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先生ver.
運命の人
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今回の冬は体は寒かったけど、ココロは温かい冬だった――
奈々に会いたい・・・
色んな人に奈々について尋ねても誰も奈々の居場所は知らなかった
本当に誰も知り合いがいない場所で
一人で奈々が念願の教師に向けて頑張っているかと思うと
俺も仕事を頑張らなきゃって思えた
案外そばにいるかもしれないし、遠くにいるかわからないけど
自分を励ましているのは“奈々”の存在だった
「あれ…?」
今日は母親の月命日
いつもは月命日はお墓参りに行けなかったが、今日は休みをもらえたからお墓参りにきた
「健君?」
「先生…どうして…」
「今日は君のお母さんの月命日だから…お墓参りにね。」
「そうだったんですか…ありがとうございます。」
「最近どうだい?」
「…元気にやっています。色々あったけど…」
「…本当色々とあったようだね。」
先生は以前ははめていた薬指の指輪がなくなっているのを見ながら、それ以上は深く聞いてこなかった。
「百合の花…」
すでに母親が好きだった百合の花が飾られていた
「先生が持ってきてくださったんですか?」
「いや…これは私じゃないよ。」
「じゃあ誰が…」
「…もしかして…」
「そうだよ。君のお父さんだ。」
「いや…まさか…」
家にだってロクに帰ってこなかった父親が月命日にお墓参りにくるなんて…
「君のお父さんとさっきすれ違ったんだ。だから君のお父さんだよ。」
「…」
先生が言ってもどこか信じられない…どうして今頃になってこんなことをする?
「君のお父さんはお父さんなりにお母さんを愛していたんだろうね…失ってからきっと気づいたんだよ。私もそうだ…」
「え…?」
「実は俺たち三人は大学時代の友達で…君のお母さんがお父さんと結婚してから自分の気持ちに気づいたよ。」
「先生…」
「私はそれからも君のお母さんには気持ちは伝えずに友達としていつも相談に乗ってた。だけど彼女が亡くなって…後悔したよ。大学のとき伝えればよかったって。今じゃ伝えたって言葉も、顔も見れないんだ。」
“ピリリリッ…”
「あ、すいません…はい。」
「あ、綾部!?久しぶり~元気してるか!?」
「川端…?」
「今ちょっと時間いい?」
「あ…」
今先生と大事な話をしていたし…この言い方は長くなりそうだ。
「悪い今ちょっと…あとでかけ直す。」
川端がああいう言い方をするときは大体付き合っている彼女の相談だ
通話を切ろうとした瞬間、思いがけない名前が電話の向こうから聞こえた――
「早瀬の――」
「え!?」
先生や母親に悪かったけど
久しぶりに人から聞いた奈々の名前に反応せずにはいられなかった
「俺会ったんだ、九州の高校で!」
「……え?」
「たまたまだったんだけど、練習試合で訪れた高校に早瀬がいて、高校の教師していたよ~お前と同じ白衣にメガネ姿でさ…高校のときとは別人だったよ~お前早瀬のこと思ってたから教えておこうと思ってさ。」
「奈々は今どこの高校に!?」
「え…奈々ってお前…奥さんは?」
「別れたんだ…実は奈々とは職場も同じで奥さんと友達だったから再会したんだ。」
「え…え~!!!」
そりゃびっくりするだろう
携帯をあてていた耳が痛くなるぐらい川端は驚いていた
「俺そんなの知らなくて、早瀬に高校のときのこと謝ってしまったよ~」
「高校のとき?」
「ほら、職員室でさ、お前たち両思いだったのに『生徒に手を出すなんて犯罪』なんて言ったから…あぁ、やっぱりあの時あんなこと言わなければお前たちうまくいっていたのに!!」
「川端…それは川端が悪いんじゃない。それにあの頃の俺たちじゃうまくいかなかったと思う。」
「綾部…早瀬と同じこと言うんだな。」
