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「ここは異世界だよ」編

十二話めぇ~ 「武器を手に入れよう」

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「ねえ、シゲキ君。もう面倒臭いから何匹目ってやめようよ」

「面倒臭いって言うなよ! 好きでなっているわけじゃねえから!」

 というわけでバズーカの衝撃が強すぎて、鼓膜が割れた俺は死んで六匹目になった。
 音で死んだのもあれだが、勢いが強すぎて反動で吹っ飛ぶという現象も起こり、耳栓をつけていてもどのみち死んでいただろう。

 よくよく考えれば、メタルマックスのポチはそういった兵器として作られたみたいな設定があった気がする。
 そりゃ頭の真上でぶっ放すからな。普通の犬じゃ駄目だろう。

 当然、普通のヒツジである俺には無理に決まっている。
 よって、返却だ。

「え~~、せっかく強いのに」
「強くても死んだら意味ないだろう!」
「どうせ復活するじゃん」

 それを言ったら身も蓋もないな。
 だが、俺としては一発撃つたびに死ぬなんてまっぴらごめんだ。

 ただ、レベルやHPが上がっていけば使えるかもしれないという期待は膨らんだ。
 おっ、なんだかRPGしてるな。ちょっと楽しいかも。

「おじさん、肉切り包丁くださーい」

 なんかすごいの探してるーーー!
 ぷるんがすごいのを求めている。

 ええ!? 肉切り包丁ってあれだろう?
 中華包丁みたいな平べったい感じのやつだろう?
 そんなの欲しいのか?

「中古でならあるよ」

 モヒカンがなんか大きいのを持ってきた。
 やばい。相当でかい。もはや斧レベルだ。

「何人切ってます?」
「無抵抗な人を三十人くらいかな」

 呪いーーーーー!
 絶対にまた呪われるって!!

 いやぁあ! 血がこびりついてるーーー!
 ホラー! これホラーゲームであるやつだよ!

「じゃあ、ください」

 じゃあってなんだよ!!?
 明らかに危ないの確認してから決めてるじゃねえか!!

 やめてーーー! 本当にやめて!!
 毎日トラウマになるから!
 夜な夜な包丁からすすり泣く声がしたら嫌だからーー!

 俺の中の肉切り包丁のイメージは、なぜか天外魔境2だな。
 あのブタのやつが少しだけトラウマで残っている。
 今ならその恐怖がよくわかる。洒落にならん!

「もう、シゲキ君はうるさいなー」
「だって怖いからさ。もっと平和なものにしようぜ」

 まあ、戦うにあたって平和なものなんてないけどな。
 黒サイだって俺にはかなりきついぞ。刺殺だもんな。

「サイは毛皮が売れるモンスターにはいいんだけどね」

 ああ、そうか。傷をつけないで済むよな。
 って、俺もだんだん慣れてきたのが怖い。

「あっ、サイの下取りお願いします」

 形見ぃいいいーーーーー!
 それ、リーパのお父さんの形見だって!!
 このツッコミ二回目だぞ!!

「三回目だよ」

 どうでもいいわ!!


「本当に売りやがった…」

 ぷるんは黒サイを売って大きな肉切り包丁を買った。
 う○こがついたので未練はないようだ。
 すまん、リーパ。俺がついていながら!

「うーん、ニッキーいい感じ」

 すでに肉切り包丁に名前までつけている。
 なぜあれが気に入ったのか俺にはわからんが。
 ちなみに肉切り包丁の攻撃力は20らしい。

「すごいよ、これ! 10パーセントの確率で痛恨の一撃だって!」

 敵側ーーーー! それ敵側の攻撃だから!
 ヒロインが痛恨の一撃とか怖いからな!

