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平凡DKのおれがアレを授かりまして
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「さすがに言い過ぎ……大袈裟だって……思うんだけど……どうでしょう……?」
柚木が最大限控え目に批判すれば比良は首を左右に振った。
そんなひどいことしたかな?
黙ってたのは悪かったけど?
そもそも最初は合コンのお誘い断ったんだし?
学校で大体一緒に行動してる友達のこと突き放せなくて。
合コンにちょこっと参加したくらいで。
別にそこまで言わなくたって……。
「柚木は俺と付き合ってる自覚ある?」
柚木は……慌てて周囲に目をやった、通行人の誰かの耳に入らなかったか、自分達の関係を気取られていないか、あたふたした。
「柚木、答えて」
「ひ、比良くんっ、こんなところでそーいうのやめよ、周りに聞かれたら……」
柚木の焦りもどこ吹く風で比良は平然と続ける。
「自分がどれだけ想われてるか理解できてないんだな」
普段の穏やかな物腰と違う、凄味すら感じる目つき、低温の声色。
どこか他人事みたいに捉えて真剣味が欠けている柚木に、比良は、胸をかきむしる思いに駆られる。
十二月下旬から付き合い始めてまだ二ヶ月にも達していない交際期間。
学校生活に表立った変化があったかどうかと言えば、ほぼない。
これまでと同じように別々に行動し、休み時間も昼休みも一緒に過ごすことはなかった。
『おれと比良くん、属する世界が違うっていうか』
学校では以前から行動を共にしている、趣味だったり価値観だったりノリだったりが合う友達を優先した柚木。
比良は友人関係を大切にする柚木の姿勢を大切にし、時々話しかけるくらいに留め、深く立ち入るのを遠慮した。
その結果がこれだ。
「おいで」
立ち止まっていた比良は歩行を再開させる。
「もう遠慮しないから」
また腕を引かれ、比良にとっては大股歩きでも足の長さの違いにより小走りを余儀なくされる柚木、ただただ戸惑うしかなかった。
もう遠慮しないって、どーいうこと、比良くん……?
「ひ、比良くん、ここは……」
三十分以上小走りを強いられて連れてこられた先に柚木は赤面せざるをえなかった。
いわゆるラブホ街だった。
たまに擦れ違う男女カップルにまじまじと凝視されてヒィィ……となりつつも、いつになく無口な比良に導かれるがままやってきたわけだが。
「えっ?」
一軒のホテルに入ろうとした比良に驚愕した。
「ちょちょちょ、比良くん!?」
気恥ずかしいのも忘れて思わず大声で呼びかければ「外観がシンプルだからここにしよう」と事も無げに比良に言われた。
遠慮しないって。
そ、そ、そーいうこと……?
「ひ、ひ、比良くん、一端落ち着こ?」
比較的シンプルな外観のホテル前で約三十分振りに向かい合った二人。
「なんでいきなりラブホ……ですか? それとも、なんですか……比良くんはラブホに慣れっこですか……」
動揺しまくっている柚木の質問を比良は否定した。
「一度も利用したことない。友達に聞いたことがあるだけだ」
「そ、そっかぁ……」
「柚木はあるのか?」
「はぁ!? あるわけないじゃん!! 付き合ったことないのに!! 一人で行くわけないじゃん!?」
男子二人の痴話喧嘩かと、数少ない通行人にチラ見されて。
我に返った柚木は項垂れた。
「……いつもはおれんちなのに……」
聞き取りづらい小声を唯一鼓膜に拾い上げた比良は正直に答える。
「柚木の家まで我慢できない」
項垂れていたら血が上ってきた。
爆音なる鼓動が体中に響き渡って柚木は小さく息を呑む。
「それに土曜の午後は柚木のお母さんがいる」
「う……うん、まぁ、そうなんだけど……」
「行こう」
また腕をとられそうになって、柚木は、慌てて一歩退いた。
「あのさ! ほら、ラブホって監視カメラとかあるんでない? 男同士で行ったら、ひやかしだって注意されたりするんでない?」
「注意されたら出ればいい」
「それから! ほら、比良くんのジャージ、学校名バッチシのってるし……絶対やばいよ、それ、学校に連絡いくから……おたくのすっごいイケメン生徒が当ホテル利用してますよ、なんて苦情いくから……」
柚木にそう言われた比良は。
「あっ」
ショルダータイプのスポーツバッグを下ろし、首元まできっちり上げていたジッパーを全開にしたかと思うと、学校名の記されたジャージをその場で速やかに脱いだ。
……ジャージ脱いだだけなのに、比良くん、かっこいい……。
「行こう」
最早返す言葉もない柚木、比良に強めに腕をとられてラブホ初訪問に至るのだった……。
柚木が最大限控え目に批判すれば比良は首を左右に振った。
そんなひどいことしたかな?
