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平凡吸血鬼のおれがアレを授かりまして
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「比良くんっ、大丈夫!!??」
慌てる柚木を他所に手の甲を引っ掛かれた張本人は平然としていた。
暴れるでもないカラスを地面にそっと下ろし、傷つけられた手を冷静に確認した。
「大丈夫。かすり傷だ」
本人の言う通り、滑らかな手の甲にできた傷は小さく浅く。
ただ血がちょっとだけ滲んでいた。
柚木はゴクリと喉を鳴らす。
食べかけだったコッペパンを思わずその場に取り落とした。
ガッガッガッガッ!!
「あ。柚木の食べかけ、食べられちゃったな」
……比良くんの血。
……血だぁぁぁぁぁ。
「柚木?」
よだれが出かかっていた柚木は我に返る。
心配そうに顔を覗き込んできた比良をぱっと仰ぎ見た。
「びっくりさせたみたいだな、ごめん」
「あ……いや、そんな……」
「ちょっとテンション上がって、柚木にもこの子にも悪いことした」
怪我をした比良に真摯に詫びられて、申し訳ないのと同時に、騒ぎ出した吸血鬼本能に鼓動がドッドッドッドッ加速して、理性と本能の板挟みになった柚木は口をパクパクさせた。
「柚木……本当に大丈夫か? 保健室に連れて行こうか?」
「ッ……ひ、比良くんこそ保健室行かなきゃ、治療してもらわないと」
「いや、俺は――」
「その子ばいきんッ……なんか悪い菌持ってるかもしれないし、万が一のこともあるし!! 念のため!? 行った方がいいと思う!!」
まくし立てるように早口で比良に告げ、柚木は、ズボンのポケットからタオルハンカチを取り出した。
うっすら血の滲む比良の左の手の甲をそっと、そっと、慎重に押さえた。
「柚木」
「弓を引く手だよ、大事にしないと」
「ありがとう」
「ッ……全国大会控えてるし、保健室でちゃんとケアしてもらお」
「柚木は付き添ってくれないのか?」
「あーーーーー……おれはもう帰るから、ごめん」
柚木に促されて比良は点々と明かりの点る校舎へと向かっていった。
残された柚木は……ソレを見下ろす。
タオルハンカチにほんのちょっとだけついた比良の血を。
ドッドッドッドッドッドッドッドッ
「ひ……比良くんの血……っ」
もう我慢できなかった。
カラスがそばにいるのも忘れてタオルハンカチに顔を突っ込んだ。
ッ……ッ……ッ……なにこれ!!!!!!
いい匂いッ……ッ……ッ……!!!!!!
変態よろしくタオルハンカチに顔を突っ込んでスーハースーハーする柚木。
比良の少量の血の芳しき香りに夢中になっていたらば。
「……柚木……?」
柚木は見事なまでにピシッとかたまった。
ぎこちなくタオルハンカチから顔を上げ、何故だかすぐに戻ってきた比良と目が合うと、心臓が止まりかけた。
「やっぱり、柚木も相当ショック受けてたみたいだから、一緒に保健室に連れて行こうと思って……それ……俺の血がついたタオルハンカチか……?」
あかーーーーーーーーーーーん。
もうあかーーーーーーーーーーーーん。
絶対あかん状況にもはや弁解の余地もなく。
柚木はただただ立ち尽くした。
たった今まで得ていた興奮も忘れて、足元から凍っていくような感覚に身も心も蝕まれた。
ごめん、ごめんね、比良くん。
謝りたくても声が出てこない。
冷たくて怖くて。
痛い。
なんか痛い。
いや、めちゃくちゃ痛い……。
「柚木」
比良に呼びかけられて柚木はようやく忘れていた呼吸を取り戻す。
「噛まれてる」
柚木は頻りに瞬きした。
そして、やっと、気がついた。
くそでかカラスが自分の足首に噛みついていることに。
「わッ……わぁぁぁああ……!!!!」
道理で痛いわけだ、思いっきり噛みつかれているのだから当たり前だ。
「グワアッ!!!!!」
柚木の足元からカラスは飛び立つ。
ばっさばっさと大きな翼を翻し、あっという間に夜空と同化して、柚木と比良の視界から消え去った。
「柚木、大丈夫か……?」
心配してくる比良の顔を見れずに、半泣き柚木は「痛い痛い……っ」と情けなく喚きながら、その場から全速力で走り去った。
……なんて日だ。
……吸血鬼もどきの変態行為を比良くんに見られて、くそでかカラスには足首噛まれて。
……くそでか凶暴カラスのばい菌できっと死んじゃう、おれ……。
しかし柚木は死ななかった。
カラスに噛みつかれた足首も、なかなかな痛みに反して大した傷ではなかった。
ただし……授かった。
「……吸血鬼もどきの上、女の子もどきになっちゃうなんて、なんて日だぁ……」
慌てる柚木を他所に手の甲を引っ掛かれた張本人は平然としていた。
暴れるでもないカラスを地面にそっと下ろし、傷つけられた手を冷静に確認した。
「大丈夫。かすり傷だ」
本人の言う通り、滑らかな手の甲にできた傷は小さく浅く。
ただ血がちょっとだけ滲んでいた。
柚木はゴクリと喉を鳴らす。
食べかけだったコッペパンを思わずその場に取り落とした。
ガッガッガッガッ!!
