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終話ー5年ぶりに帰って来た幼なじみ(勇者)の様子がおかしい④
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ジークハルトの破壊的な笑顔にエディットは立ち尽くした。心臓は煩いほど鳴っている。エディットの知っている優しいだけのジークハルトはそこにはなく、どこか空想めいていた彼が、いきなり地に足をつけて現れたかのような。
「いたな。アルフレッド」
ジークハルトが低い声で言った。ピリリと空気が冷え辺りに緊張が走る。
エディットはジークハルトの冷めた瞳が見つめる先に視線を向けた。
(な、何?どうしたのジークハルト···)
ジークハルトの視線の先にいたのは1人の青年だ。青年はジークハルトに気付くと穏やかな笑みを浮かべた。
「ジークハルト!帰ってたのか!」
笑顔で駆け寄る青年と、温度差の激しい冷ややかな表情で立ち尽くすジークハルトを見て、まさかとは思ったが、エディットは走った。
「ちょ、ちょっと待って!」
青年は止まり、エディットに気付くと問いかけた。
「いたのか?エディット。ジークハルト帰ってたんだな」
「そ、そうなの!さっきね!久しぶりねアルフレッド」
エディットとアルフレッドが話し始めると、物凄い剣幕で睨みながらジークハルトが間に入った。
「···?おかえり?ジークハルト。なんか人相変わったな?」
頭にクエスチョンをたくさん抱えたアルフレッドは首を傾げる。
エディットはジークハルトを強引に引きずってアルフレッドから引き離した。
「ジークハルト。まさかとは思うけど、違うわよね?違うと言って」
「何のことだ?邪魔しないでくれないかエディット。僕はラスボスを退治しに来たんだ」
(いや、ラスボスって····!)
アルフレッド・ノイマン。彼は原作でエディットと結婚したら男だ。
驚くべき事にジークハルトの手が光り始め、その手に聖剣が現れた。
「ジークハルト?!ちょっと!嘘でしょ!」
よもや罪もない村民に聖剣を向けようとは。
(こ、こいつは···!)
エディットは拳を握りしめた。――が、エディットの拳は弱い。思い直して足を振り上げる。目の前で足を上げたものだから、ジークハルトは驚いて振り返った。スカートの中が見えたに違いない。
(私の恥じらいなんて気にしてられないわ)
油断している。間違いなくきまる。
エディットは固まったジークハルトの頭に、渾身の踵落としをお見舞いした。
❉❉❉❉❉❉
「ひどい。エディット」
そんな所も好きだけど。と呟くジークハルトを見据え、エディットはため息を付いた。
踵落としは見事に決まったが、気絶させるつもりだったのに痛がっているだけだ。
(仮にも勇者なのだから当然か)
ただの村人が勇者にダメージなど与えられるはずもない。
「どっちがひどいのよ。一般の人に聖剣を使おうなんて」
「僕だって聖剣を使おうとはしてない。脅そうと思っただけで」
(それを使うと言うのよ···)
一瞥すると、ジークハルトは項垂れた。
「はぁ。そんな目で見ないでくれ。僕の負けだ。どうすれば良いんだ」
「何が?」
「君とアルフレッドだ。ご、5年も我慢して会いに来て、君とアルフレッドが····口にもしたくないが、一緒になる姿なんて耐えられない」
「あのね、ジーク···」
エディットは驚いた。なんとジークハルトの目から涙が落ちた。
「ちょっと、泣いてるの?」
「泣いてない」
泣いてるじゃないか。エディットは込み上げて来た愛しさを抑えようとした時、はたと気付いた。
(そうか。もう抑えなくていいんだわ。私、ジークハルトを好きになっても良いんだ)
流れる涙を手で掬うと、藍色の前髪を上げて額にキスをした。
ジークハルトは呆然とエディットを見つめている。
「え?なに、今の」
エディットは軽く咳払いをした。
「こほん。えっと、べつに私、アルフレッドと結婚なんてしないわよ。好きでもないし」
ジークハルトの目が輝いた。
「えっ!本当?」
「うん」
「もしかして、僕が好き?」
じとりと睨む。
「調子に乗らないで。私は5年で貴方への気持ちを整理したの」
ジークハルトの肩が落ちる。
「なんだよ····期待させて···」
「でも――」
「まぁいいよ。整理したってことは、好きって気持ちはあったんだろ。もう一度好きになってもらう。···というか好きになってもらうしかない。僕はエディットとしか結婚する気はないし、エディットが誰がとくっつく所を見ていられる訳もないし···僕と結婚するしかなくないか?」
エディットが言いかけた言葉を、ジークハルトが引き継いだ。そのあとにぶつぶつと余計な事も呟いているが。
「ん?さっき何か言いかけた?」
覗き込むジークハルトを、エディットは慌てて押しのける。この表情を見られてはまずい。
