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「ここは異世界だよ」編

十一話めぇ~ 「依頼を受けよう」

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 ぷるんはモヒカンに黒サイを突きつけていた。
 ちょっとどういうことなの?

 俺はてっきりぷるんが危ないのかと思って決死の覚悟で来たんだぞ。
 ちゃんと説明してくれよ。こんな騒動を起こしたんだから相当な理由があってのことだろうと思うが…

「うん、登録に三日かかるって言うから刺したんだ」

 些細! とっても些細な理由だ!!
 すぐキレる若者の代表格だぞ! 短絡的すぎる!
 恐ろしいやつ。少しくらい待てよ。

「だって、私たちは犯罪者なんだよ。時間が惜しいもん」

 その通りだが改めて思うと身勝手な理由だな。
 勝手に間違えて勝手に押し売りしたあげく、それではやばいからって逃げて、あまつさえ三日も待てないからという理由で刺す。

 典型的な犯罪者の人生だ。
 捕まって出所したあともすさんだ生活を送り、ろくな人生が待っていないという哀しい人生が俺には見える。

 素直に謝っておけば済んだ話が逃げて大きくなった良い例だ。
 みんなも気をつけろよ。

「ほんともう、困っちゃうわ。あなたの連れならしっかり管理してよね。ぷんぷん」

 声ーーーーーー!! 声がすごい!!
 このおねえモヒカンってさ、声がマジロリ声なんだ。

 世紀末に出てくるような、いかつい顔なのに声は西久美さんなんだよ。
 ん? 古い? 古くない!! 批判ゆるさんぞ!
 俺の中で最高のロリ声はあの人しかいない。

 と、それは置いておいて、アニメだったらマジびっくりするレベルな声だ。
 だから慌てていた俺もついつい勘違いしちまったってわけだ。

 冷静に考えると、ぷるんがあんな声出すわけないよな…
 くそっ、心配するだけ無駄だな。

「シゲキ君、ここペット禁止だよ」
「むしろ、お前が出ていけよ!」

 ペット禁止より「ぷるん禁止」になりかねない。
 出禁になるぞ、マジでさ。

「登録って時間かかるんすか?」

 ぷるんが出るとややこしいので、俺が代理で聞く。
 ちなみに俺は目上の人と話すときは「~すか」とか言ってしまう。
 なんとなく三下っぽい口調だが、ついついこうなってしまうのだ。

「おねえモヒって、玉あるんすか?」

 声真似するなよ!!!
 小説だと俺が言ったみたいに見えるだろうが!!!

 しかも何聞いているんだよ!!
 すげーデリケートなところに大砲撃ち込みやがった!!

「玉はないわよ」

 ないの!?

 って、答えなくていいから!!
 どうしてこの世界の人間はノリがいいんだよ!!

 で、ようやく答え。

「こっちもお役所ですもの。登録には時間かかるわよ」

 え? ギルドってお役所なの?

「いろいろな部署に書類回さないといけないから、最短で三日かかると言ったら彼女に刺されたのよぉ」

 そう言って肩をさするが、刺されているはずなのにあまり痛そうでもない。
 ぷるんが手加減したのかこの人が強いのかわからないな。

「あっ、本気で刺したよ」

 手加減んんんーーーーー!!
 手加減しろよぉおお!!
 ぷるんは怖いやつだが、それを受けても平然としているおねえモヒカンはすごいな。

「だってモヒカン族ですもの。荒事には慣れているわよ」

 さすがモヒカン族だ。その生命力は蟻のごとくだな。
 ただし、憧れるがなりたくない種族ナンバーワンだろう。
 一生モヒカンで過ごすのは精神的によほどタフでなければ耐えられない。

 うむ、あの黒サイでう○こをつついたことは黙っていたほうがよさそうだ。
 人間、知らないほうが幸せなこともあるしな。

「肩、臭くありません?」

 言っちゃらめぇえええええ!!
 ぷるんは黙っていろ!
 
 どうやら冒険者ギルドは国営らしい。
 こうした犯罪歴などを消すということは、やはり国の力が必要になるのだから当然ではあるけどな。

「仕方ない。三日間隠れてようぜ」

 それが一番いいな。
 本当は謝るのが一番なんだが。

「そんな日陰の生活、嫌だよ!」

 えっぇええーーー! 自分で蒔いた種!
 しかもあなたが蒔いた種ですよ!
 それで俺まで共犯にされているんだから少しくらい妥協しろよ!!

