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第六章
03
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ケントは本当にわからないんだ。
「ちょっとここに立ってみて?」
向かい合わせに立ってみる。一年生からケントとの身長差は縮まらなかった。当然僕の方が低い。当然?…自分で言っててこれは辛い言葉だね…。
「椅子じゃ高すぎるよね?」
そう言って、杖を振り半分くらいの高さに変えてしまう。
「これでいいかな?」
低くした椅子に僕を立たせ、もう一度向かい合わせに立つ。
「うん、これくらいかな」
僕はいつもと違う景色に戸惑いつつ、ケントの頭を撫でてみる。
「ちょっ、ジュリアン、やめてよ」
「だって、僕クラスで一番低いからこんなふうに人の頭を撫でたのって、妹のセシリアかイーノックの弟のマシューくらいしかないんだ。なんか、新鮮」
「じゃあ、いくよ」
ドキドキする。
見つめあって、ケントが僕の肩に手を置いた。顎をぐっと上に向け、背伸びする。目をつむり唇を少しすぼませてだんだん僕に迫ってくる。
「ジュリ!」
「ケント!」
ほぼ同時に発せられたそれぞれの名前に入口を見る。僕はバランスを崩し椅子から落ちかけたけど、アシュリーに抱きとめられた。
「アシュ、ありがとう」
ケントを見ると、どこからも落ちるわけないのにこちらもガイに抱きしめられている。
「「何をしてたんだ?」」
少し怖い声音で二人が同じことを聞く。
「ケントが…」
僕がその先の言葉を探しているとガイがパッとケントを離してしまった。
「すみません。取り乱してしまいました」
ケントが悲しそうに良いよと言って低くした椅子を元に戻した。
『何度か話しかけたんだけど返事ないから』
『ごめん…』
緊張で、ケントに意識が集中してて、アシュリーに返事し忘れてた。
「ドアをノックしても返事ないから、入ったんだ」
今度はケントにも、どうして突然入ってきたかを説明する。
「ごめん、俺…」
二人は少し距離を取り見つめ合う。
ケントはともすれば下を向いてしまう顔を懸命に上げて、ガイと向き合おうとする。ガイは誤りはしたものの入って来た時の激昂した感情をそのままにケントを見つめた。
「なんかさ…キスしそうに見えて慌てたんだけど。多分ガイも…そうだろ?」
ガイはケントを見たまま頷く。
『ケントはガイとキスしたいなって思ってて。でも、ガイはそうじゃないみたいって悩んでたんだ』
『でも、どうしてあんな格好で向き合ってたんだ?』
強い口調で言われたら困る。
『アシュ、怒らないで?』
『怒ってない。聞いてるんだよ?』
『うん。待ってないでケントからしたらって言ったら、したことないって言うんだ。だから、仕方がわからないって』
突然顔を覗き込まれて焦る。
『ち、違うよ!キスしようとしたわけじゃないから。触れるつもりはなかったんだ』
『ほんと?』
うんうんと激しく首を上下に振り返事する。
「違うよ!ジュリアンとキスなんかしない!」
僕は未だにアシュリーの腕の中で、ケントとガイは向かい合ってる。
「ケント、頑張って!」
チラリと僕を見て頷くと、ガイにずいっと近寄った。
「ガ、ガイ、あの…キ、キスはジュリアンとじゃなくて、ガイと、あの…」
「俺と?俺とならキス…しても良いと?」
真っ赤になってコクリと頷いた。俯いたまま顔を上げることができない。それ以上は何も言わず、動かないガイにケントは泣きそうだ。
「い、嫌なら……ごめん、変なこと言って」
少しずつ後退りしてガイと距離を取る……ことはできなかった。ガイがケントを抱きしめる。
「ケント」
顎を持ち、顔を上げさせると唇を合わせた。
一瞬触れて直ぐに離れた唇をケントがなぞるように指で触れる。
「嬉しい…ガイは嫌じゃない?」
硬直しているのか動かないガイにケントはだんだん不安になったようだ。
「無理させて…ごめん。俺は嬉しかったよ、ありがとう。もうこんなこと言わないか…っん…あっん」
その続きの言葉は言えなかった。
た、多分舌が入り込んでるんだろう。物凄く恥ずかしい。きっとファーストキスだ。目撃してしまった。人のキスシーンなんて初めて見た。申し訳なくて、アシュリーの胸に顔を隠した。
「ちょっとここに立ってみて?」
向かい合わせに立ってみる。一年生からケントとの身長差は縮まらなかった。当然僕の方が低い。当然?…自分で言っててこれは辛い言葉だね…。
「椅子じゃ高すぎるよね?」
そう言って、杖を振り半分くらいの高さに変えてしまう。
「これでいいかな?」
低くした椅子に僕を立たせ、もう一度向かい合わせに立つ。
「うん、これくらいかな」
僕はいつもと違う景色に戸惑いつつ、ケントの頭を撫でてみる。
「ちょっ、ジュリアン、やめてよ」
「だって、僕クラスで一番低いからこんなふうに人の頭を撫でたのって、妹のセシリアかイーノックの弟のマシューくらいしかないんだ。なんか、新鮮」
「じゃあ、いくよ」
ドキドキする。
見つめあって、ケントが僕の肩に手を置いた。顎をぐっと上に向け、背伸びする。目をつむり唇を少しすぼませてだんだん僕に迫ってくる。
「ジュリ!」
「ケント!」
ほぼ同時に発せられたそれぞれの名前に入口を見る。僕はバランスを崩し椅子から落ちかけたけど、アシュリーに抱きとめられた。
「アシュ、ありがとう」
ケントを見ると、どこからも落ちるわけないのにこちらもガイに抱きしめられている。
「「何をしてたんだ?」」
少し怖い声音で二人が同じことを聞く。
「ケントが…」
僕がその先の言葉を探しているとガイがパッとケントを離してしまった。
「すみません。取り乱してしまいました」
ケントが悲しそうに良いよと言って低くした椅子を元に戻した。
『何度か話しかけたんだけど返事ないから』
『ごめん…』
緊張で、ケントに意識が集中してて、アシュリーに返事し忘れてた。
「ドアをノックしても返事ないから、入ったんだ」
今度はケントにも、どうして突然入ってきたかを説明する。
「ごめん、俺…」
二人は少し距離を取り見つめ合う。
ケントはともすれば下を向いてしまう顔を懸命に上げて、ガイと向き合おうとする。ガイは誤りはしたものの入って来た時の激昂した感情をそのままにケントを見つめた。
「なんかさ…キスしそうに見えて慌てたんだけど。多分ガイも…そうだろ?」
ガイはケントを見たまま頷く。
『ケントはガイとキスしたいなって思ってて。でも、ガイはそうじゃないみたいって悩んでたんだ』
『でも、どうしてあんな格好で向き合ってたんだ?』
強い口調で言われたら困る。
『アシュ、怒らないで?』
『怒ってない。聞いてるんだよ?』
『うん。待ってないでケントからしたらって言ったら、したことないって言うんだ。だから、仕方がわからないって』
突然顔を覗き込まれて焦る。
『ち、違うよ!キスしようとしたわけじゃないから。触れるつもりはなかったんだ』
『ほんと?』
うんうんと激しく首を上下に振り返事する。
「違うよ!ジュリアンとキスなんかしない!」
僕は未だにアシュリーの腕の中で、ケントとガイは向かい合ってる。
「ケント、頑張って!」
チラリと僕を見て頷くと、ガイにずいっと近寄った。
「ガ、ガイ、あの…キ、キスはジュリアンとじゃなくて、ガイと、あの…」
「俺と?俺とならキス…しても良いと?」
真っ赤になってコクリと頷いた。俯いたまま顔を上げることができない。それ以上は何も言わず、動かないガイにケントは泣きそうだ。
「い、嫌なら……ごめん、変なこと言って」
少しずつ後退りしてガイと距離を取る……ことはできなかった。ガイがケントを抱きしめる。
「ケント」
顎を持ち、顔を上げさせると唇を合わせた。
一瞬触れて直ぐに離れた唇をケントがなぞるように指で触れる。
「嬉しい…ガイは嫌じゃない?」
硬直しているのか動かないガイにケントはだんだん不安になったようだ。
「無理させて…ごめん。俺は嬉しかったよ、ありがとう。もうこんなこと言わないか…っん…あっん」
その続きの言葉は言えなかった。
た、多分舌が入り込んでるんだろう。物凄く恥ずかしい。きっとファーストキスだ。目撃してしまった。人のキスシーンなんて初めて見た。申し訳なくて、アシュリーの胸に顔を隠した。
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