ざまぁ対象の悪役令嬢は穏やかな日常を所望します

たぬきち25番

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第四章 お飾りの王太子妃、郷愁の地にて

29 新たな計画

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 私が思いついたこと実行するために再び忙しい日々が訪れた。
 
「クローディア様のお手紙が無事にレオン陛下とアンドリュー王子に届けて貰えるように手配いたしました。明日にはアンドリュー王子に、そして明後日にはレオン陛下に届くそうです」

 書類仕事をしていた私にリリアが報告してくれた。
 本来なゆっくりと過ごす予定だったが、朝からブラッドたちと一日話し合いをしていた。

「ありがとう、リリア」

 私がお礼をいうと、書類を見ていたアドラーが声を上げた。

「クローディア様のお考えはいつも私の想像を超えておられますが、今回はいつも以上です。アンドリュー殿下への内容はともかく……レオン陛下が納得して下さるといいのですが……」

 アドラーの言葉にラウルも頷きながら言った。

「それは私も危惧しております。お恥ずかしいですが……私は未だにクローディア様の策を完全に理解したわけではありません……ですが、ご安心下さい。今度の自分のするべき動きはしっかりと理解していますので、その点は問題ありません」

 私はラウルを見ながら微笑んだ。

「それで充分よ」

 レオンのことを知らなければ今回の策は立てなかった。でも、レオンなら絶対に乗ってくるとの確信があったのだ。

「クローディア様、そろそろお休みになられた方がいいのではありませんか? サフィール閣下が……かなり燃えていたようですから、今後もお忙しいかもしれませんよ」

 リリアの言葉で、私は思いついた案を伝えた時のサフィールを思い出した。

 ――いささか不安はあるが……ディアの頼みだ!! 私に任せておけ!!

 確かにサフィールは燃えていた。すると、ラウルが困ったように言った。

「燃えていたのはサフィール閣下だけではありませんでしたよ。ディノフィールズ殿も『面白い……最高な策だ。これがベルンを救った人物の策か……こんな歴史的瞬間に立ち会えるなんて……絶対に実現させる』と呟いておいででした」

 ラウルの言葉を聞いてそういえば、サフィールだけではなく、ディノもとてもご機嫌だったのを思い出した。

 ディノ、そんなことを言っていたんだ……私はリリアとアドラーとラウルと顔を見合わせて微笑んだ後に言った。

「ふふ、それもそうね」

 私たちが笑っていた時だった。
 ノックの音がしてラウルが対応すると、サフィールが凄い勢いで入って来た。

「ディア!! 見つけたぞ!! 彼らが例の物を作ってくれるそうだ!!」

「え!? もう職人を見つけて下さったのですか?」

 私が声を上げるとサフィールが得意気に言った。

「ああ、なんたってディアの頼みだからな。ディノが先に言って話をしている。今から……行くか?」

「行くわ!!」

 私たちは今回の作戦に使う物を用意するために工房にお邪魔することにした。




「ドレス工房……?」

 私たちはサフィールに連れられてドレス工房にやってきた。

「ようこそ、クローディア様!! お会い出来て光栄です!!」
「なんてお美しい!!」
「可憐だ……我が国の大公閣下が我々のような者たちに頭を下げるのも頷けます……」

 工房に入ると、皆が私を歓迎してくれた。どうやらサフィールは私の想像以上に尽力してくれたようで、胸が熱くなりながらも笑顔であいさつをした。

「はじめまして、この度は私の無理なお願いを聞き届けて下さってありがとうございます」

 私があいさつをすると、一番奥に座っていた男性が立ち上がりこちらに向かって歩いて来た。
 男性はかなり体格がいい。とてもドレスを作る職人とは思えない。傭兵と言われた方が納得するような筋肉の鎧を身に着けたように見える壮年の男性が私の前にまで来て立ち止まった。

「俺はこの工房の責任者だ。ハイマ国の王太子妃殿。弟子にドレスを任せてくれて感謝する。あなたのドレスを作ったおかげで弟子は、国際的な評価も得て自信をつけた。最近のあいつの作るドレスはどれも出来が良くてな。俺たちも鼻が高い。元々才能はあったんだが……あいつは気が弱くて……相手の望む既存のドレスを作るばかりで自分で考えて作るって機会に恵まれなかった……あいつは、あなたにドレスを任されて、死ぬほど頭と身体を使ったと言って誇らし気に笑っていた」

 結婚式のドレス?
 あ、もしかして……私がまだジーニアスのことをよく知らなかった時に、記録書記官にドレスのことで何か断罪に繋がることを書かれないために、ドレスの全てをお任せした……あのデザイナーの方??
 まさか、あんな後ろ向きな決断が、こんな幸運な結果になるなんて……。
 私は驚きながらも慌てて姿勢を正しながら言った。
 
「あなたが、彼のお師匠様ですか……。そうとは知らずに、こちらこそ結婚式の時は、お弟子さんに大変お世話になりました。あのドレスは本当に素晴らしい物でした」

 ――私のような偽りの花嫁には身に余るほどに……。

 私は、その言葉を飲み込んで目の前の工房の責任者を見上げた。

「ははは。まぁ、俺たち職人同士でないと繋がりはわからないものだ。ただ職人同士なら南はダブラーン国から北はもう今はイドレ国になっちまった国々まで繋がってるがな。ああ、遅くなってすまない。俺の名は、マイルだ。大公子息閣下から話を聞いた時は、正直断ろうかと思ったが……。閣下に頭を下げられるし、ハイマの王太子妃の頼みって言うじゃねぇか。そいつを断ったとなれば、弟子に顔向けできないからな。それにのは得意だ。任せてくれ」

 マイルは白い歯を見せて笑ってくれた。私は、アドラーとラウルと顔を見合わせると笑顔でマイルを見ながら言った。

「よろしくお願いします!!」

 職人たちは、みんな私を見て腕を上げて「お任せを!!」と答えてくれたのだった。
 こうして私は目的の物を作るために、ダラパイス国の職人の手を借りれることになったのだった。





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