 どんどんぷるんが敵側になっていくな。
 山賊の親分とかになれるぞ。

「私のはこれでいいけど、シゲキ君はどうする?」

 う~ん、そうだよな。
 銃は魅力的だが、撃つたびに死ぬのはつらいし、かといって剣を持てるわけじゃないし。

「じゃあ、盾にしよっか」

 こいつの魂胆はわかっている。
 俺を完全なる盾にして身を守ろうって腹積もりだ。

 しかし、それが現実的であるような気がする。
 もともと攻撃的な性格じゃないしな。そのほうがお似合いかもしれん。


 ぷるんと一緒に防具屋に向かう。ここでは防具もたくさん売っているようだ。
 現在の俺は絶賛「素敵な生身」を装備中である。

 素敵だ。
 だが、生身だ。

 吹き矢で攻撃されれば思わず「おうっ!」とか言って転がり回るほど防御力がない。

「シゲキ君これはどうかな?」
「おお、カッコイイ!」

 丸い形をしたラウンドシールドの大きい感じのがある。
 これを背負うだけでもかなり防御力がアップしそうだ。

「じゃあ、足につけてみて」

 足!? 足につけるの!?
 俺としては身体に巻き付けたいんだが…

「羊毛が痛むし」

 毛皮の心配するなよぉおおおーーー!
 俺の中身心配しろよぉ!!

「じゃあ、腸だけ守ってね」

 ソーセージ!!
 ソーセージのことしか考えていないよね!?
 ねえ、そうだよね!?

 仕方ない。とりあえずやってみるか?

「引きずる…引きずるよぉぉーーー」

 予想を裏切らない展開だ。
 足につけたらもう身動きなんて取れやしない。

 もはやヒツジの長所がまるでないな。
 せめて軽やかに動きたい。これは返却だな。

 おっ、ヒツジの長所?
 そうだ。何か長所を生かすものがいいよな。

「え? これのこと?」

 ニッキーのことじゃねえから!!
 肉切り包丁たしかに生かすけど、食材としてじゃねえか!!

 切りやすいさ。ああ、そうさ。骨ごとばっさり切れて便利だよ!
 ニッキー超便利だよ!

「じゃあ、戦闘角(バトルホーン)にしよっか」

 ぷるんが市場のはずれにある角屋(つのや)に着いたときにそう言った。
 さまざまなモンスターの素材である角を戦闘用に加工したのがバトルホーンだ。

 そのまま取っ手をつけて槍としても使えるし、武闘家とかが手に持って使うこともできる武器だ。
 あれだな。クロー系装備の一種だな。

 でも俺の手って蹄なんだよな。
 四足じゃどうやっても装備できないよ。

「ヒツジ用のがあるよ。頭につけるやつ」

 ん? ヒツジ用なんてあるのか?

「うん、ヒツジってさ、なんていうのかな、モンハンの猫みたいな感じなんだ」

 めっちゃ猫とか言ってる!!
 つーか、この小説だんだんぼかさなくなってきてるし!!
 直球勝負しすぎだよ!

 だがまあ、わかりやすい例だな。
 なるほど、愛らしい立ち回りで癒すキャラなんだな。

「唾吐いて相手を挑発する役目なんだ」

 めっちゃムカつく!
 そんなヒツジめっちゃムカつくよ!
 うん、たしかに役立つ。囮としてな。

「やっぱりホーンかな。ヒツジさんだしね」

 しかし、ヒツジ用武器があると知っていたなら、どうして最初から来なかったんだ?
 最初からバトルホーンを選べばよかったのに、こいつ銃の店に行ったぞ。

「ヒツジが銃撃ったらどうなるのかなーって」
「どうなると思ってた?」
「うん、死ぬかなって。やっぱり死んだね。あははは」

 ぐもひいぃlふぁkjだfdぃsぃふぁういふぁあw! 
 俺の魂の叫びはもはや言葉にできない。
 知っておったな! 貴様、実験したな!!

「最後にwがあるから楽しかったの?」

 怒ってます! ぷりぷり怒ってます!

「あはは、美味しそう」
「ムキーーー! 食あたり起こしやがれ!」

 もはや細菌たちに想いを託すしかない!
 人間どもに痛みを与えてやれ!


