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女将さんは終始呆然としており
ジンさんはアタフタとしている。

2人とも今日の提供予定の料理がダメになったと思っているようだ。

まぁたしかに初めて見た料理で
さらに茶色のヘドロときたら食べ物だと思わない。


『いい匂いがするなー!今日のメシはなんだー?』


宿場のお客さんが注文しに
キッチンに顔を出して話し掛けて来た事により

女将さんとジンさんは現実にお戻りになられた模様です。

少々お待ちを~とお客さんに伝え


見た目はヘドロだが、
たしかにいい匂いね!と私のお皿を奪って行く女将さん


あ…私のご飯


女将さんはスプーンでヘドロを掬い
ジンさんの口の中へ入れた

謎のヘドロを自分で食べる勇気はなかったらしい。


『う、うまぁーーーーい!!』


最初は自分の口に入れられたヘドロに
びっくりしていたジンさんだったが、

それ以上に謎のヘドロの美味しさにびっくりしたようだ。

ジンさんの反応を見た女将さんは
自分でも食べる事にしたらしくヘドロを口に入れた。


だからそれ私のご飯…


『これは、初めて食べるけど美味しいわね!』


見た目は茶色のヘドロだけど、と
2人ともヘドロを気に入った様子

彩葉はこれはカレーと言う料理で
自分の故郷の料理なのだと説明したのだが

そもそもなんでカレーが出来たのかわからない。


たしかにカレーだったらいいのにとは思って
Myおたまでぐるぐるとかき混ぜていたけど
思ってただけでカレーが出来る訳はない…



ん??

Myおたま…?



ふと召喚され勝手に調べられた際に
スキルなるものに
【おたま】と書いてあった事を思い出した


え?もしかしてスキルの【おたま】って
Myおたまさえあれば自分が思った料理に出来ちゃうって事!?


好きな料理作り放題、食べ放題じゃん!!


こちらの世界では香辛料が高価であり
調味料は塩、胡椒、砂糖などしかない事など
日本でなんでも買えば手に入っていた彩葉は知るはずもなく、

この時は自分のスキルなる物で
何作ろうかな~と悠長に喜んでいたのであった。



何がともあれ、彩葉のスキルによりお鍋いっぱいに作ってしまったカレーを
元々ポトフもどきに提供する予定だったセットパンと一緒にお客さんに提供する事になったのだが


初めてのカレーを見たお客さんの様子は様々で

料理を困惑した顔で見ている者
これは食べ物じゃないだろと怒る者
無言で食べ始める者

様々な人がいた。

そしてカレーを一口食べた人達は
その後がむしゃらに食べ始めたかと思うと

揃って
おかわりをしたのは言うまでもない。


そんなやり取りがおこなわれていたなど知らない彩葉は
キッチンの端の方でやっとのご飯を食べていた

パンがパサパサで硬いなと思いながらも
とても幸せそうにカレーを食べていた彩葉を
ジンさんが見ているとも知らずに。



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