女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ

文字の大きさ
59 / 72

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』(59) 龍と豹。禁断の対決か?

しおりを挟む

呼び出された部屋に龍太が訪ねてみると、NOZOMIは穏やかな表情で目を向けてきた。奥村美沙子との激戦の疲れもあるが何か重要なことを言ってくるような気がして緊張した。

「龍太く、、いや、もう君付けは失礼かもしれないわね? お疲れ様でした。
うちの美沙子はどうだった? 結構手こずっていたようだけど...」

「いや、俺なんて君付けどころか呼び捨てでいいです(笑)。奥村さんは想像以上に凄いテクニックでした。あのしつこさには根負けするところでした。
正直、一年前の自分なら負けていたと思います。この一年で一番成長できたのは精神面だと思うのでどんな局面になっても冷静でいられました」

「そう、、。きっと、デビュー戦でうちの柳紅華に負けてドン底を味わったことが良かったのよね」

「そう思います...」

龍太はNOZOMIの話しに合わせながらも彼女が何を言いたいのか気になる。

「うちのエース候補、シルヴィアと美沙子が続けて倒されたんじゃ、いよいよ次は私の出番かな?って...」

「・・・・・・」

NOZOMIはそう言うと、意味ありげな表情でニヤッと笑った。
龍太はNOZOMIの次の言葉を待った。

「龍太君、シルヴィアを倒して70kg以下級王者、植松拓哉への挑戦券を得た
けど勝つ自信はあるの?」

龍太は植松拓哉の顔を思い出した。
MMA全階級を通じてパウンドフォーパウンド。無敵の絶対王者植松は冷静沈着な戦いぶりから『氷点下の男』と形容され対戦相手を震え上がらせる。
正直、龍太は今の自分の力では勝ちめは薄いと自分でも思っている。
(でも戦いは何が起こるか分からない)

「自信があるかないか?という問題じゃなくてチャンスですから...」

「龍太君はこの夏に21になるのよね?
私も28になるのよ。あと数戦して引退するから時間がない。アナタが植松さんに負ければ、私との試合は実現不可能と断言してもいいのよ」

「で、でも...」

「そこでお願いがあるの。植松拓哉戦を私に譲ってくれないかしら? 彼は女子と試合することは拒むと思うけど、最終的には受けると思う。彼は強い!
私だって勝つ自信はないけど...」

龍太は黙ってNOZOMIの顔を見た。

「その代わり、植松拓哉戦のあとは、龍太君の挑戦を考える。アナタは私と植松拓哉のどちらと戦いたいの?」

「ほ、本当ですか! 自分が今日まで頑張ってこられたのはNOZOMIさんといつか戦いたい一心からです」

「それだけ聞いて安心したわ。今年の大晦日の格闘技戦で私は植松拓哉と戦うための交渉する。そして、同大会で龍太君はある格闘家と戦ってもらう。
龍太君が勝てば、次は私と龍太君の試合が実現。これは約束するわ」

「は、はい! 願ってもないことです。そのある格闘家とは誰ですか?」

「それは、今は言えないわ...」


・・・・・・・・・・・・・・・・


堂島龍太が部屋を出ていって、30分後に今度は妹の堂島麻美が入ってきた。
麻美はNLFS所属であり、NOZOMIはズバリと告げようと思った。

「麻美、本当に強くなったわね?」

「まだまだです!」

「これは、鎌田さんもシルヴィアもトレーナー達も言ってるけど、アナタは既にNLFSでは私に次ぐ実力者。近い将来、私を抜くかもしれない。そこでもう一度聞きたいの。アナタがうちに入校してきた目的は何?」

「はい! NOZOMIさんと、勝っても負けてもいいから戦いたいからです。私はいつも天国の父に心の中でそう話しかけています。そのためには、ここで経験を、NOZOMIさんの近くで経験を積むのが一番と考えたからです」

NOZOMIはジッと麻美の目を見た。
かなり意志の強そうな目。彼女の眼光に流石のNOZOMIもゾッとした。

(女豹のように飛び掛かって来そうだ)

「分かりました。でも、それはアナタのお兄さんも同じ気持ちね。私はあと2戦で引退します」

「え! それじゃ、お兄ちゃんと私、両方の挑戦を受けてくれるんですか? 私を最初に戦わせて下さい!」

「ちょっと待って! そのうちの一戦は今年の大晦日に植松拓哉と戦いたいと思ってるの。そして、来年の大晦日をラストマッチにしたい!」

「ど、どういうことですか?」

「龍太君にも話したけど、来年の私のラストマッチで戦いたいなら、今年の大会である格闘家と戦って勝ち上がって来なさい!ってね。まだ、龍太君に当てる格闘家は決めてないけれど、これがどういう意味か分かるでしょ?」

「それって、ま、まさか...」

「言っておきます。アナタたち兄妹両方の挑戦を受けるわけにはいかない。この宿命のシュートマッチはそんな軽いもんじゃない。私は堂島兄妹どちらか一人の挑戦しか受けない」

流石の麻美も絶句した。

“ 禁断のシュートマッチ!”

そんな言葉が麻美の頭の中に過った。


・・・・・・・・・・・・・・・


それから一ヶ月後。

NLFSからある発表があり、それはある格闘技番組の中で中継された。

NOZOMIが発表する。

「総合格闘技界のパウンドフォーパウンドと言われる、70kg以下級絶対王者と言われる植松拓哉さんと、私の試合が今年の格闘技戦で行われることが正式に決まりました。それと、これは個人的なことですが、植松さんとの試合後はあと一試合、つまり来年の大晦日が私の引退試合になります」

NOZOMIとの対戦を植松はかなり渋ったようだが、マッチメイカーの沼田の執拗な説得に降参したようだ。

NOZOMIが話し終えると、同席していた堂島麻美がマイクを受け取った。

「NOZOMIさんの引退試合の相手に立候補します。それはNOZOMIさんも賛成してくれています。父源太郎に捧げる試合にしたい...」

テレビを観ていた龍太の顔が曇った。


「でも、それは私の兄も同じ気持ちだと思います。それが、私たち兄妹の悲願だからです。お互いにNOZOMIさんとの試合は譲れないと思います」

会場内がシーンとなった。


「私は兄の堂島龍太に挑戦したいと思います。NOZOMIさんへの挑戦権をかけて戦いたい!」


龍太が立ち上がった。

佐知子は悪夢を見る思いだ。


つづく。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!

コバひろ
大衆娯楽
格闘技を通して、男と女がリングで戦うことの意味、ジェンダー論を描きたく思います。また、それによる両者の苦悩、家族愛、宿命。 性差とは何か?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?

無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。 どっちが稼げるのだろう? いろんな方の想いがあるのかと・・・。 2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。 あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...