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しおりを挟む解毒薬を、飲ませた。
けれど、カフカ殿下に、すぐに変化は現れなかった。
その顔は、変わらず青白いまま。
呼吸も、弱々しいまま。
「……そんな」
まさか、手遅れだったというの?
あれだけの危険を乗り越えて、ようやくたどり着いたのに。
私の目から、絶望の涙が、ぽろぽろとこぼれ落ちた。
その間も、フブカ王女は、気を失った敵から武器を取り上げ、寝室の扉の前で警戒を続けてくれている。
私は、カフカ殿下の冷たい手を、両手で包み込むように握りしめた。
「嫌です……殿下……! 戻ってきてください……!」
彼との、短い思い出が、脳裏をよぎる。
初めて会った日の、あの甘い言葉。
私を庇ってくれた、あの温かい背中。
「あなたがいなくなったら、わたくしは……!」
その時だった。
私が握りしめていたカフカ殿下の指が、ぴくり、と微かに動いた。
「……え?」
私は、はっとして彼の顔を見る。
すると、蝋人形のように白かった彼の頬に、ほんの少しだけ、血の気が戻り始めているのが分かった。
そして、ゆっくりと、本当にゆっくりと、彼の重そうな瞼が、持ち上がっていく。
その、長い間閉じられていた瞳は、最初は虚ろに宙を彷徨っていた。
しかし、やがてその焦点が、すぐ目の前にいる私の姿を、はっきりと捉えた。
「……りる、てぃあ……」
掠れた、囁くような声。
「……来て、くれたのか……」
「殿下……! はい、はい! わたくしです!」
私は、何度も、何度も、頷いた。
涙で、彼の顔がよく見えない。
カフカ殿下は、ゆっくりと周囲を見回し、フブカの姿と、床に転がる男たちを認めると、すぐに全てを察したようだった。
そして、私のほうに向き直ると、弱々しくも、確かに、微笑んでみせた。
それは、いつもの、あの穏やかな笑顔だった。
「……また、君に、助けられてしまったな」
その一言を聞いた瞬間、私が必死に堪えていた感情の堰が、完全に決壊した。
「うわぁぁぁぁぁん……!」
私は、子供のように、声を上げて泣きじゃくった。
よかった。
生きていて、よかった。
本当に、よかった。
私の涙が、彼の頬に、次々と落ちていった。
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