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第三章 チームお飾りの王太子妃、隣国奪還
39 民の想い
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【奪還合図部隊】
レオンたちの陽動作戦がスタートした頃。
旧ベルン国王都内、国王と王妃が消えた離宮では大変な騒ぎになっていた。
「な……なんだ、これは……」
「お、おい。大丈夫か?!」
朝になり、交代の兵が離宮の敷地内に足を踏み入れると、見張りの兵は全て捕縛されて倒れていた。交代で離宮にやってきた兵は大慌てだった。
「至急応援を呼べ!! 捕縛された皆を助けろ!! 急げ!!」
「はっ!!」
そして、この知らせは当然、旧ベルン国王城にいるイドレ国から派遣されて来た貴族にも報告された。
◆
「なんだと?! 見張りの兵は一体何をしていたのだ?! 皇帝陛下は『旧ベルン国の王と王妃を絶対に逃がすな、傷つけるな』とのご命令だ。もう王都内にはいないだろうが……まだそう遠くに行ってはいないはずだ。兵を動員して、絶対に探し出せ!!」
旧ベルン国を治める貴族は、国王と王妃が逃げたことを聞くと、顔を真っ赤にして怒鳴り散らしながら言った。
イドレ国の兵は、貴族に向かって頭を下げた後に言った。
「はっ!!」
そして足早に謁見の間を出たのだった。残された貴族は、奥歯を噛みながら眉を寄せて言った。
「昨夜から、スカーピリナ国の王といい、国王と王妃といい……何が起こっているんだ……」
その言葉は、広い謁見の間に消えていったのだった。
その後イドレ国の兵は、貴族の命を受けて、捜索隊を組織して王都を出発した。
イドレ国の兵は、すでにレオンたちのいる国境付近に兵を派遣し、ベルン国王、王妃の捜索隊を派遣していたので、王都内は、かなり兵の数が減っていたのだった。
◆
そして私は……。
ベルン王都を見下ろす小高い丘の上に立ち、捜索隊が馬で駆けてゆく様子を目撃していた。
ここに来る前に、旧ベルン国の騎士はすでにベルン奪還のために、配置についていることを確認している。
あとは……私は、イドレ国の兵に怯え、王都から少し離れた場所で息を潜めている民に、王家の存在を示すだけだ。
丘の上から王都を見ていた私に、ブラッドが声をかけた。
「クローディア殿。行こうか」
私は、頷くと目の前にそびえ立つ、近年完成したばかりの大聖堂を見上げた。
ここは、音楽を民に広げたいと願いを込めて、アンドリュー王子が建設した大聖堂だ。
大聖堂の裏には、大きな岩がまるで大聖堂に傘をさすように広がっている。この岩がピアノでいう響板のような役割をしており、ここで音楽を奏でれば、周囲数キロに渡って音楽を響かせることが出来る。つまり、王都はもちろん、多くの人に音楽を届けることが出来るのだ。
私は頷いて、大聖堂を開けたのだった。
静まり返った室内には、ステンドグラスの光が差し込み柔らかな光を教会の中に届けていた。
誰かが定期的に掃除をしているのか、室内はとても清潔に保たれていた。
そして、大聖堂の中央奥には、大型のトラックほどの大きさのパイプオルガンが置かれていた。
「凄い……美しい教会だわ……」
私が呟くと、アドラーとラウルが教会の入口に立った。
そして、ラウルが私の手を取って騎士の礼を取った。
「クローディア様、ここは誰一人として通しません」
私もラウルを見つめて「栄光を、お願いね。ラウル」と言ったのだった。ラウルが「はっ」と返事をして、私の手にキスをして微笑むと、今度はアドラーが口を開いた。
「クローディア様。お任せ下さい。誰にもあなたの邪魔はさせません」
そう言って、胸に片手を当てながら礼をするアドラーに向かって私も「お願いね、アドラー」と言ったのだった。アドラーが頷くと、私はブラッドを見ながら言った。
