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第十章 奴隷世界スレッジ編
第12話 奴隷と闘士3
しおりを挟む武闘場のまん中で、俺は長剣を手にした大柄な男と向きあっていた。
こちらが素手だからか、男は侮蔑したような目で俺を見ている。
そして、いきなり切りかかってきた。
それは異様なほど遅かった。
俺は難なく身体を開いてそれをかわす。
対戦相手は、一瞬「おや」という顔をしたが、手をとめず、さらに切りかかってくる。
俺はそれをかわしながら、違和感を感じていた。
いくら強くない相手とはいえ、その動きが見えすぎる。
繰りかえし振られる剣を避けながら、久しぶりに加護を確認しなければと考えていた。
度重なる空振りに、相手がヘロヘロになってきた。
俺は大ぶりな攻撃をかわすと、大外刈りの要領で男を投げる。
すでに立っているのもやっとだった男は、ドタリと地面に転がった。
ヤツが手から放した剣をゆっくり拾う。
「殺せー!」
「ぶっ殺せー!」
「首を切ってやれー」
首をうんぬんは、女性の声だ。まったくひどい文化だな、これは。
俺は手を伸ばし、剣で空を指す。
じゃ、点ちゃん、派手にいこうか。
『p(≧▽≦)q わーい、やっちゃうぞー!』
久しぶりの出番で、気合が入ってるな。
ドシュッ
そんな音を立て、空に上がった長剣は、上空で大輪の花火となった。
ドーン!
たまやー
『(*'▽')* たまやー』
呆然としている係員と観客に背を向け、俺は控室に戻った。
◇
「おう、早かったな」
加藤が俺の姿を見て、ほっとした顔をする。
一応、心配はしてくれたらしい。
彼の言葉に頷くと、武器の種類や戦いの形式について話しておく。
勇者であるヤツが後れをとることなどないだろうが、念のためだ。
ちょうど説明を終えた頃、係員が慌てて入ってきた。
「次の試合は、カトーとバジェスだ。
それから、シロー、お前も一緒に来てくれ」
係員は、なぜか俺も連れ、武闘場に向かった。
加藤とベテランっぽい傷だらけの人族が武器を選ぶと、そのまま武闘場に出る。
俺たち三人が戸口から出たとたん、すごい歓声が観客席から上がる。
「シロー、右手を挙げろ」
係員に言われ、手を挙げると、歓声がさらに大きくなった。
「おい、ボー、お前、何したんだ?」
「場を温めるために、ちょっとパフォーマンスしただけだが」
「まあ、いつものことだな」
加藤は、なぜかいい笑顔を見せる。
これだけ落ちついていれば、心配ないだろう。
係員が俺の手を引き、客席へ上がる扉を開く。
別の係員が、俺を上流階級が座っている区画に案内する。
最前列に、空席が並んでいるところがあり、今は一人だけ左手に包帯を巻いた男が座っていた。彼は俺の一つ前に試合をした闘士のようだ。
どうやら、勝者は、ここに座り観戦するらしい。
武闘場では、加藤と対戦者の戦いが始まるところだった。
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