「どうしてもと言うなら、一つ方法があるわよ」

 西久美さん声のモヒカン、ネリー・モヒが提案する。
 それは、冒険者ギルドが出している依頼を一つ引き受けるというものだ。

 受けている間はギルドから仮の登録カードをもらえ、身柄と権利がギルド所属になる。
 少なくとも過去の事件で捕まることはないし、報酬もちゃんと出る。
 ただし、残っているのはだいたい厄介な依頼が多く、傷害保障もない。

 簡単にいえば「死ぬかもしれないけどやってみる?」というものだ。
 俺は不死スキルがあるから最悪はなんとかなるが、ぷるんがな。
 死んだら終わりかもしれんし…危険だよな。

「私、やるよ! 守るものがあるから」

 守るもの=自分の生活、である。
 その言葉は犯罪者になりたくない一心から出たものだ。

 自分の生活を守るために命をかける。
 まったくもって普通のことだ。まったく感動しないな。

「ぷるん、危ないぜ」
「どうせギルドに入るなら一緒だよ」

 まあ、そうなんだけどな。
 最悪は逃げればいいか。
 
「残っているのはこれね」

 ネリー・モヒがいくつか案件を出してくる。

1、コバンザメの小判について問いただす
2、サンドシャークの討伐
3、鮫肌の人を五十人集める

 全部サメだ!!!

 しかも三番目は簡単そうに見えるがかなり面倒くさそうである。
 鮫肌って聞くと鳥肌っぽく見えるが、皮膚の病気なんだよな。

 俺も子供のころになったことがあるが、あれはけっこうつらい。
 というか、集めてどうするんだ?

「鮫肌連続しっぺ記録を打ち立てるみたいよ」

 意味がわからない!!!
 そんなギネスの記録挑戦はやめてくれ!
 せめて何かの薬の効果を試すとかにしてくれよ!

 ああいうのってまったく羨ましくない記録とか多いよな。
 載る意味がよくわからないし。
 とんでもない依頼だな。これはやめておこう。

「コバンザメは、小判について悩んでいるから三週間愚痴を聞く感じね」

 それは一番嫌だ!!
 どうせあれだろ? 「どうして僕はここにいるんだろう」ってやつだろう?
 しかも何か言っても「いや、それは違う。そうじゃないんだ。もっと別の…」とか言い出して結局面倒くさいことになるんだ。

 そんなやつはさっさと小判剥ぐのが一番だな。
 ただ、コバンザメは海にいるのでこれにも触れないでおこう。

「となると二番か…」

 サンドシャークって何だ?
 サメみたいだけどサンドって砂か?

「ここから北の砂漠に砂サメが出るのよ。それの討伐ね」

 あー、なるほど。
 RPGでそういうのよくあるよな。

 思えば砂漠でサメが出たらマジでびびるぞ。怖すぎる。
 だが、これしかなさそうだ。問題は相手の強さだよな。

「サンドシャークって最初のボスだよ」

 マジで!! そんなヤバイ相手なのか?
 今の俺たちのレベルではかなり苦戦しそうだ。

 なにせ1だ。ゲームそのものをやったことがない人間でさえ同じ条件なんだ。
 つまりなにもしていないと同じだ。

 それに俺たちとは言ったが、ほとんどぷるん一人で戦う場合なんだよな。
 というか、俺のレベルは0だった気がする。問題外だぞ。
 ぷるん、大丈夫か!?

「シゲキ君がいるもん。大丈夫だよ」
「ぷるん、おまえ…」

 俺も戦力に入れてくれるのか?
 こんな俺を一人の男として…

「いざとなったら盾になってね。あと食料にもなるし」

 ちくしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
 結局それかよぉおおーーー!!