「あ。柚木の食べかけ、食べられちゃったな」
……比良くんの血。
……血だぁぁぁぁぁ。
「柚木?」
よだれが出かかっていた柚木は我に返る。
心配そうに顔を覗き込んできた比良をぱっと仰ぎ見た。
「びっくりさせたみたいだな、ごめん」
「あ……いや、そんな……」
「ちょっとテンション上がって、柚木にもこの子にも悪いことした」
怪我をした比良に真摯に詫びられて、申し訳ないのと同時に、騒ぎ出した吸血鬼本能に鼓動がドッドッドッドッ加速して、理性と本能の板挟みになった柚木は口をパクパクさせた。
「柚木……本当に大丈夫か? 保健室に連れて行こうか?」
「ッ……ひ、比良くんこそ保健室行かなきゃ、治療してもらわないと」
「いや、俺は――」
「その子ばいきんッ……なんか悪い菌持ってるかもしれないし、万が一のこともあるし!! 念のため!? 行った方がいいと思う!!」
まくし立てるように早口で比良に告げ、柚木は、ズボンのポケットからタオルハンカチを取り出した。
うっすら血の滲む比良の左の手の甲をそっと、そっと、慎重に押さえた。
「柚木」
「弓を引く手だよ、大事にしないと」
「ありがとう」
「ッ……全国大会控えてるし、保健室でちゃんとケアしてもらお」
「柚木は付き添ってくれないのか?」
「あーーーーー……おれはもう帰るから、ごめん」
柚木に促されて比良は点々と明かりの点る校舎へと向かっていった。
残された柚木は……ソレを見下ろす。
タオルハンカチにほんのちょっとだけついた比良の血を。
ドッドッドッドッドッドッドッドッ
「ひ……比良くんの血……っ」
もう我慢できなかった。
カラスがそばにいるのも忘れてタオルハンカチに顔を突っ込んだ。
ッ……ッ……ッ……なにこれ!!!!!!
いい匂いッ……ッ……ッ……!!!!!!
変態よろしくタオルハンカチに顔を突っ込んでスーハースーハーする柚木。
比良の少量の血の芳しき香りに夢中になっていたらば。
「……柚木……?」
柚木は見事なまでにピシッとかたまった。
ぎこちなくタオルハンカチから顔を上げ、何故だかすぐに戻ってきた比良と目が合うと、心臓が止まりかけた。
「やっぱり、柚木も相当ショック受けてたみたいだから、一緒に保健室に連れて行こうと思って……それ……俺の血がついたタオルハンカチか……?」
あかーーーーーーーーーーーん。
もうあかーーーーーーーーーーーーん。
絶対あかん状況にもはや弁解の余地もなく。
柚木はただただ立ち尽くした。
たった今まで得ていた興奮も忘れて、足元から凍っていくような感覚に身も心も蝕まれた。
ごめん、ごめんね、比良くん。
謝りたくても声が出てこない。
冷たくて怖くて。
痛い。
なんか痛い。
いや、めちゃくちゃ痛い……。
「柚木」
比良に呼びかけられて柚木はようやく忘れていた呼吸を取り戻す。
「噛まれてる」
柚木は頻りに瞬きした。
そして、やっと、気がついた。
くそでかカラスが自分の足首に噛みついていることに。
「わッ……わぁぁぁああ……!!!!」
道理で痛いわけだ、思いっきり噛みつかれているのだから当たり前だ。
「グワアッ!!!!!」
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しかし柚木は死ななかった。
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