聖なる王女はベッドの上で帝国を救う

梵天丸

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第四十八話 戦場の誓いと魂の共鳴

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イルーナ帝国による大規模な軍事侵攻の報は、瞬く間にヴァリス帝国全土を揺るがした。
東部国境では、既に激しい戦闘が開始されており、現地の守備隊だけでは持ちこたえられないとの悲観的な報告が次々と帝都にもたらされていた。
皇帝ルイードは直ちに軍最高司令部を召集し、クリストフも皇太子として、そして帝国軍の総司令官の一人として、その対策に追われることになった。
黒幕の調査も重要だが、まずは眼前の脅威であるイルーナ軍を退けなければ、帝国の存亡そのものが危うくなる。

「クリストフ、お前には直ちに東部戦線へ向かってもらう。主力部隊を率い、敵の進撃を食い止めるのだ。帝国の命運は、お前の双肩にかかっている」

軍議の席で、皇帝ルイードは厳しい表情でクリストフに命じた。
その声には、為政者としての冷徹さと、息子を戦場へ送る父親としての苦悩が滲んでいた。

「はっ! 必ずや、帝国の土を踏ませるわけにはまいりません」

クリストフは力強く応えた。
彼の心には、国を守るという使命感と共に、レティシアを残して戦場へ赴くことへの不安も渦巻いていた。
しかし、今は感傷に浸っている時ではない。

出陣の準備は迅速に進められた。
クリストフが率いるのは、帝国の精鋭中の精鋭である中央騎士団。
彼らの士気は高く、皇太子自らが指揮を執ることに、兵士たちは勇気づけられていた。
レティシアは、クリストフの身支度を手伝いながら、彼の身を案じる気持ちを必死に抑えていた。
彼女にできることは、彼の無事を祈り、そして彼が安心して戦えるように、帝都で待つことだけだった。

出陣前夜、皇太子宮の寝室は、いつになく静まり返っていた。
窓の外では、戦雲を暗示するかのように、不穏な風が木々を揺らしている。
クリストフは、鎧を脱ぎ、簡素な寝間着に着替えると、ベッドの傍らで祈りを捧げるレティシアの隣に静かに座った。

「レティシア…明日、私は戦場へ発ちます」

その声は、穏やかだったが、どこか覚悟を決めた響きがあった。

「はい…存じております。クリストフ様、どうか…どうかご無事で」

レティシアは祈りを終え、クリストフの手をそっと握った。
その手は、冷たく震えていた。
彼女の不安が、ひしひしと伝わってくる。
「心配しないでください。私は必ず生きて戻ります。そして、この戦いに勝利し、あなたと共に平和な未来を築く。そのために、私は戦うのです」

クリストフは、彼女の手を強く握り返した。

「レティシア、今夜だけは…神託のためではなく、ただ、私のためだけに、あなたの全てをくれないだろうか。あなたの温もりを、愛を、私の魂に深く刻みつけて、戦場へ向かいたい…」

それは、彼の心の奥底からの、切実な願いだった。
レティシアは、涙を堪えながら、深く頷いた。

「はい、クリストフ様…私の全ては、あなたのものです」

その夜の二人は、これまでのどんな夜よりも、深く、激しく、そして切なく求め合った。
レティシアは、神託も何もかも忘れ、ただ愛するクリストフの腕の中で、彼に応えたい一心だった。
彼女はクリストフの上に身を重ね、自ら唇を奪った。
そのキスは、別れを惜しむかのように、甘く、そしてどこまでも深かった。

「んふ、ぅ…ぁっ、クリストフ…さま…っ…」

クリストフの大きな手が、レティシアの柔らかな肌を、まるでその感触を永遠に記憶に刻みつけるかのように、ゆっくりと、しかし情熱的に撫で上げる。
彼女の豊かな乳房、細い腰、そして滑らかな太腿。
その全てが、彼にとってかけがえのない宝物だった。
レティシアもまた、彼の逞しい胸板に頬を寄せ、その力強い鼓動を感じながら、彼の肌の熱さを全身で受け止めていた。

「クリストフ様…あなだだけを…感じていたい…」

レティシアの吐息混じりの声が、彼の欲望を煽る。
彼女は自ら、クリストフの熱く硬い楔を、自身の最も奥深くへと導き、ゆっくりと受け入れていった。

「あぁっ…んん…っ…!」

内側を満たす、彼の圧倒的な存在感。
それは、痛みではなく、魂が震えるような、甘美で強烈な快感だった。クリストフは、彼女の内部の信じられないほどの熱さと、吸い付くような締め付けに、我を忘れて彼女の名を呼んだ。

「レティシア…っ…愛している…!」

レティシアは、彼の魂に応えるように、深く、そして官能的に腰を揺らし始めた。
その動きは、まるで命の炎を燃やすかのようだった。
クリストフもまた、彼女の細い腰を力強く掴み、戦場での武勇を思わせるような激しさで、彼女の奥深くを突き上げる。
シーツが乱れ、二人の汗ばんだ肌が擦れ合い、熱い吐息と甘い喘ぎ声が、静かな寝室に響き渡った。

「あ…クリストフ様…もっと…もっと深く……!」

レティシアが、快感の波にのまれながら懇願する。
クリストフは、彼女の求めるままに、愛と情熱の全てを込めて、彼女の最奥へと自身を打ち付けた。
その瞬間、二人の魂は完全に一つとなり、聖なる光と燃えるような情熱が、激しい閃光となって炸裂した。
何度も何度も、二人は共に頂点へと達し、そのたびに、互いの存在を魂の最も深い部分で確認し合った。
それは、死と隣り合わせの戦場へ向かう男と、彼を送り出す女の、切なくも美しい愛の誓いだった。

燃え尽きたように重なり合い、互いの荒い息遣いを感じながら、クリストフはレティシアの涙で濡れた頬に、優しく口づけをした。

「レティシア…必ず、君の元へ帰ってきます。だから、待っていてください」
「はい…クリストフ様…いつまでも、お待ちしております。私の魂は、いつもあなたと共にあります」

その言葉は、夜明け前の薄闇に溶けるように囁かれた、二人の魂からの、永遠の約束だった。

翌朝、クリストフは夜明けと共に出陣した。
レティシアは、皇宮のバルコニーから、朝日を浴びて東へと進軍していくクリストフの雄姿を、涙を堪えて見送った。
彼の背中が小さくなっていくのを見つめながら、彼女は心の中で強く祈った。どうか、彼をお守りください、と。
そして、自分もまた、彼のためにできることをしなければならないと、決意を新たにした。

クリストフが戦場へ赴いてから数日後、レティシアは、皇太子宮の祈りの間で、いつものように深い瞑想に入っていた。
彼女は、遠く離れたクリストフの無事を祈り、彼の魂に「魂の盾」の力を送ろうと、意識を集中させていた。
その時だった。
彼女の鋭敏になった感覚が、再び、あのハルディンとは異なる、冷たく計算高い悪意の波動を捉えたのだ。
しかも、それは以前よりもずっと強く、そして明確な方向性を持って、皇宮内の特定の場所から発せられているように感じられた。

(この気配…! やはり、黒幕はこの皇宮の中にいる…! そして、クリストフ様が不在の今こそ、何かを仕掛けようとしているのかもしれない…)

レティシアは、瞑想を中断し、目を見開いた。
その悪意の源は、彼女が以前「淀み」を感じた、皇帝の側近の一人である、宰相オルダス卿の私室の方向から発せられているように感じられたのだ。オルダス卿は、皇帝の長年の腹心であり、帝国でも屈指の権力者だ。彼が黒幕であるなど、にわかには信じがたい。
しかし、レティシアの感覚は、確かにその方向を指し示していた。

(まさか…オルダス宰相が…? でも、この強い悪意は…)

レティシアは、自分の感覚を信じるべきか、それとも高名な宰相への疑念を打ち消すべきか、一瞬ためらった。
しかし、クリストフの身に迫るかもしれない危険を思うと、躊躇している時間はない。
彼女は、侍女のナタリアだけを伴い、オルダス宰相の私室の周辺を、それとなく探ってみることを決意した。
もし、彼が本当に黒幕であるならば、必ず何らかの証拠が見つかるはずだ。
クリストフが戦場で命を賭けて戦っている今、自分もまた、この帝都で、見えない敵との戦いを始めなければならない。
レティシアの瞳に、聖女としての強い意志と、愛する人を守るための覚悟の光が宿った。
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