「行きましょう」
ブラッドは口角を上げると、「ああ」と言って、私と一緒に大聖堂に入ったのだった。
大聖堂の中はひんやりとしていて、厳粛な雰囲気に自然と背筋が伸びた。
静かに歩いて、私はパイプオルガンを近くで見た。
パイプオルガンは、ピアノと同じで鍵盤は一列だった。私の知っているパイプオルガンは二列や三列だったので、ピアノと同じでほっとした。
ブラッドは、ジルベルトに訊いていた通り、天井付近にある音を響かせる石板を開くように、石と木で出来た車のタイヤほどの大きさの釣竿のリールのような物を手で動かした。すると、天井付近の壁がスライドして開いた。
私は、パイプオルガンの前に座ると、音を確認した。
周囲に大きな音が響いだ。
どうやら、音はピアノと同じというわけにはいかないが、かなり類似している。
これながら問題ないだろう。
そして、私は鞄からアンドリュー王子が作曲した祈りの曲が書かれた楽譜を取り出した。
旧ベルン国内では、アンドリュー王子しかこの曲は弾けない。なぜならこの曲には臨時記号が多く含まれており、ピアノを練習していないと弾くことのが難しい。ベルン国に限らず、この世界でこの曲を奏でることが出来る人物はそう多くはないだろう。
実は現代でピアノを弾くのはかなり恵まれている。二十四調やアルペジオを整理して学べる練習方法が確立されているだけではなく、曲を弾くための練習曲も用意されている。だが、この世界にはその練習方法は存在しない。つまり、私は過去の天才たちのおかげで、ピアノに関してのみこの世界ではチート能力を持っていると言える。
私は偉大な音楽家に感謝をささげて、ブラッドを見た。
「ブラッド、いくわよ」
そう言って、ブラッドを見るとブラッドは静かに頷いたのだった。
「ああ」
そして、私はパイプオルガンの鍵盤に指を滑らせたのだった。
◆
周囲に、壮麗なパイプオルガンの音色が響き渡る。
その色は、どこまでもどこまでも渡ってゆくような音色だった。
旧ベルン王都内にも、この音色は届いていた。
「これは……なんだ?」
王都内で、警備をしていたイドレ国の兵は、動きを止めて、パイプオルガンの音色を探した。
そして、民がイドレ兵から隠れるためにいつくかの集落に分かれて身を寄せ合って、暮らす森の中でもこの音色は届いていた。
音楽を聴いた民は一斉に手を止め空を見上げた。
少年が、小屋の中にいる大人たちに音色が聞こえることを報告した。
「みんな、早く外に出て!!……王子様のピアノだよ!! 王子様、戻って来たんだ!!」
大人達は、少年の言葉に促されて外に出て耳に入る音色を聞き震えた。
「この曲は……確かにアンドリュー王子殿下の祈りの曲!! ……生きておられたのか!!」
「確かにこの曲は、王子殿下の曲だ!! 殿下は我々に呼びかけて下さっているのだ!!」
人々は、アンドリュー王子が生きていたことを喜んだ後に、口を開いた。
「王子殿下は我々にベルンの復活を伝えようとしているのかもしれない!!」
そんな中、一人の青年が息を切らせて声を上げた。
「副団長たちが、ベルン国の城門付近に集まっておられた!! これからベルン国を奪還されるそうだ!! 我々も行こう!! すぐ近くの川辺に隠れていた連中もすでに向かったそうだ」
「そうだな。いつもまでも怯えて暮らすのはごめんだ」
そしてずっと恐怖に震えて身を隠していた民も希望を持ち、立ち上がった。
こんな光景が王都の周囲で多く見られた。
――人々は、クローディアの奏でる音色に、希望を持ち立ち上がったのだった。
◆
一方、イドレ兵たちは「あの演奏を止めろ!!」と、数十人がクローディアの演奏を止めるために、教会を目指していた。あと数分で、イドレ兵が教会に到着する。