 ということで依頼を受けることにした。

 この依頼の期限は一週間。
 数日間は探索しながらレベルを上げたいところだ。

「シゲキ君強化週間だね」

 俺はいくら鍛えてもあまり変わらない気がするがな…
 だって、戦士とヒツジの基礎能力が違いすぎるもんな。

「大丈夫だよ。武器を買えば補えるよ」

 武器!! そうか、武器だ!
 武器があれば俺だって役立てるはずだ。
 でも、俺の力で扱える剣とかあるかな。それ以前にヒツジだしな。

「銃を買おうね」

 銃あるのかよぉおおおお!!


 俺とぷるんは武器市場に行く。
 そこはフリーマーケットのような場所で、いろいろな武器が売りに出されていた。

 人はけっこういるな。この世界も物騒だもんな。
 剣とか斧とかブーメランとか、種類がけっこうある。

 その中でモヒカンが銃を売っている店があった。
 ぷるんが物色しながらモヒカンに話しかける。

「トカレフありますか?」

 トカレフーーーー!?
 日本じゃ悪いイメージしかねえよ。トカレフ!
 あるわけないだろうが!

「中国製ならあるよ」

 ええーーーーー!!! あるの!?
 しかも、チャイニーズクオリティ!?

 ねえ、そこでそのクオリティはまずくないか!?
 明らかに質が悪そうじゃねえか。暴発したらどうするの!?
 それ以前に、どうしてあるんだよ!?

「そりゃ、牧場物語は日本のゲームだもん。あるよ」

 ううむ、それで納得していいのかわからないが、たしかにゲームが再現されているのならば、あってもおかしくはない。
 ないのだが、どんどんファンタジー要素が失われていくような気もする。

「じゃあさ、ファンタジーって何?」

 むっ! ぷるんのやつ、鋭い指摘だ。
 ファンタジーって幻想的とか空想的とかって意味だったか?
 でもまあ、ライトノベルとかだと中世系のが多いよな。

「日本昔話はファンタジーじゃないの?」

 すげーところ突いてきた!!
 たしかにあれもファンタジーといえばファンタジーかもしれん。

 和風ファンタジー・・・というか昔話なんだがな。
 妖怪も出てくるし、摩訶不思議だし、たしかにファンタジーかもしれん。

「だからトカレフが出てもファンタジーなんだよ」
「んん…んむ。そうか? そうなのか。うむ、そうかもしれんが…」

 だんだん自信がなくなってきたな。
 この話はここで終わっておこう。
 俺もツッコむ自信がない。


「じゃあ、引いてみて」
「蹄が俺を否定する…!!」

 蹄がぁーー! 蹄がトリガーにかからない!
 そりゃヒツジだもんな。まず何より指がない。

「じゃあ、バズーカにしようね」

 いきなり格上げしたな!!
 バズーカ、いいじゃないか。男は一発バズーカだよな。
 だが撃てるのか? いや、それよりも買えるのか?

「うん、五百万あるしね」

 それーーーー! それ他人の!!
 他人のお金だからな!!
 あの兄ちゃんの涙の代金だぞ!

「シゲキ君、ここは異世界なんだよ。自分の身は自分で守らないと。誰のものかは関係ないよ」
「お嬢ちゃん、いいこと言うな。感動したよ」

 涙を流して感動する店主モヒカン。
 俺は全然感動しない。

 ぷるんは生まれてくる種族を間違えたとしか思えない。
 モヒカン族に生まれれば英雄になれただろうに。

「じゃあ、試射してみてよ」

 良ければ買うことを条件にバズーカを試射させてもらうことになり、裏手の射撃場に行く。
 ところどころで「ヒャッハー!」という叫びと銃弾の音がするのは気にしないでおこう。

 バズーカはヒツジ専用装備として身体にくくりつけておいた。
 まあアレだ、メタルマックスのポチみたいなあれだな。
 発射スイッチは蹄に取り付けてある。強く踏めば発射だ。

「よしいくぞ!!」

 ちょっとドキドキだな。
 俺も男だ。こういう武器には興味がある。


「いっけーーーーー!」



 シゲキはバズーカを発射。

 ドンッーー!!!!
 ドヒューーーーボンッ!!
 的に命中。
 ダメージ九十九!!

 すごい! すごい力だ!



 うおおお、なんだ!! すごい狭い感じがして…



 狭い感じてしてぇえええええええ!



 ボンッ! シゲキの鼓膜が大破した。











 シゲキは死んだ。










「シゲキくぅーーーーーーん!!」


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