玲斗が解放されたのか、八生は晶馬と番う前は『運命』という存在に不安もあり先々代に従っていたが、元々晶馬と番えたなら燐と玲斗のことを解放するつもりでいた。番ったからといって完全に不安がなくなるわけではないが、八生は番になることをひとつの区切りとして考えていた。それは、いくら大金を積んでみても人の人生に見合う対価なんてないと思っていたからだ。
しばらくの間自分たちに縛り付けてしまうことを許して欲しい、どうか『運命』に出会いませんように、と八生は胸の中でふたりに詫び続けていた。
それなのに番婚目前に晶馬が『運命』と出会ってしまったことで、燐は晶馬の『運命』である咲と番になってしまった。玲斗の燐に対する気持ちに気づいていた八生は、もっと早くふたりを解放していれば──と後悔したが『覆水盆に返らず』『後の祭り』、すべては今更だった。八生は事実を重く受け止めあえて玲斗に謝罪はせず、これまでの仕事ぶりに対する労いのみで解雇という形をとった。言い訳をしても自身の罪悪感が少しだけ軽くなるだけでなにも変わらないし、せめて玲斗には役割で誰かと番うことはさせたくないと思ったのだ。
玲斗の方は八生の想いを知らないまま今更の解雇に憤っていた。それでも落ち着いてくるとクビになって良かった、とも思った。死ぬまで贅沢三昧の生活を送れるだけのお金はもらってはいるが、片想いとはいえ愛する人を失い心の支えを失ってしまったのだ。これからなにを支えとして生きていけばいいのか、玲斗は分からなくなってしまっていた。それなのに晶馬と咲の繋がりが完全に切れ、燐は『保険』ではなく晶馬の秘書としての仕事を続けることにしたのだ。お金は充分過ぎるほどあるのだから今更働かなくてもと思うが、どうやら番である咲が「若いうちは働かなくちゃ」と言ったのだとか。そういう咲も辞めさせられた土木見習いの仕事も事務仕事であれば、と再就職を燐は許したらしい。
なにもかもが意外だった。心配性なところのある燐が、番で、愛しているΩが外で働くのを許すことも、仕事中は相変わらずだが休憩時間になると「咲は意外と料理が上手で──」等と緩み切った顔で嬉しそうに語ることも、ぜんぶぜんぶ玲斗は知らない。どうせ手に入らないなら知らないままでいたかった。
それに、変わったのはなにも燐だけではなかった。晶馬も八生もまた変わっていた。しっかりと愛する人と繋がって、愛する人の存在がお互いを強くしたのだ。これからもっともっと変わっていくだろう──。
玲斗だけはなにも変わらない。愛する人もいないまま、ひとりぼっちのまま。
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