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25. 自覚するんです

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 その後は、当たり障りのない話題……というかレイドリークス様も読書が趣味で意外にも、恋愛小説なども読まれるんだとか! 知らない題名の面白そうな本を教えてもらって、びっくりしました。
 思いのほか楽しい時間を過ごしてから、各々おのおのクラスへと戻ります。
 途中、私は耳についたイヤーカフを取り外すと箱に大事に、仕舞い込みました。
 そのまま一旦校舎外れのトイレへと寄ります。
 用を足し、手を洗っていると人影を感じたのでお花摘みかしら、と思った途端襲撃しゅうげきされました。
 狭い中で応戦します。
 なかなか手練てだれでしたが私もむしゃくしゃしていたのでつい、床に沈めてしまう程やりすぎ狼狽うろたえてしまいました。

 歩けるくらいで止めておかないと、後始末が大変なのに!

 担ごうと思ったところで、誰かが来る気配を感じます。
 時間が足らなかったのでとりあえず個室に押し込め、何食わぬ顔でそこから離れることにしました。
 やり返してもちっともスカッとせず、もやもやの森は私の眼前にまた現れ、ただただ時間が流れるのが苦痛です。
 せっかくの誕生日、いつもなら成人までのカウントダウンだと、楽しんでいたのに……。

 ですから私は気付くのが遅れてしまいました。
 これが、これからおとずれる日々にとってとても重要な出来事だったのだ、と――――。



 余計な用事のせいで、少しクラスに遅れて戻ると四時限目のテキストや細々こまごました物がなくなっていました。
 思わず、ため息がつきたくなってしまいます。
 いつもなら気にしない些細なことも、続けば積み重なり、その重さは押しつぶすに足るものになる……そんな事例を体感してしまい、もやもやが私の体にのしかかっていて。
 払拭ふっしょくしたくてもしきれず、どんよりとした心のまま隣のクラスメイトに授業中の手助けを頼むことにしたのでした。

 放課後。
 流石に何度も買い足すとお父様にばれてしまうので……一応は盗られたものを探すことにしました。
 茂みやゴミ箱の中などを重点的に探しつつ、大本命に向けて進んでいきます。
 そう、おおよその見当はついているのです。
 今は他の可能性を潰すための作業です、万が一も十分あり得ますからね!
 けれど今日は本命が当たりのようで、例のご令嬢が落ちた池の辺りまで来ると、テキストがぷかぷかと、春の日差しの中気持ちよさそうに浮かんでいるのが見えました。

 これは他の物も沈んでますね……確実に。
 私は、やれやれ、と思いながら上着と靴と靴下を脱ぎ、少し肌寒く感じるだろう池の水へとその身を投入するのでした。

 テキストを拾い、他の細々した物を手探てさぐりで探しますが透明度がない中なので少々難しく。
 段々宝探しのように感じてきたので、さぐることに熱中してしまっています。
 そろそろ諦めよう、そう思い始めた時。

「ルル!!!!」

 レイドリークス様の私を呼ぶ声が、聞こえました。
 何故――。

「ずぶ濡れじゃないか! ほら、この手に捕まって!」

 彼が私の手を掴んで、池から引き上げてくれます。
 話をきくと、レイドリークス様は放課後図書館デートをしようと私を誘いにきていたらしく、友人に不在であるが帰宅はしていないというのと共に、紛失の件も聞いたようでした。
 ぐるぐるしていて口止めを忘れていました……見習いの風上にもおけないです、ね。
 大人しく引き上げてもらうがままになっていると、レイドリークス様は突然真っ赤になるなり自分の上着を脱ぎ、こちらに突き出してきます。
 私が不思議がっていると、こちらを見ずに口を開きました。

「…………シャツが、その、透けていて……だね……」

 その言葉に自分の胸元を見ると確かに下着が透けています。
 ……下着が、透け……「ひゃぁっ」
 顔を真っ赤にして胸元で腕を交差し隠しながら思わずうずくまりました。

「見てない! いや、目に入りはしたが!!」

 レイドリークス様はそう言いながらも同じようにしゃがんで目線を合わせ、私の背中に上着をかけてくれながら、さらに続けます。

「……見るなら、ちゃんとルルーシアの想いをもらって、許可を君の口から聞きたいから」

 言うなり少し気恥ずかしそうに、レイドリークス様は微笑みました。


 ――すき――


「春とはいえそろそろ時間的に冷えてくる頃合いだ。無くなった物は残念だが、君の方が大事だよ、病み上がりだろう?」


 レイドリークス様が、好き――


「俺はまだ学生だから魔法が使えない。医務室へ行って乾かしてもらおうと思うけれど、いいかな?」

 レイドリークス様は、私が裸足なのを見てとるとしゃがんだまま後ろを向き、上着と靴類は濡れないよう護衛に運ばせるからルルは背中に乗って? と先程の言葉に続けてきます。
 混乱したまま、そろりと背中に手をやると、彼の温もりが手に伝わってきて……一瞬だけ躊躇ためらって離しけどもう一度両肩に手を乗せ、体を預けました。

 ……泣きそうになっているこの顔に、気づかないで……

 と、祈りながら――。
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