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君の水着とおにぎりと
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君の水着とおにぎりと
おれ、コウジは34歳の会社員。
街コンで、同じ高校・同じ水泳部だったレナと再会した。
当時、彼女はマドンナ的な存在だったが、今は少しぽっちゃり体型になっていた。
それをきっかけに、レナとは毎週ウォーキングに行くようになった。
久しぶりに「泳ぎたい」と言うレナだったが、体型が気になるのか、プールはずっと敬遠していた。
そんなある日、「あと5キロ痩せたらプールに行く」と彼女は宣言した。
それから、毎日おれの元に体重計の写真が送られてくるようになった。
しかし、過度なダイエットのせいでレナは貧血を起こし、ウォーキングを中断することになった。
それ以来、毎日の体重報告はなくなり、今は三日に一度くらい届く程度になった。
それくらいの頻度なら、まあ安心できる。
正直、女の子の体重を毎日見るなんて初めての経験だった。
それだけでもう充分心配になる。……というより、俺はその写真に映るペディキュアの方を楽しみにしていた。
むしろ、体重よりそっちが気になっていたなんて、なんて下心だろう。
部屋の片づけをしていると、街コンの領収書が見つかった。
さらに、ウォーキングウェアを買ったときのレシートも出てきた。
レナと再会してから、もう一年ほど経っていた。
街コンのときの写真を見ると、今のレナのほうが少し痩せて見える。
顔もどこかすっきりした感じだ。
ちなみに、あのときレナの友達にアタックした同僚は撃沈したらしい。
「ちょっと関係を急ぎすぎた……」と嘆いていた。
次のウォーキングのとき、その話をレナにしてみた。
同僚は手が早かったらしい。
そして、ウォーキングのあと、いつものお弁当タイム。
「コウジくん、来週さ、プール行かない?」
「プール? いいの?」
「うん、そろそろ行こうかなって。あと、行かないとずっと行かない気がするから」
「わかったよ。じゃあ、迎えに行くね」
市民プールは少し距離があるが、健康のためにも歩いて行くことにした。
久しぶりにレナの泳ぎが見られるという楽しみと、水着姿が見られるという下心が交錯する。
当日、迎えに行くとレナは少し顔を赤らめていた。
「おはよう、レナちゃん」
「おはよう……来ちゃったね」
「そ、そうだね」
プールに向かう途中、雑談をしながら歩いていると、レナがぽつりと呟いた。
「ねぇ、コウジくん、あんまり水着見ないでね。ちょっとムチムチだし……」
「そ、そうなんだ」
「家で着てみたけど、やっぱり恥ずかしいなーって」
「大丈夫だよ。レナちゃんの泳ぎを見るからさ」
……とか言いつつ、水着を見ちゃうのが男の性だ。
更衣室で男女に分かれて着替え、プールサイドに出る。
俺が先に出て、準備運動をしていると、タオルにくるまったレナが現れた。
「やっぱり恥ずかしいね」
「大丈夫だよ。水着より、泳ぎのほうが目立つから」
そう言いながら、俺はちゃっかり水着をチェックしていた。
確かにムチムチ。でも、俺にとってはご褒美だ。
「いいじゃん、かわいいよ」
「でもさ、おなかがさ……」とレナはお腹をさすっている。
「レナちゃん、入っちゃおうよ」
「そ、そうだね。水に入っちゃえば、恥ずかしくないかも」
俺たちは上級者コースに入った。
ノンストップで25メートル泳ぐ形式。
幸い、人も少なくて、ほぼ貸し切り状態だ。
俺が先にスタートし、向こう岸で振り返ると、レナがしなやかなフォームで泳いでいた。
久しぶりのはずなのに、昔と同じ美しい泳ぎ。
腕の動きも、水をかく感覚も、まるで高校時代のままだった。
「どう? 久しぶりの泳ぎは」
「もう25メートルでバテバテ……」
「じゃあ今日はリハビリってことで、ゆっくりいこう」
「うん、そうしよう」
距離を伸ばしていくうちに、だんだんレナに追いつかれ、最後は抜かれていた。
2時間ほど泳いで、プールを出て、着替える。
ロビーで待っていると、肩にタオルをかけたレナが現れた。
その姿も、高校のときと変わらない。
「レナちゃん、お疲れ」
「お疲れ様。久しぶりだと疲れるね……でも、やっぱり気持ちいいね」
そのあと、近くの公園のベンチでレナのおにぎりを食べる。
プールのあとのおにぎりと温かいお茶――それは、俺にとっての青春の味。
母親がよく作ってくれた、塩気の効いたおにぎり。
冷えた体を温めるお茶。
今はレナの手作りが、その代わりになっている。
「おいしいね。やっぱり、プールあとはおにぎりとお茶だよな」
「コウジくん、いつもそのセットだったよね」
帰り道、ゆっくり歩いて帰る。
「コウジくん、ありがとう。プール行けたよ」
「それはレナちゃんの意思だよ。でも、行けてよかったね」
「コウジくんが誘ってくれたから……うれしかった」
レナの家の前で別れ、俺は自宅へと向かう。
帰り道、レナの水着姿が脳裏によみがえる。
……かわいかったなぁ。ムチムチしてて。
俺も同僚と同じになってるじゃん。
いかんいかん。
するとレナからメッセージが届いた。