言ってる事はおかしいのに、何をときめいているのだ私は。
エディットは思い知る。5年経っても、気持ちの整理など全く出来ていなかったことを。
❋終わり❋
「いたな。アルフレッド」
ジークハルトが低い声で言った。ピリリと空気が冷え辺りに緊張が走る。
エディットはジークハルトの冷めた瞳が見つめる先に視線を向けた。
(な、何?どうしたのジークハルト···)
ジークハルトの視線の先にいたのは1人の青年だ。青年はジークハルトに気付くと穏やかな笑みを浮かべた。
「ジークハルト!帰ってたのか!」
笑顔で駆け寄る青年と、温度差の激しい冷ややかな表情で立ち尽くすジークハルトを見て、まさかとは思ったが、エディットは走った。
「ちょ、ちょっと待って!」
青年は止まり、エディットに気付くと問いかけた。
「いたのか?エディット。ジークハルト帰ってたんだな」
「そ、そうなの!さっきね!久しぶりねアルフレッド」
エディットとアルフレッドが話し始めると、物凄い剣幕で睨みながらジークハルトが間に入った。
「···?おかえり?ジークハルト。なんか人相変わったな?」
頭にクエスチョンをたくさん抱えたアルフレッドは首を傾げる。
エディットはジークハルトを強引に引きずってアルフレッドから引き離した。
「ジークハルト。まさかとは思うけど、違うわよね?違うと言って」
「何のことだ?邪魔しないでくれないかエディット。僕はラスボスを退治しに来たんだ」
(いや、ラスボスって····!)
アルフレッド・ノイマン。彼は原作でエディットと結婚したら男だ。
驚くべき事にジークハルトの手が光り始め、その手に聖剣が現れた。
「ジークハルト?!ちょっと!嘘でしょ!」
よもや罪もない村民に聖剣を向けようとは。
(こ、こいつは···!)
エディットは拳を握りしめた。――が、エディットの拳は弱い。思い直して足を振り上げる。目の前で足を上げたものだから、ジークハルトは驚いて振り返った。スカートの中が見えたに違いない。
(私の恥じらいなんて気にしてられないわ)
油断している。間違いなくきまる。
エディットは固まったジークハルトの頭に、渾身の踵落としをお見舞いした。
❉❉❉❉❉❉
「ひどい。エディット」
そんな所も好きだけど。と呟くジークハルトを見据え、エディットはため息を付いた。
踵落としは見事に決まったが、気絶させるつもりだったのに痛がっているだけだ。
(仮にも勇者なのだから当然か)
ただの村人が勇者にダメージなど与えられるはずもない。
「どっちがひどいのよ。一般の人に聖剣を使おうなんて」
「僕だって聖剣を使おうとはしてない。脅そうと思っただけで」
(それを使うと言うのよ···)
一瞥すると、ジークハルトは項垂れた。
「はぁ。そんな目で見ないでくれ。僕の負けだ。どうすれば良いんだ」
「何が?」
「君とアルフレッドだ。ご、5年も我慢して会いに来て、君とアルフレッドが····口にもしたくないが、一緒になる姿なんて耐えられない」
「あのね、ジーク···」
エディットは驚いた。なんとジークハルトの目から涙が落ちた。
「ちょっと、泣いてるの?」
「泣いてない」
泣いてるじゃないか。エディットは込み上げて来た愛しさを抑えようとした時、はたと気付いた。
(そうか。もう抑えなくていいんだわ。私、ジークハルトを好きになっても良いんだ)
流れる涙を手で掬うと、藍色の前髪を上げて額にキスをした。
ジークハルトは呆然とエディットを見つめている。
「え?なに、今の」
エディットは軽く咳払いをした。
「こほん。えっと、べつに私、アルフレッドと結婚なんてしないわよ。好きでもないし」
ジークハルトの目が輝いた。
「えっ!本当?」
「うん」
「もしかして、僕が好き?」
じとりと睨む。
「調子に乗らないで。私は5年で貴方への気持ちを整理したの」
ジークハルトの肩が落ちる。
「なんだよ····期待させて···」
「でも――」
「まぁいいよ。整理したってことは、好きって気持ちはあったんだろ。もう一度好きになってもらう。···というか好きになってもらうしかない。僕はエディットとしか結婚する気はないし、エディットが誰がとくっつく所を見ていられる訳もないし···僕と結婚するしかなくないか?」
エディットが言いかけた言葉を、ジークハルトが引き継いだ。そのあとにぶつぶつと余計な事も呟いているが。
「ん?さっき何か言いかけた?」
覗き込むジークハルトを、エディットは慌てて押しのける。この表情を見られてはまずい。
言ってる事はおかしいのに、何をときめいているのだ私は。
エディットは思い知る。5年経っても、気持ちの整理など全く出来ていなかったことを。
❋終わり❋
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