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本編1

公爵令嬢に転生して男ばかりの学園に入学しました

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あれからしばらくの月日が流れた。

私はアイネと名付けられ、新たな世界で転生した。
公爵家であるカーティス家に生まれ、美男美女で仲睦まじい両親と優しいお兄様2人に囲まれて、幸せに暮らしている。

両親譲りのその美しい容姿は、まだ10代半ばと成長期ながらも皆の目を惹きつけた。
1年ほど前に前世や天界でのことを思い出したが、家族には秘密にしている。

今回は人並みに恋愛とか恋愛とか恋愛とか、繰り返すが恋愛とか、旅行とか楽しんで暮らしたい。
前世の記憶が国に有益だからとかいう理由で、高位貴族や王族と政略結婚とか命令されたら、旅行にも行けないし、自由もないから絶対に嫌だ。
幸い、うちの両親は好きな人と結婚してもいいよ、と言ってくれているので、普通の公爵令嬢として過ごして行こう。

この世界では、一般的には公爵令嬢は家庭教師に勉強やマナーを習い、学校に行くことは少ない。
それは、令嬢に求められる知識と学校で学ぶ知識が異なるためである。

令嬢は、将来女主人になった時に、様々な貴族家の夫人らと交流するお茶会や貴族家の夫人として当主の業務を補佐するために、様々なしきたりやマナー、国中の貴族家の名簿などを覚えておくことが基本的素養として求められる。
アイネにも同様に家庭教師がつけられたが、彼女は気づいてしまう。
全然出会いがないじゃない!と。

アイネは持ち前の粘り強さで新しい魔法を開発して、令嬢の基本的素養の教科書を理解した上で全て暗記することに成功した。
既に少しチートだが、元はあの世界で人類初の偉業を成した人神。
少しの勉強で、さらっとこの国一番の難関校の試験に合格し、晴れて学生生活をスタートさせることとなった。

アイネは学校に通えることに期待に胸を膨らませていた。
学園の男女比がおかしなことになっているとは知らずに。


国立ハイグラシア学園。

創立300年を超える由緒正しき学校で、創設者はかつての国王様。
卒業生は皆、輝かしい進路を約束され、その多くは国内外で大活躍している。
ほとんど男子であるが。

ハイグラシア学園は、身分や男女に関係なく、誰でも入学試験を受ける資格があるが、難易度が高すぎるため、受験者の0.1%ほどしか入学できない、もの凄く競争率が高い学校なのだ。
平民で入学する者も一部いるが、彼ら・彼女らは、勉強する機会がほとんどなかったにも関わらず少しの勉強で入試をクリアした、いわゆる天才だ。
中には教会に通って猛勉強していた平民もいるが、学生の多くは、子供の頃から英才教育を施された貴族家の男子がほとんどである。
ましてや貴族令嬢は女主人教育と合わせて学校に通おうと、さらに難関校を目指そうとするものはほとんどいない。


そんなことは知らないアイネは、友達と遊んだり、恋バナしたり、することを楽しみに鼻歌を歌いながら校門をくぐり、入学式の会場に向かった。
まずは普通に学生生活を楽しみたいから、女の子同士でつるみたいな。
同じクラスになる女の子たちとは仲良くなれるかしら?
アイネは前世は女子校出身だったので、友達と言ったら女の子だと自然に思ってしまっていた。

会場に入ると、、、、、
あれ?女の子がいない。

会場にはざっと1年生が200人くらいいると思うのだが、女の子が見当たらない。
なんで??


恋愛とか一旦なしで、まずはクラスの子達とお友達になりたいな。
アイネの前世には男性の同僚はいたが友人なんていなかった。
同僚にはビジネスライクな会話しかしなかったし、恋愛経験もないので、そもそも男性との接し方がわからない。

お兄様たちは可愛がってくれたけど、私が何をしなくてもお話ししてくれたし。
どうやって友達になったらいいのか、難しい顔で考え込んでいると、誰かが話しかけてきた。

「初めまして、子猫ちゃん!僕はレン。一応伯爵家の次男だよ。同じクラスになったし仲良くしてね!」
(子猫ちゃんって。。サムイ。軽い男なのかな?)
(一応、令嬢教育で学んだ通りに、丁寧に挨拶すればいいんだよね。)

「初めまして、アイネ・カーティスと申します。公爵家の末っ子でございますが、身分など気になさらず、仲良くしてくださいますようお願い致します。」
完璧なカーテシーと凛とした声、そしてその傾国の美貌に誰もが言葉を失って見惚れてしまった。

アイネの姿に見惚れたクラスメイトはそれから次々とアイネに挨拶し、アイネを囲んでいろいろなことを話し始めた。

ただ1人を除いては。


教室の隅の方で、アイネたちの会話には混ざらずに、静かに本を読んでいる生徒がいた。

(初日で緊張しているのかしら?せっかくクラスメイトになったのだし、仲良くしたいけど、なんて話しかけようかしら)

彼は男爵家の息子でビヨンドというお名前だそう。

髪がボサボサで洋服もどこかよれっとしている。

前髪が長く、メガネの度がきついのか、素顔がほとんど見えない。

(彼は人と話すのが苦手なのかしら?)

アイネが彼を見ていると、視線に気付いたのか、ビヨンドはすぐにさっと顔を隠して、逃げるように部屋から出ていった。


(ビヨンド視点)

俺はビヨンド。男爵家の息子で一応貴族だが、うちはかなり貧乏なので、生活は裕福な平民には劣る。
同じクラスに高位貴族の息子がいるとは思っていたが、貴族、それも貴族の令嬢がいるなんて聞いていない。
アイネ嬢といったか。栗色の艶やかな髪に深緑の瞳、この世のものとは思えないほど整った顔。

とても気になるが、気になるからこそ、俺は彼女に近づいてはいけない。
昔から俺は「魅了体質」で、無意識に魅了の魔法を使ってしまう。

そのせいで、昔は多くの令嬢に好意を持たれたが、令嬢同士が喧嘩をしてしまったり、ストーカーのようなことをする女子がたくさん出てしまい、酷い目に遭った。

友人の魔術師に、魅了を抑える魔道具眼鏡を使ってもらったけど、魅了の強さは俺の意志に比例する。
アイネ嬢に興味を持った状態で近づいてしまうと、彼女に強い魅了魔法を使ってしまうかもしれない。

公爵家のご令嬢にそんなことをすれば、俺の家はすぐに潰れるだろう。
だから絶対に彼女との接触は避けないといけない。

ビヨンドはひっそりと心に誓った。
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