残りの人生は異世界で

ニラたま

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 ピンポーン。

 家のインターフォンが鳴る。
 男は先程、家に帰ってきたばかりだ。
 少しイラついた様子でドアに話しかける。


「…どちら?」


 返答はない。
 男はリビングに帰ろうとするが、そのときにまたチャイムが鳴った。


「…はい」


 ドアスコープで向こうを探るが誰もいない。


「なんだよ。」


 また踵を返すとインターフォンがなる。


「誰だよ!」


 男は乱暴にドアを開いたが、ドアの向こうには誰もいなかった。


「?」


 一瞬、何が起こったのかわからなかった男だが、突如左脛に激痛が走る。
 左脛に当てられたのは男の子が持っていたハンマーだ。


「いってえ!!…っこのっくそガキがぁぁぁぁあ!!」


 一瞬の隙をついて男の子は部屋の中に入った。
奥の部屋に震えていた女の子の無事を確認してニコリと微笑む。
 足を引きずりながら部屋に入ってきた男はナイフを握り、鬼のような形相で男の子を睨んでいた。


「人を…そんなもので殴っちゃいけないって言われなかった?んん?」


 睨んでくる男の目をじっと見つめたまま動かない男の子ににやりと邪悪な笑みを浮かべた。


「そんな子はお仕置きしなきゃねえ!」


 男はナイフを男の子に刺す。
 確かな手応え。
 確実に仕留めたはずだった。

 しかし、男の目の前にいたのは女。


「あんた、どっから出てきたんだ!」


 男が突き刺したはずのナイフの刃は女の手のひらに刺さっていた。
 しかし、おかしいことに血が出ていない。


「…全く、困った子だ。お前のおかげで私の仕事がめちゃくちゃだ。」


 そういうと女は男の子の髪の毛をぐしぐしと撫で付けた。
 女は何かに気が付いたような表情になる。

「…お前はここで死ぬような運命じゃない。」


 女は男の子の顔を両手で優しく挟んで、しっかりと目を見た。
 長いピンク色の髪がさらりと揺れる。


「何ごちゃごちゃ言ってんだ!」


 すっかり無視されていた男が女にもう一度襲い掛かる。


「やれやれ。これで私は始末書確定だよ。」


 溜息をついた女の手から2mはあろうかという鎌が出現する。
 突然、何もなかったところから現れた鎌に男は一瞬、躊躇したが、今更引くことが出来ずに女に向かっていった。

 一閃。

 容赦なく振り下ろされた鎌は男を真っ二つにした。



 住宅街の前には似つかわしくない光景が広がる。
 空はもう夜の帳が下りてきて、その付近だけが赤く点滅している。
 玄関先には何台ものパトカーが止まり、ブルーシートがかけられる。

 警察官に連れられ、家の中から女の子が出てきた。
 外で待機していた両親に抱きかかえられ、そこにいた全員が無事を喜んだ。

 少し遅れて男の子が出てくる。
 やはり、外で待機していた両親の元に連れていかれ、父親のゲンコツを思い切り頭に受けた。


 帰り際、男の子と女の子は目が合うが、言葉はなく、ただ、お互いに笑顔で手を振った。


 部屋の中に入った警察は困惑していた。


「・・・なあ、これ、どうする?」
「・・・どうするって言ったって・・・そのまま報告するしかないんじゃないか?」
「おい!お前!どうした?」


 警察たちが見つめる視線の先にいたのは犯人。
 部屋の中央で両膝をついて、虚ろな瞳で暗闇を見ていた。

 口の端からは涎が垂れ、警察官がいくら話しかけても、まともな返事は返ってこない。


 その様子を遠くから見つめる影が一つ。
 先程の女だ。


「…ふぅ。」


 女はそういうと手に持っていた『もの』をぐっと握り潰した。
 その瞬間、警察官に肩を抱かれて運び出された男が、急に暴れだし、そして、静かに死んだ。


「それにしても」


 女は小首を傾げて考える。


「不思議なことってあるんだね。」


 女は男の子が去っていった方角を見つめた。
 ふふっと笑い、闇に溶けていった。
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