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ダイエットの先にあるもの
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ダイエットの先にあるもの
俺、コウジは34歳の会社員。街コンで、同じ高校・同じ水泳部だったレナに再会した。
彼女は当時、クラスのマドンナ的存在。でも今は、少しぽっちゃりした雰囲気になっていた。
そんなレナをウォーキングに誘って、今では毎週土曜日に一緒に歩くのが習慣になっている。
さらに給料日の次の金曜日には、必ず一緒に食事をするようになった。
今日はその食事の日。最寄り駅で待ち合わせしていると——
「今日はコウジくんの方が早かったね」
「さっき着いたところ。1本前の電車だったよ」
外は大雨。
傘をさして、予約していた居酒屋に向かう。
「レモンサワーでいい?」
「うん、あと……やきとり」
料理が並び、乾杯。
「今月もお疲れ様」
「はぁ~疲れた~。今月、めちゃくちゃ忙しかったもん」
「毎日帰るの遅かったもんね」
他愛もない会話。でも、それが心地いい。
「雨、止まないね」
「うん、明日ウォーキングできるかな?」
「いや、さすがに無理かも」
「どうしようか…」
実は、奇跡的にこれまでの半年、土曜日は一度も雨が降らなかった。
「そういえば、市民プールの横にトレーニングルームあったよね?」
「コウジくんがたまに行ってるプールの?」
「そうそう。たしか、古いランニングマシーンが2台置いてあったはず」
「へぇ~。じゃあ、明日そこ行ってみようよ」
「うん、車で迎えに行くよ」
そして次の日、レナを迎えに行って、その施設へ。
プールの脇には、確かに古びたトレーニングルームがあった。誰もいない。
「レナちゃん、これ相当古いね。俺たちが高校の頃にできたやつじゃない?」
「うわ、めっちゃアナログ。でも、動きそう!」
使い方は単純で、むしろわかりやすい。
30分歩いて休憩、また30分歩いて……そんな感じで2時間過ごした。
そこへ年配の女性が入ってきた。
「こんにちは~」
「こんにちは」
「あら、お似合いのカップルさんねぇ」
「ははは……」
否定も肯定もできない絶妙な関係。
「2人きりでアツアツだから、私は帰ろうかしら~」
「いやいや、僕たちもちょうど帰るところです」
そんな言葉に笑いつつ、施設を出る。
プールの横を通ったとき、レナがふと立ち止まる。
「……プール、泳ぎたいな」
その表情がどこか寂しそうで、俺は何も言えなかった。
車に戻ると、レナはおにぎりとお弁当を差し出してくれた。
「レナちゃんのおにぎり、美味しいな」
「ありがとう」
「レナちゃん、泳ぐ?……って、まだ恥ずかしいか」
レナは黙ってしまう。
「ごめん。デリケートなことだもんね。気にしないで」
「……考えたんだ。あと体重5キロ減ったら、プール行こうかなって」
「うん、わかった」
「だから、明日から毎日、体重計に乗って……その写真をコウジくんに送るね」
「えっ、俺に?なんで?」
「ウォーキングが続けられたのも、コウジくんのおかげ。だから、送るって思えば続けられる気がするんだ」
俺は戸惑いつつも頷いた。
翌朝、レナから体重計の写真が届く。
どう返せばいいかわからなくて、「頑張って」とだけ返す俺。情けない。
次の週は晴れ、いつものコースに戻る。
「体重、ちょっと減ったかも。どうかな?」
「……いいんじゃない」
「ありがとう」
「あと、ペディキュアかわいいね」
「えー、見てたの?恥ずかしいなぁ」
「ご、ごめん。可愛くてさ……」
「じゃあ、また可愛く塗り直してくるね」
自分でも、何を言ってるんだか。
ウォーキングが終わり、いつものようにレナ宅へ送る。
「コウジくん、先週、おばちゃんが“カップルですか?”って言ってたじゃん?」
「うん、そうだね」
「……私たちってさ……」
俺は息をのんだ。
「……いや、なんでもないや」
「え?……うん、そっか」
「いつも送ってくれてありがとう。また来週ね」
「うん、また」
俺たちの関係ってなんだろう。
でもこの関係、今は壊したくない。
一歩でも進んだら崩れてしまう、そんなバランスの上に成り立っている気がする。
来週の天気は晴れ。
——おばちゃんの質問の答えは、まだ自分の中で見つかっていない。
この答え、AIなら教えてくれるのかな。
俺、コウジは34歳の会社員。街コンで、同じ高校・同じ水泳部だったレナに再会した。
彼女は当時、クラスのマドンナ的存在。でも今は、少しぽっちゃりした雰囲気になっていた。
そんなレナをウォーキングに誘って、今では毎週土曜日に一緒に歩くのが習慣になっている。
さらに給料日の次の金曜日には、必ず一緒に食事をするようになった。
今日はその食事の日。最寄り駅で待ち合わせしていると——
「今日はコウジくんの方が早かったね」
「さっき着いたところ。1本前の電車だったよ」
外は大雨。
傘をさして、予約していた居酒屋に向かう。
「レモンサワーでいい?」
「うん、あと……やきとり」
料理が並び、乾杯。
「今月もお疲れ様」
「はぁ~疲れた~。今月、めちゃくちゃ忙しかったもん」
「毎日帰るの遅かったもんね」
他愛もない会話。でも、それが心地いい。
「雨、止まないね」
「うん、明日ウォーキングできるかな?」
「いや、さすがに無理かも」
「どうしようか…」
実は、奇跡的にこれまでの半年、土曜日は一度も雨が降らなかった。
「そういえば、市民プールの横にトレーニングルームあったよね?」
「コウジくんがたまに行ってるプールの?」
「そうそう。たしか、古いランニングマシーンが2台置いてあったはず」
「へぇ~。じゃあ、明日そこ行ってみようよ」
「うん、車で迎えに行くよ」
そして次の日、レナを迎えに行って、その施設へ。
プールの脇には、確かに古びたトレーニングルームがあった。誰もいない。
「レナちゃん、これ相当古いね。俺たちが高校の頃にできたやつじゃない?」
「うわ、めっちゃアナログ。でも、動きそう!」
使い方は単純で、むしろわかりやすい。
30分歩いて休憩、また30分歩いて……そんな感じで2時間過ごした。
そこへ年配の女性が入ってきた。
「こんにちは~」
「こんにちは」
「あら、お似合いのカップルさんねぇ」
「ははは……」
否定も肯定もできない絶妙な関係。
「2人きりでアツアツだから、私は帰ろうかしら~」
「いやいや、僕たちもちょうど帰るところです」
そんな言葉に笑いつつ、施設を出る。
プールの横を通ったとき、レナがふと立ち止まる。
「……プール、泳ぎたいな」
その表情がどこか寂しそうで、俺は何も言えなかった。
車に戻ると、レナはおにぎりとお弁当を差し出してくれた。
「レナちゃんのおにぎり、美味しいな」
「ありがとう」
「レナちゃん、泳ぐ?……って、まだ恥ずかしいか」
レナは黙ってしまう。
「ごめん。デリケートなことだもんね。気にしないで」
「……考えたんだ。あと体重5キロ減ったら、プール行こうかなって」
「うん、わかった」
「だから、明日から毎日、体重計に乗って……その写真をコウジくんに送るね」
「えっ、俺に?なんで?」
「ウォーキングが続けられたのも、コウジくんのおかげ。だから、送るって思えば続けられる気がするんだ」
俺は戸惑いつつも頷いた。
翌朝、レナから体重計の写真が届く。
どう返せばいいかわからなくて、「頑張って」とだけ返す俺。情けない。
次の週は晴れ、いつものコースに戻る。
「体重、ちょっと減ったかも。どうかな?」
「……いいんじゃない」
「ありがとう」
「あと、ペディキュアかわいいね」
「えー、見てたの?恥ずかしいなぁ」
「ご、ごめん。可愛くてさ……」
「じゃあ、また可愛く塗り直してくるね」
自分でも、何を言ってるんだか。
ウォーキングが終わり、いつものようにレナ宅へ送る。
「コウジくん、先週、おばちゃんが“カップルですか?”って言ってたじゃん?」
「うん、そうだね」
「……私たちってさ……」
俺は息をのんだ。
「……いや、なんでもないや」
「え?……うん、そっか」
「いつも送ってくれてありがとう。また来週ね」
「うん、また」
俺たちの関係ってなんだろう。
でもこの関係、今は壊したくない。
一歩でも進んだら崩れてしまう、そんなバランスの上に成り立っている気がする。
来週の天気は晴れ。
——おばちゃんの質問の答えは、まだ自分の中で見つかっていない。
この答え、AIなら教えてくれるのかな。
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