教会の前には、ラウルとアドラーがイドレ兵を迎え撃つために立ち塞がっていたのだった。
私はただ、曲を奏でることだけに集中していた。
他には何も聞こえなかった……。
レオンたちの陽動作戦がスタートした頃。
旧ベルン国王都内、国王と王妃が消えた離宮では大変な騒ぎになっていた。
「な……なんだ、これは……」
「お、おい。大丈夫か?!」
朝になり、交代の兵が離宮の敷地内に足を踏み入れると、見張りの兵は全て捕縛されて倒れていた。交代で離宮にやってきた兵は大慌てだった。
「至急応援を呼べ!! 捕縛された皆を助けろ!! 急げ!!」
「はっ!!」
そして、この知らせは当然、旧ベルン国王城にいるイドレ国から派遣されて来た貴族にも報告された。
◆
「なんだと?! 見張りの兵は一体何をしていたのだ?! 皇帝陛下は『旧ベルン国の王と王妃を絶対に逃がすな、傷つけるな』とのご命令だ。もう王都内にはいないだろうが……まだそう遠くに行ってはいないはずだ。兵を動員して、絶対に探し出せ!!」
旧ベルン国を治める貴族は、国王と王妃が逃げたことを聞くと、顔を真っ赤にして怒鳴り散らしながら言った。
イドレ国の兵は、貴族に向かって頭を下げた後に言った。
「はっ!!」
そして足早に謁見の間を出たのだった。残された貴族は、奥歯を噛みながら眉を寄せて言った。
「昨夜から、スカーピリナ国の王といい、国王と王妃といい……何が起こっているんだ……」
その言葉は、広い謁見の間に消えていったのだった。
その後イドレ国の兵は、貴族の命を受けて、捜索隊を組織して王都を出発した。
イドレ国の兵は、すでにレオンたちのいる国境付近に兵を派遣し、ベルン国王、王妃の捜索隊を派遣していたので、王都内は、かなり兵の数が減っていたのだった。
◆
そして私は……。
ベルン王都を見下ろす小高い丘の上に立ち、捜索隊が馬で駆けてゆく様子を目撃していた。
ここに来る前に、旧ベルン国の騎士はすでにベルン奪還のために、配置についていることを確認している。
あとは……私は、イドレ国の兵に怯え、王都から少し離れた場所で息を潜めている民に、王家の存在を示すだけだ。
丘の上から王都を見ていた私に、ブラッドが声をかけた。
「クローディア殿。行こうか」
私は、頷くと目の前にそびえ立つ、近年完成したばかりの大聖堂を見上げた。
ここは、音楽を民に広げたいと願いを込めて、アンドリュー王子が建設した大聖堂だ。
大聖堂の裏には、大きな岩がまるで大聖堂に傘をさすように広がっている。この岩がピアノでいう響板のような役割をしており、ここで音楽を奏でれば、周囲数キロに渡って音楽を響かせることが出来る。つまり、王都はもちろん、多くの人に音楽を届けることが出来るのだ。
私は頷いて、大聖堂を開けたのだった。
静まり返った室内には、ステンドグラスの光が差し込み柔らかな光を教会の中に届けていた。
誰かが定期的に掃除をしているのか、室内はとても清潔に保たれていた。
そして、大聖堂の中央奥には、大型のトラックほどの大きさのパイプオルガンが置かれていた。
「凄い……美しい教会だわ……」
私が呟くと、アドラーとラウルが教会の入口に立った。
そして、ラウルが私の手を取って騎士の礼を取った。
「クローディア様、ここは誰一人として通しません」
私もラウルを見つめて「栄光を、お願いね。ラウル」と言ったのだった。ラウルが「はっ」と返事をして、私の手にキスをして微笑むと、今度はアドラーが口を開いた。
「クローディア様。お任せ下さい。誰にもあなたの邪魔はさせません」
そう言って、胸に片手を当てながら礼をするアドラーに向かって私も「お願いね、アドラー」と言ったのだった。アドラーが頷くと、私はブラッドを見ながら言った。
「行きましょう」
ブラッドは口角を上げると、「ああ」と言って、私と一緒に大聖堂に入ったのだった。
大聖堂の中はひんやりとしていて、厳粛な雰囲気に自然と背筋が伸びた。
静かに歩いて、私はパイプオルガンを近くで見た。
パイプオルガンは、ピアノと同じで鍵盤は一列だった。私の知っているパイプオルガンは二列や三列だったので、ピアノと同じでほっとした。
ブラッドは、ジルベルトに訊いていた通り、天井付近にある音を響かせる石板を開くように、石と木で出来た車のタイヤほどの大きさの釣竿のリールのような物を手で動かした。すると、天井付近の壁がスライドして開いた。
私は、パイプオルガンの前に座ると、音を確認した。
周囲に大きな音が響いだ。
どうやら、音はピアノと同じというわけにはいかないが、かなり類似している。
これながら問題ないだろう。
そして、私は鞄からアンドリュー王子が作曲した祈りの曲が書かれた楽譜を取り出した。
旧ベルン国内では、アンドリュー王子しかこの曲は弾けない。なぜならこの曲には臨時記号が多く含まれており、ピアノを練習していないと弾くことのが難しい。ベルン国に限らず、この世界でこの曲を奏でることが出来る人物はそう多くはないだろう。
実は現代でピアノを弾くのはかなり恵まれている。二十四調やアルペジオを整理して学べる練習方法が確立されているだけではなく、曲を弾くための練習曲も用意されている。だが、この世界にはその練習方法は存在しない。つまり、私は過去の天才たちのおかげで、ピアノに関してのみこの世界ではチート能力を持っていると言える。
私は偉大な音楽家に感謝をささげて、ブラッドを見た。
「ブラッド、いくわよ」
そう言って、ブラッドを見るとブラッドは静かに頷いたのだった。
「ああ」
そして、私はパイプオルガンの鍵盤に指を滑らせたのだった。
◆
周囲に、壮麗なパイプオルガンの音色が響き渡る。
その色は、どこまでもどこまでも渡ってゆくような音色だった。
旧ベルン王都内にも、この音色は届いていた。
「これは……なんだ?」
王都内で、警備をしていたイドレ国の兵は、動きを止めて、パイプオルガンの音色を探した。
そして、民がイドレ兵から隠れるためにいつくかの集落に分かれて身を寄せ合って、暮らす森の中でもこの音色は届いていた。
音楽を聴いた民は一斉に手を止め空を見上げた。
少年が、小屋の中にいる大人たちに音色が聞こえることを報告した。
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大人達は、少年の言葉に促されて外に出て耳に入る音色を聞き震えた。
「この曲は……確かにアンドリュー王子殿下の祈りの曲!! ……生きておられたのか!!」
「確かにこの曲は、王子殿下の曲だ!! 殿下は我々に呼びかけて下さっているのだ!!」
人々は、アンドリュー王子が生きていたことを喜んだ後に、口を開いた。
「王子殿下は我々にベルンの復活を伝えようとしているのかもしれない!!」
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「副団長たちが、ベルン国の城門付近に集まっておられた!! これからベルン国を奪還されるそうだ!! 我々も行こう!! すぐ近くの川辺に隠れていた連中もすでに向かったそうだ」
「そうだな。いつもまでも怯えて暮らすのはごめんだ」
そしてずっと恐怖に震えて身を隠していた民も希望を持ち、立ち上がった。
こんな光景が王都の周囲で多く見られた。
――人々は、クローディアの奏でる音色に、希望を持ち立ち上がったのだった。
◆
一方、イドレ兵たちは「あの演奏を止めろ!!」と、数十人がクローディアの演奏を止めるために、教会を目指していた。あと数分で、イドレ兵が教会に到着する。
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