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第十章 奴隷世界スレッジ編
第42話 大きなるものの国5
しおりを挟むおばば様に会った後、バルクに連れられ彼の家に戻った。
他の仲間が、チーダさんの案内で里の見学に出かけると、長の家は、俺とバルクの二人だけになった。
「バルクさん、おばば様は、どうしてあのようなお姿に?」
「二百年前に人族とドワーフ族がこの土地を攻めたことは、もう話しましたな。
そのおり、一人の少女が、大けがを負い死にかけましたのじゃ。
ところが、彼女が『神樹の巫女』であったことで、あの神樹様が受けいれてくださったそうですじゃ」
「おばば様は、二百年間、ずっとあのお姿で?」
「そういうことになりますじゃ」
木と一つとなり、二百年の時を過ごすとは、どんな思いだろう。
俺は、おばば様が村人から敬(うやま)われている理由が、少し分かった気がした。
◇
「この辺りが、『悪魔の石』を掘りだした場所だと言われておりますじゃ」
俺とバルク老は、巨人が乗れるように作った、大きなボードに乗っている。
落下防止のために、風防はつけてあるが、他には何も無い、シンプルなものだ。
「その『悪魔の石』とは、ドラゴンの力を失わせるものですね?」
「ええ、そうですじゃ。
我ら巨人族の力も弱まる。
そして、当時、祖先が移動に使うておった、ポポという魔獣の力も弱まったと伝えられておる」
やはり、ポポ、竜人、ドラゴン、巨人族には、何か共通点があるのだろう。
「それにしても、採掘したような跡は見えませんね」
透明にしたボードから見下ろせる地上は、木々に覆われていた。
「言い伝えによると、ほんのわずかな鉱脈があっただけらしいのじゃ。
恐らく、それが見つからぬ理由であろう」
なるほどねえ。
『(Pω・)ノ ご主人様ー、あったよー』
だけど、俺には点ちゃんがいるからね。
点ちゃん、じゃ、そこに印をつけてね。
『ぐ(^ω^) 了解』
森の一か所に、青く大きな矢印がつく。
そこに向け、ボードを降下させていく。
「ど、どうなっておるんじゃ?」
「長、スキルに関する事は、お話しできないんですよ。
それより、ここが、かつての採掘場ですよ」
「うむ、そうじゃろう。
身体が、やけに重く感じるぞ。
ワシは、動けそうにない。
シロー殿、ここは一人で行ってくれぬか」
「分かりました。
しばらく、空で待っていてください」
俺は、ボードから外へ出ると、それを再び上昇させておいた。
ブランが、俺の肩からぴょんと飛びおりる。
俺は彼女の後を追い、木立の中に踏みこんだ。
◇
それは、小さな丘の麓にあった。
一片二メートルほどの長方形の金属が丘の斜面に埋まっている。
下半分は、土砂に隠れているから、それを取りのぞけば、全貌がわかるかもしれない。
俺は、土魔術を使い、金属の周囲にある土砂を脇へ寄せた。
金属表面の汚れは、点魔法で取りのぞく。
それは、上下四メートル、左右二メートルほどのもので、二枚の黒い金属から出来ていると分かった。
二枚の金属を繋ぎあわせるように、白銀のプレートがはめ込まれている。
そこには、見覚えがある文字があった。
『聖樹の元に』
その文字と言葉には、見覚えがあった。エルファリア世界にある、ギルド本部で見たことがある。二百年前に活躍した英雄が残したものだった。
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