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運命がたり
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曽祖父たちを無事送り出して一年が経っていた。今日は燐と咲、玲斗と航を自宅へと招きささやかなパーティを開いた。
前日から八生は料理の仕込みやらなんやらで大忙しで、晶馬も仕舞い込んでいるお皿を出してきたり普段はしないところの掃除をしたりとできることを手伝った。遅くなってしまったが、自分たちの都合に巻き込んでしまったお詫びと、曽祖父の日記から知り得たことを伝えなくてはいけないと思ったからだった。
お互いの近況を話しながら楽しく会食は進み、食後のコーヒーを用意して、晶馬は「みなさんに伝えなくてはいけないことがあります」と言った。皆もそれとなく今日のパーティがどういう目的で開かれたのかは聞いていたので、皆佇まいを正し晶馬に注目した。
晶馬は曽祖父の日記の内容を個人の感想も想像もなく、そのままを読んで伝えた。同じものでも個人によって感じ方は変わってくるだろうが、それでいいと思っていた。途中で鼻を啜る音が聞こえてきて、曽祖父たちの為に泣いてくれることが嬉しくて、晶馬は心の中で感謝を伝えた。そして再び日記の続きを読み始めた。
すべてを読み終わり、晶馬と八生は並んで皆に頭を下げた。そのまま頭を上げようとしないふたりに、咲たちは困ったように顔を見合わせ、最初に口を開いたのは咲だった。咲はこの件の一番の被害者、ともいえる。
「──あのね、僕は最初からひいじいちゃんたちのこと恨んでいないよ。もちろん鷹取さんと羽鳥さんのこともね。僕は燐と番になれて嬉しいんだ。僕はずっとひとりぼっちだったから、だから家族ができて嬉しいんだよ。それが燐でよかったって思うんだ。僕は今とっても幸せなんだよ。だからね、恨み言じゃなくてありがとうって言いたいんだ。ひいじいちゃんたちだって、日記にも昔のことだけで最近のことは書かれていなかったから推測することしかできないけど、きっと幸せだったよ。だからもういいじゃない」
そう言って優しく笑う咲。咲に寄り添うようにして燐も笑っていた。
「あの、僕も幸せですよ。『保険』にならなければ母は救えなかっただろうし、『保険』から解放されなければ航さんには会えなかったと思います。咲くんが言うようにみんな幸せなんだからもういいと思います。多分それで先々代も色々なことから解放されるんじゃないかって思いますし」
玲斗もそう言って微笑み、航も微笑んで頷いている。
皆が『運命』に振り回され、だけど幸せを掴んでいる。これ以上なにかを言うのも違うと思い、晶馬はもう一度だけ頭を下げてすぐに顔を上げ微笑んで見せた。八生は両手をぱちっと合わせ、「そういえばケーキがあるんですよ」とキッチンへと消えていき、その後を「手伝う」と言って晶馬が追った。その様子を二組の夫夫たちは優しげな眼差しで見ていた──。
前日から八生は料理の仕込みやらなんやらで大忙しで、晶馬も仕舞い込んでいるお皿を出してきたり普段はしないところの掃除をしたりとできることを手伝った。遅くなってしまったが、自分たちの都合に巻き込んでしまったお詫びと、曽祖父の日記から知り得たことを伝えなくてはいけないと思ったからだった。
お互いの近況を話しながら楽しく会食は進み、食後のコーヒーを用意して、晶馬は「みなさんに伝えなくてはいけないことがあります」と言った。皆もそれとなく今日のパーティがどういう目的で開かれたのかは聞いていたので、皆佇まいを正し晶馬に注目した。
晶馬は曽祖父の日記の内容を個人の感想も想像もなく、そのままを読んで伝えた。同じものでも個人によって感じ方は変わってくるだろうが、それでいいと思っていた。途中で鼻を啜る音が聞こえてきて、曽祖父たちの為に泣いてくれることが嬉しくて、晶馬は心の中で感謝を伝えた。そして再び日記の続きを読み始めた。
すべてを読み終わり、晶馬と八生は並んで皆に頭を下げた。そのまま頭を上げようとしないふたりに、咲たちは困ったように顔を見合わせ、最初に口を開いたのは咲だった。咲はこの件の一番の被害者、ともいえる。
「──あのね、僕は最初からひいじいちゃんたちのこと恨んでいないよ。もちろん鷹取さんと羽鳥さんのこともね。僕は燐と番になれて嬉しいんだ。僕はずっとひとりぼっちだったから、だから家族ができて嬉しいんだよ。それが燐でよかったって思うんだ。僕は今とっても幸せなんだよ。だからね、恨み言じゃなくてありがとうって言いたいんだ。ひいじいちゃんたちだって、日記にも昔のことだけで最近のことは書かれていなかったから推測することしかできないけど、きっと幸せだったよ。だからもういいじゃない」
そう言って優しく笑う咲。咲に寄り添うようにして燐も笑っていた。
「あの、僕も幸せですよ。『保険』にならなければ母は救えなかっただろうし、『保険』から解放されなければ航さんには会えなかったと思います。咲くんが言うようにみんな幸せなんだからもういいと思います。多分それで先々代も色々なことから解放されるんじゃないかって思いますし」
玲斗もそう言って微笑み、航も微笑んで頷いている。
皆が『運命』に振り回され、だけど幸せを掴んでいる。これ以上なにかを言うのも違うと思い、晶馬はもう一度だけ頭を下げてすぐに顔を上げ微笑んで見せた。八生は両手をぱちっと合わせ、「そういえばケーキがあるんですよ」とキッチンへと消えていき、その後を「手伝う」と言って晶馬が追った。その様子を二組の夫夫たちは優しげな眼差しで見ていた──。
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