奈々も同じことを思っていたのか…
そうだ、きっと今の俺たちならうまくいく気がする――
奈々に会いたい・・・
色んな人に奈々について尋ねても誰も奈々の居場所は知らなかった
本当に誰も知り合いがいない場所で
一人で奈々が念願の教師に向けて頑張っているかと思うと
俺も仕事を頑張らなきゃって思えた
案外そばにいるかもしれないし、遠くにいるかわからないけど
自分を励ましているのは“奈々”の存在だった
「あれ…?」
今日は母親の月命日
いつもは月命日はお墓参りに行けなかったが、今日は休みをもらえたからお墓参りにきた
「健君?」
「先生…どうして…」
「今日は君のお母さんの月命日だから…お墓参りにね。」
「そうだったんですか…ありがとうございます。」
「最近どうだい?」
「…元気にやっています。色々あったけど…」
「…本当色々とあったようだね。」
先生は以前ははめていた薬指の指輪がなくなっているのを見ながら、それ以上は深く聞いてこなかった。
「百合の花…」
すでに母親が好きだった百合の花が飾られていた
「先生が持ってきてくださったんですか?」
「いや…これは私じゃないよ。」
「じゃあ誰が…」
「…もしかして…」
「そうだよ。君のお父さんだ。」
「いや…まさか…」
家にだってロクに帰ってこなかった父親が月命日にお墓参りにくるなんて…
「君のお父さんとさっきすれ違ったんだ。だから君のお父さんだよ。」
「…」
先生が言ってもどこか信じられない…どうして今頃になってこんなことをする?
「君のお父さんはお父さんなりにお母さんを愛していたんだろうね…失ってからきっと気づいたんだよ。私もそうだ…」
「え…?」
「実は俺たち三人は大学時代の友達で…君のお母さんがお父さんと結婚してから自分の気持ちに気づいたよ。」
「先生…」
「私はそれからも君のお母さんには気持ちは伝えずに友達としていつも相談に乗ってた。だけど彼女が亡くなって…後悔したよ。大学のとき伝えればよかったって。今じゃ伝えたって言葉も、顔も見れないんだ。」
“ピリリリッ…”
「あ、すいません…はい。」
「あ、綾部!?久しぶり~元気してるか!?」
「川端…?」
「今ちょっと時間いい?」
「あ…」
今先生と大事な話をしていたし…この言い方は長くなりそうだ。
「悪い今ちょっと…あとでかけ直す。」
川端がああいう言い方をするときは大体付き合っている彼女の相談だ
通話を切ろうとした瞬間、思いがけない名前が電話の向こうから聞こえた――
「早瀬の――」
「え!?」
先生や母親に悪かったけど
久しぶりに人から聞いた奈々の名前に反応せずにはいられなかった
「俺会ったんだ、九州の高校で!」
「……え?」
「たまたまだったんだけど、練習試合で訪れた高校に早瀬がいて、高校の教師していたよ~お前と同じ白衣にメガネ姿でさ…高校のときとは別人だったよ~お前早瀬のこと思ってたから教えておこうと思ってさ。」
「奈々は今どこの高校に!?」
「え…奈々ってお前…奥さんは?」
「別れたんだ…実は奈々とは職場も同じで奥さんと友達だったから再会したんだ。」
「え…え~!!!」
そりゃびっくりするだろう
携帯をあてていた耳が痛くなるぐらい川端は驚いていた
「俺そんなの知らなくて、早瀬に高校のときのこと謝ってしまったよ~」
「高校のとき?」
「ほら、職員室でさ、お前たち両思いだったのに『生徒に手を出すなんて犯罪』なんて言ったから…あぁ、やっぱりあの時あんなこと言わなければお前たちうまくいっていたのに!!」
「川端…それは川端が悪いんじゃない。それにあの頃の俺たちじゃうまくいかなかったと思う。」
「綾部…早瀬と同じこと言うんだな。」
奈々も同じことを思っていたのか…
そうだ、きっと今の俺たちならうまくいく気がする――
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