宮廷画家令嬢は契約結婚より肖像画にご執心です！～次期伯爵公の溺愛戦略～

苦しい思い

5

　しかもそうしてどうなるかと思えば、アマリアを促すような手つきで引き寄せ、廊下に踏み出し、歩きだしたのだ。

　アマリアは急なことに、なにも言えずに引かれて歩きだした。

　フレイディは奥へとつかつか歩いていく。

「外出しよう」

　フレイディはきっぱり言った。

　アマリアはわけがわからなくなってしまう。

　どうして外出なのか。

　そんな予定はなかった。

　それにフレイディは今、帰ってきたばかりだ。

　本当ならひと休みし、午後はゆっくり過ごすところだろうに。

「さ、アマリア。支度をしてきておくれ。そう遠くないから、普通のお出掛けの支度でいいよ。そうだな、黒っぽい服がいい」

　しかしフレイディの中では決定してしまったようだ。

　フレイディはアマリアにそう告げたあとは、声を張り上げる。

「ハリソン！　ハリソン！　少々出掛ける！」

　執事のハリソンを呼んだ。

　きっとすぐに出てくるだろう。

　アマリアはその前に、自室へ入れられてしまったけれど。

　こちらもすぐに呼ばれたハンナによって、服を着替えさせられて、簡単にメイク直しなどをされる。

　三十分ほどあとには、一体どうしたことか。

　馬車に乗せられ、レノスブル家を出発していたのである。