「今日はありがとう。また来週もプール行こうね」
これはまた来週も水着が拝めるな……って、おい。
おれ、コウジは34歳の会社員。
街コンで、同じ高校・同じ水泳部だったレナと再会した。
当時、彼女はマドンナ的な存在だったが、今は少しぽっちゃり体型になっていた。
それをきっかけに、レナとは毎週ウォーキングに行くようになった。
久しぶりに「泳ぎたい」と言うレナだったが、体型が気になるのか、プールはずっと敬遠していた。
そんなある日、「あと5キロ痩せたらプールに行く」と彼女は宣言した。
それから、毎日おれの元に体重計の写真が送られてくるようになった。
しかし、過度なダイエットのせいでレナは貧血を起こし、ウォーキングを中断することになった。
それ以来、毎日の体重報告はなくなり、今は三日に一度くらい届く程度になった。
それくらいの頻度なら、まあ安心できる。
正直、女の子の体重を毎日見るなんて初めての経験だった。
それだけでもう充分心配になる。……というより、俺はその写真に映るペディキュアの方を楽しみにしていた。
むしろ、体重よりそっちが気になっていたなんて、なんて下心だろう。
部屋の片づけをしていると、街コンの領収書が見つかった。
さらに、ウォーキングウェアを買ったときのレシートも出てきた。
レナと再会してから、もう一年ほど経っていた。
街コンのときの写真を見ると、今のレナのほうが少し痩せて見える。
顔もどこかすっきりした感じだ。
ちなみに、あのときレナの友達にアタックした同僚は撃沈したらしい。
「ちょっと関係を急ぎすぎた……」と嘆いていた。
次のウォーキングのとき、その話をレナにしてみた。
同僚は手が早かったらしい。
そして、ウォーキングのあと、いつものお弁当タイム。
「コウジくん、来週さ、プール行かない?」
「プール? いいの?」
「うん、そろそろ行こうかなって。あと、行かないとずっと行かない気がするから」
「わかったよ。じゃあ、迎えに行くね」
市民プールは少し距離があるが、健康のためにも歩いて行くことにした。
久しぶりにレナの泳ぎが見られるという楽しみと、水着姿が見られるという下心が交錯する。
当日、迎えに行くとレナは少し顔を赤らめていた。
「おはよう、レナちゃん」
「おはよう……来ちゃったね」
「そ、そうだね」
プールに向かう途中、雑談をしながら歩いていると、レナがぽつりと呟いた。
「ねぇ、コウジくん、あんまり水着見ないでね。ちょっとムチムチだし……」
「そ、そうなんだ」
「家で着てみたけど、やっぱり恥ずかしいなーって」
「大丈夫だよ。レナちゃんの泳ぎを見るからさ」
……とか言いつつ、水着を見ちゃうのが男の性だ。
更衣室で男女に分かれて着替え、プールサイドに出る。
俺が先に出て、準備運動をしていると、タオルにくるまったレナが現れた。
「やっぱり恥ずかしいね」
「大丈夫だよ。水着より、泳ぎのほうが目立つから」
そう言いながら、俺はちゃっかり水着をチェックしていた。
確かにムチムチ。でも、俺にとってはご褒美だ。
「いいじゃん、かわいいよ」
「でもさ、おなかがさ……」とレナはお腹をさすっている。
「レナちゃん、入っちゃおうよ」
「そ、そうだね。水に入っちゃえば、恥ずかしくないかも」
俺たちは上級者コースに入った。
ノンストップで25メートル泳ぐ形式。
幸い、人も少なくて、ほぼ貸し切り状態だ。
俺が先にスタートし、向こう岸で振り返ると、レナがしなやかなフォームで泳いでいた。
久しぶりのはずなのに、昔と同じ美しい泳ぎ。
腕の動きも、水をかく感覚も、まるで高校時代のままだった。
「どう? 久しぶりの泳ぎは」
「もう25メートルでバテバテ……」
「じゃあ今日はリハビリってことで、ゆっくりいこう」
「うん、そうしよう」
距離を伸ばしていくうちに、だんだんレナに追いつかれ、最後は抜かれていた。
2時間ほど泳いで、プールを出て、着替える。
ロビーで待っていると、肩にタオルをかけたレナが現れた。
その姿も、高校のときと変わらない。
「レナちゃん、お疲れ」
「お疲れ様。久しぶりだと疲れるね……でも、やっぱり気持ちいいね」
そのあと、近くの公園のベンチでレナのおにぎりを食べる。
プールのあとのおにぎりと温かいお茶――それは、俺にとっての青春の味。
母親がよく作ってくれた、塩気の効いたおにぎり。
冷えた体を温めるお茶。
今はレナの手作りが、その代わりになっている。
「おいしいね。やっぱり、プールあとはおにぎりとお茶だよな」
「コウジくん、いつもそのセットだったよね」
帰り道、ゆっくり歩いて帰る。
「コウジくん、ありがとう。プール行けたよ」
「それはレナちゃんの意思だよ。でも、行けてよかったね」
「コウジくんが誘ってくれたから……うれしかった」
レナの家の前で別れ、俺は自宅へと向かう。
帰り道、レナの水着姿が脳裏によみがえる。
……かわいかったなぁ。ムチムチしてて。
俺も同僚と同じになってるじゃん。
いかんいかん。
するとレナからメッセージが届いた。
「今日はありがとう。また来週もプール行こうね」
これはまた来週も水着が拝めるな……って、おい。
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