「じゃあ、つけてみてね」

 ぷるんがバトルホーンを買ってつけてくれた。
 俺の脳天には小さめの一角が存在する。
 そこにフィットするように調整された角で、なんというかドリルに似ている。

 ぬぉぉ…重いぃぃーーーー! 首が苦しいぃぃーーーーー!
 角で固定はされているが、安全ヘルメットみたいに首にひっかけるタイプでもあるので苦しい。
 もうちょっと軽いほうがいい気がするが、それ以外のも重そうだ。

「ドリルウサギの角だって。攻撃力は+6みたいだね」

 ドリルウサギは名前の通りドリルのような角を持ったウサギのことだ。
 大きいと体長は数メートルにもなって角も大きくなるらしい。
 俺のは一般的サイズのようでお値段も攻撃力も下の下らしいが、武器には違いない。

「あとは、ここぞって時にこれを押してね」
「なんだ、これ。スイッチか?」
「うん。このバトルホーンね、飛ばせるんだ」

 うぉおおお! ドリルミサイィィーーール!!
 めっちゃカッコイイ!! 男はやっぱりドリルだよな!

「これを押すと火薬が爆発して飛ぶんだ」
「ちょっと待て。嫌な予感しかしないぞ」

 どうせまた俺まで爆死して終わりとかだろう?
 そういうわかりやすいのやめようぜ。

「それは大丈夫だよ。本当に角を飛ばすだけのものだし。あっ、角は自分で拾ってね」

 自分で拾うのか…面倒だな。
 俺は昔、三千円で投げナイフを一本買ったのだが、投げるたびに拾いに行くのが面倒で拾わなくなった。いや、投げなくなった。

 だって一本三千円だぞ?
 気軽に投げられるものじゃねえよな。失くしたら嫌だし。

 よって、まったく使わないで今に至る。
 今回も使わないで終わるんじゃなかろうか。

「じゃあ、予備の角を買えばいいよ。安いし」
「安いったって、どれくらいだよ?」
「うーん、○○○ケースくらい?」

 アナベベーーーーーー!
 だめぇええええーーーー!!
 女の子がそれを言っちゃだめ!

 思わず全部伏せ字にしちまったじゃねーか!
 というか、こいつの言動がすでに可愛い女の子からだいぶ外れているよな。
 アウトローとインハイを厳しく攻めるピッチャーのようだ。

 一応「コテカ」とかいう名前があるらしい。
 まあ、言ったところで「何それ?」なので、こっちのほうがわかりやすくはあるが、できれば使わないほうがいい。

「そうだ。アイテム袋も買おうよ。便利だよ」

 そういえば俺たちって何も持ってないよな。
 ぷるんも黒サイはずっと手に持っていたし、今はニッキーを持っていてかなり怖い状態だ。
 せめてリュックとかあれば便利だよな。

「アイテム袋は二十種類までならどんな大きさのものも入るんだよね。同じアイテムなら二十個枠があるしね」

 なるほど! ドラクエもそうだよな。
 大きさとかあまり関係なく入るよな。

 盾とか剣とか鎧とか山ほど入っていても数で判断するしな。
 それはそれですごい。

「おじさーん、アイテム袋百個ちょうだい!」

 百個!?
 おいおい、多すぎるって!!
 そんなに使わないだろう?

「アイテム袋の中にアイテム袋を入れるんだよ」

 裏技使っちゃった!
 それ使うともう何でもありになっちゃうけどいいのか?

「ただ、どこに入れたかわからなくなるんだけどね。うーん、最初だし…じゃあとりあえず五つください」

 結局五つに落ち着いた。
 うん、これくらいなら管理できるよな。

「じゃあ、シゲキ君持ってね」
「また俺かよ…」

 俺の背中に馬につけるような鞍(くら)がつけられ、そこにアイテム袋を五つ吊す。
 うん、完全にラクダかロバ的な扱いだな。

 もういいさ。とりあえず戦闘面であまり役立たないだろうから補助面で役立つことにする。
 これが役割分担だろうしな。

「ふと思ったけどさ、アイテム袋あるんだったら黒サイ売らなくてよかったんじゃないのか?」

 そうだよな。あれはあれでいい武器だ。
 というよりは形見だ。

 金もあるし無理に売る必要なかったよな。
 アイテム袋に入れればいいし。










「え? 証拠があったら困るじゃん」









 それが目的かぁあーーーー!

 証拠隠滅しやがったよ、こいつ!!



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