40 / 81
40. ぶつかるんです
しおりを挟む
翌朝、家を出る時に寝坊した弟達に見送られ家を出……ようとした時に、ふと気づいたので尋ねます。
「もしかして、三人とも背が伸びてます?」
「え、当たり前だろ? 何言ってんの姉貴」
驚いているのは十二歳のエルレードです。
「姉上、俺達成長期だよ?」
少し呆れつつも優しく笑って言ってくれているのは弟の中で年長十五歳、ガリューシュです。
「気付いてくれた? 姉上、この前から僕三センチも伸びたんだよ!」
嬉しそうに報告してくれたのは末っ子のマークスです。
ガリューシュに抜かれて久しいですが、エルレードにもどうやら抜かされてしまっています。
男の子の成長期たるや、恐ろしいものがありますね。
私も欲しかった、成長期……。
朝から同じ家族間でのちょっとした理不尽を感じながら、家を後にしました。
学校に着くと、もう習慣になってしまった上階の人影を確認します。
今日もいません。
そこでふと、違和感を感じました。
いつの間にやらいじめと名のつくものが鳴りを潜めているのです。
――――いつ、から……?
私は慌てて記憶の中を探ります。
あの時はあった、あの時点でもこうされた――
そしてあの時です、あの時を境に一切のいじめは執り行われなくなっている――。
私は、思い違いをしていたのかもしれません。
これまでのいじめと刺客の送り込みは同一人物の意思によってなされているかもしれない。
――そして刺客には多分二種類いる――。
その可能性に思い当たり、胸の内の中だけで御三方に疑ってしまって申し訳ございませんでしたと、謝りました。
つい考えすぎていたのでしょう、歩きながらだったので前方の人にぶつかってしまいます。
「ぶひぇっ! す、すみません」
「いや、よい。怪我はなかったかな?」
うう。
まさかの第三皇子です。
よく見ると彼の背中越しにレイドリークス様とローゼリア様のお姿も。
どうやら兄弟で言葉を交わしていたようです。
「怪我はございません、お気遣いありがとうございます」
とっとと逃げてしまいたく、それでは失礼と言いかけたところで、腕を掴まれます。
どうしてこうも見境がないのでしょうか、心の中で睨みつけながら相手を見ると、その眼にはどこか仄暗い愉悦が映し出されています。
瞬間背筋がビリビリしました。
ここに居てはいけない。
そう思ったのが遅すぎました、第三皇子は取ったままの手を持ち上げると自身の口元に寄せ、チュッというリップ音と共に周りに告げるように私に話しかけました。
「おはようルルーシア。婚約してすぐ会いにきてくれて嬉しいよ」
その声には、ただ可笑しみだけがこもっていて。
第三皇子の背中越しに少し驚いたレイドリークス様の顔と、ローゼリア様の薄く微笑んだ瞳が……逃避しかけた私に現実だと伝えてくるのでした。
「もしかして、三人とも背が伸びてます?」
「え、当たり前だろ? 何言ってんの姉貴」
驚いているのは十二歳のエルレードです。
「姉上、俺達成長期だよ?」
少し呆れつつも優しく笑って言ってくれているのは弟の中で年長十五歳、ガリューシュです。
「気付いてくれた? 姉上、この前から僕三センチも伸びたんだよ!」
嬉しそうに報告してくれたのは末っ子のマークスです。
ガリューシュに抜かれて久しいですが、エルレードにもどうやら抜かされてしまっています。
男の子の成長期たるや、恐ろしいものがありますね。
私も欲しかった、成長期……。
朝から同じ家族間でのちょっとした理不尽を感じながら、家を後にしました。
学校に着くと、もう習慣になってしまった上階の人影を確認します。
今日もいません。
そこでふと、違和感を感じました。
いつの間にやらいじめと名のつくものが鳴りを潜めているのです。
――――いつ、から……?
私は慌てて記憶の中を探ります。
あの時はあった、あの時点でもこうされた――
そしてあの時です、あの時を境に一切のいじめは執り行われなくなっている――。
私は、思い違いをしていたのかもしれません。
これまでのいじめと刺客の送り込みは同一人物の意思によってなされているかもしれない。
――そして刺客には多分二種類いる――。
その可能性に思い当たり、胸の内の中だけで御三方に疑ってしまって申し訳ございませんでしたと、謝りました。
つい考えすぎていたのでしょう、歩きながらだったので前方の人にぶつかってしまいます。
「ぶひぇっ! す、すみません」
「いや、よい。怪我はなかったかな?」
うう。
まさかの第三皇子です。
よく見ると彼の背中越しにレイドリークス様とローゼリア様のお姿も。
どうやら兄弟で言葉を交わしていたようです。
「怪我はございません、お気遣いありがとうございます」
とっとと逃げてしまいたく、それでは失礼と言いかけたところで、腕を掴まれます。
どうしてこうも見境がないのでしょうか、心の中で睨みつけながら相手を見ると、その眼にはどこか仄暗い愉悦が映し出されています。
瞬間背筋がビリビリしました。
ここに居てはいけない。
そう思ったのが遅すぎました、第三皇子は取ったままの手を持ち上げると自身の口元に寄せ、チュッというリップ音と共に周りに告げるように私に話しかけました。
「おはようルルーシア。婚約してすぐ会いにきてくれて嬉しいよ」
その声には、ただ可笑しみだけがこもっていて。
第三皇子の背中越しに少し驚いたレイドリークス様の顔と、ローゼリア様の薄く微笑んだ瞳が……逃避しかけた私に現実だと伝えてくるのでした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
96
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる