残りの人生は異世界で

ニラたま

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どこにでもありそうな公園に、子供の声が響く。
 ここは築年数がかなり経っていそうな団地の中にひっそりとある公園。
ここは近所の子供の遊び場として人気だった。

 数人の子供が無邪気に公園で遊んでいて、その傍らで母親たちは世間話をしている。
 話が盛り上がるにつれ、母親たちの注意は子供から話題へと変わっていく。

 そんな中一人の女の子が蝶々を追って公園から出て行く。
 それに気が付いたのは一人を除いて誰もいない。

 公園から出たところで、女の子は一人の男とぶつかった。
 瘦せ型で肩ほどの長い髪に、お世辞にも綺麗な恰好ではない。
何より女の子を見るその瞳は全く生気がないものであった。


「…見ぃ付けた…」


第六感で嫌な空気を感じた女の子はごめんなさいと男に言おうとするがそれはできなかった。
その男に口を塞がれたからだ。

 そのまま、女の子は男に強引に車の中へと引き込まれる。

 直後、女の子の姿が見当たらないと探していた男の子はそのシーンを見て、近くにいた母親たちに大声で知らせる。
 全員がその場に集まったときには、車が走り去っていくのを見届けるしかなかった。
公園には女の子の母親は号泣が響き渡った。



 パトカーのサイレンが響く。
 周辺であった誘拐事件で警察が多数動いているのだ。

 男はカーテンの隙間からその様子を見ていたが、パトカーが通り過ぎたのを確認するとしっかりとカーテンを閉めた。
 部屋には手足をロープで縛られ、猿轡を噛まされた女の子がうっすらと涙を浮かべている。


「大丈夫だよ。何もしないよ。」


 そう言うと男はズボンのポケットから小型のナイフを取り出し、薄ら笑いを浮かべた。


「だ・か・ら、大人しくしてね。」


 女の子はコクコクと頷いた。


「お嬢ちゃんは不幸だね。生まれてこなければ、こんなことにならなかったのに。」


 ふふふ…と不気味な笑い声を上げ、ナイフを光に照らし、舌なめずりをする。

 女の子は歯をガタガタ震わせ、ぎゅっと自らの身体を抱いた。


「だーいじょうぶ。『まだ』何もしないよ?」


 途端に女の子のお腹が鳴った。
 緊張の中にいても体は正直なのだ。


「ああ、そうか!お腹が減ってるんだね!そんなことすっかり忘れてたよ!」


 男は微笑み、女の子に優しく言う。


「君の食事を買ってくるから、すこーしだけ待っていてね。大人しく、待ってるんダヨ。」


男はニタァと不快な笑みを浮かべ、車のキーを指でくるくると回しながら玄関から出て行った。



 公園の周辺では警察による捜査が続いていた。
 事件から数時間経っているが、未だ手掛かりがないようで苛立ちを隠せない。

 その場にいた母親たちは各々事情を聞かれ、終わったときには夜となっていた。


「もうこんな時間になっちゃったから、晩御飯はコンビニで買おうか?」


 母親の言葉に頷く男の子。
 小さいながら、何とも言えない申し訳なさが心に渦巻く中、母親に手を引かれコンビニに入っていく。


「じゃあ、好きなものをもってきなさい?今日は何でも買ってあげるから!」


 母親の言葉を受けて男の子はお菓子売場へと歩を進める。
 そんな男の子の脳裏には、攫われた女の子の姿が浮かんでいた。
 後悔のような罪悪感のような、そんな複雑な心境で通路を歩いていく。


「!?」


 お菓子売場に来たときに男の子は立ち止った。
 あのときの犯人が目の前にいる。
 男の子は母親に事情を話すべきかと考えたが、その間にも犯人が会計に向かっていたので、意を決し犯人の後を追う。
 犯人はレジを終え、駐車場へと向かっていた。
 助手席に買い物袋を入れ、外でたばこを吸い始める。

 その隙をついて、後部座席に男の子は乗り込むことに成功した。
 スプレー缶やハンマーなどの工具が転がっていて、シンナー臭い。
 そのニオイに頭がくらっとしたが、後部座席に乱雑においてあるブルーシートの中に隠れることにした。
ちょうどそのときにたばこを吸い始めた犯人が運転席に乗り込み、エンジンをかけ、スーパーを後にする。
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