黙ってたのは悪かったけど?
そもそも最初は合コンのお誘い断ったんだし?
学校で大体一緒に行動してる友達のこと突き放せなくて。
合コンにちょこっと参加したくらいで。
別にそこまで言わなくたって……。
「柚木は俺と付き合ってる自覚ある?」
柚木は……慌てて周囲に目をやった、通行人の誰かの耳に入らなかったか、自分達の関係を気取られていないか、あたふたした。
「柚木、答えて」
「ひ、比良くんっ、こんなところでそーいうのやめよ、周りに聞かれたら……」
柚木の焦りもどこ吹く風で比良は平然と続ける。
「自分がどれだけ想われてるか理解できてないんだな」
普段の穏やかな物腰と違う、凄味すら感じる目つき、低温の声色。
どこか他人事みたいに捉えて真剣味が欠けている柚木に、比良は、胸をかきむしる思いに駆られる。
十二月下旬から付き合い始めてまだ二ヶ月にも達していない交際期間。
学校生活に表立った変化があったかどうかと言えば、ほぼない。
これまでと同じように別々に行動し、休み時間も昼休みも一緒に過ごすことはなかった。
『おれと比良くん、属する世界が違うっていうか』
学校では以前から行動を共にしている、趣味だったり価値観だったりノリだったりが合う友達を優先した柚木。
比良は友人関係を大切にする柚木の姿勢を大切にし、時々話しかけるくらいに留め、深く立ち入るのを遠慮した。
その結果がこれだ。
「おいで」
立ち止まっていた比良は歩行を再開させる。
「もう遠慮しないから」
また腕を引かれ、比良にとっては大股歩きでも足の長さの違いにより小走りを余儀なくされる柚木、ただただ戸惑うしかなかった。
もう遠慮しないって、どーいうこと、比良くん……?
「ひ、比良くん、ここは……」
三十分以上小走りを強いられて連れてこられた先に柚木は赤面せざるをえなかった。
いわゆるラブホ街だった。
たまに擦れ違う男女カップルにまじまじと凝視されてヒィィ……となりつつも、いつになく無口な比良に導かれるがままやってきたわけだが。
「えっ?」
一軒のホテルに入ろうとした比良に驚愕した。
「ちょちょちょ、比良くん!?」
気恥ずかしいのも忘れて思わず大声で呼びかければ「外観がシンプルだからここにしよう」と事も無げに比良に言われた。
遠慮しないって。
そ、そ、そーいうこと……?
「ひ、ひ、比良くん、一端落ち着こ?」
比較的シンプルな外観のホテル前で約三十分振りに向かい合った二人。
「なんでいきなりラブホ……ですか? それとも、なんですか……比良くんはラブホに慣れっこですか……」
動揺しまくっている柚木の質問を比良は否定した。
「一度も利用したことない。友達に聞いたことがあるだけだ」
「そ、そっかぁ……」
「柚木はあるのか?」
「はぁ!? あるわけないじゃん!! 付き合ったことないのに!! 一人で行くわけないじゃん!?」
男子二人の痴話喧嘩かと、数少ない通行人にチラ見されて。
我に返った柚木は項垂れた。
「……いつもはおれんちなのに……」
聞き取りづらい小声を唯一鼓膜に拾い上げた比良は正直に答える。
「柚木の家まで我慢できない」
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爆音なる鼓動が体中に響き渡って柚木は小さく息を呑む。
「それに土曜の午後は柚木のお母さんがいる」
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「注意されたら出ればいい」
「それから! ほら、比良くんのジャージ、学校名バッチシのってるし……絶対やばいよ、それ、学校に連絡いくから……おたくのすっごいイケメン生徒が当ホテル利用してますよ、なんて苦情いくから……」
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「あっ」
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